大暑の養生法――猛暑日に補うべきものと、体を傷める大きな禁忌

「大暑」は「小暑」の15日後に訪れ、例年は新暦の7月22日から24日頃、2026年は7月23日にあたります。小暑と大暑はいずれも、蒸し暑さという気候の特徴を表す節気です。

ことわざには「小暑を過ぎると日に日に暑さが増す」とあり、大暑になると一年で最も湿度が高く蒸し暑い季節を迎えます。この高温多湿で蒸し暑い時期には、暑さと湿気への対策を意識した健康管理が大切です。
 

大暑の物候

『礼記・月令』には、旧暦6月の物候として「土は潤い、蒸し暑くなり、大雨が時折降る」と記されています。

蒸し暑さによって人は汗だくになりますが、この強い暑さは高温を好む農作物の生長を大いに促し、秋の豊かな収穫への希望をもたらします。

ことわざには「大暑に十分暑くならなければ、収穫は十分にならない」とあります。これは、大暑の高温が作物の生育を促すため、この時期に暑さが不足するのは気候が順調ではないことを意味し、その年の収穫も不作になりやすいという考えです。

台湾には「大暑に十分暑くならなければ、大雨や台風がやって来る」ということわざもあり、大暑の頃には台風への備えが必要であることを教えています。
 

大暑の養生法

中医学には「冬の病は夏に治す」という有名な言葉があります。また、「夏にしっかり補えば、冬には虎とも戦える」という民間のことわざもあり、夏も滋養強壮に適した季節であることを示しています。

さらに「三伏に補う」という言葉もあり、最も暑い「三伏」の時期、すなわち小暑・大暑から立秋までが夏の体力づくりに最適な時期とされています。

一般の人は、体に負担をかけない「清補(穏やかな滋養)」を基本とするのが望ましいでしょう。体力が弱い方や冬に慢性疾患を抱えやすい方は、この時期に体質を整え、陽気を高めることで、慢性疾患の予防・改善につなげることができます。
 

一、脾胃を養う食養生

中医学では「医食同源」といい、五行の相生に基づく食養生を重視します。

夏の養生の基本は「夏は心を養い、長夏は脾胃を養う」ことです。

「長夏」とは、夏至から小暑・大暑にかけての最も暑い時期を指し、五行では「土」に属します。脾も五行では土に属するため、この時期は脾を養うことが大切です。

『黄帝内経・素問・経脈別論』には「飲食は胃に入り、その精気は脾へ運ばれる」とあり、脾と胃は表裏一体であり、脾胃を養うことが生命エネルギーを養う基盤になると説かれています。

脾は湿気を嫌うため、脾を養うには健脾と除湿が重要です。ここでは古代中医学が勧める食品と民間の養生法をご紹介します。

1.黄色く自然な甘味のある食品で脾を養う

雑穀や根菜類に含まれるでんぷん由来の自然な甘味は、脾胃を養う働きがあります。

サツマイモ粥(焼き芋は体を熱しやすいため粥がおすすめです)やカボチャ粥は、『本草綱目』でも胃と脾を養う古くからの養生食として紹介されています。

作り方は簡単で、サツマイモまたはカボチャを米と一緒に炊き、お粥の表面にとろみのある「粥油」が出るまで煮込めば完成です。(炊飯器の場合は米と水を1:8の割合にし、お好みで調整してください。)

カボチャともちアワを一緒に煮た粥は、気を補い、腸胃を潤し、体力低下の改善や安眠にも役立ちます。ただし、血糖値が気になる方は量を控えめにしてください。(※もちアワは普通のアワより粒がやや小さく、黄金色で丸く、粉質が多いため煮えやすいのが特徴です)

2.ハスの実粉のお粥

『本草綱目』に伝わる養生食であるハスの実粉粥は、脾を健やかにし、胃を温めるほか、発汗や下痢を抑える働きがあります。

市販のハスの実粉ともち米を一緒に炊くだけで作れます。

特に、口や喉が渇いて何度も水を飲みたくなる人におすすめです。

3.ショウガ入り卵

中医学には「冬はダイコン、夏はショウガを食べれば医者いらず」という言葉があります。

卵は栄養豊富で、ショウガには胃を温め、脾を養い、食欲を促進する作用があります。

皮をむいたショウガのしぼり汁をゆで卵に少量加えると、冷房や冷たい飲食によって冷えた胃を温めるのに役立ちます。

なお、陽気を補う食品は午前中に食べるのが望ましいとされています。

4.鶏肉とショウガのお粥

『神農本草経集注』には、鶏肉には体力を補い、胃腸を温める働きがあると記されています。

『本草綱目』では、ショウガ粥は胃を温め、邪気を払うとされています。

鶏肉に適量の皮をむいたショウガを加えて調理すると、脾胃を温め、気を補い、冷え体質の改善に役立ちます。

体力の落ちた方や高齢者には、『本草綱目』では消化吸収しやすい鶏スープ粥が勧められています。

鶏肉・ショウガのお粥は、大暑におすすめの滋養食です。(Shutterstock)

 

二、湿気を取り除く養生法

脾は湿気を取り除く役割を担っています。しかし、大暑の湿気は脾への負担を大きくするため、除湿も重要な養生になります。

1.小豆とハトムギのスープ

『本草綱目』では、ハトムギ粥には「湿熱を除き、胃腸を整える」働きがあるとされています。

ハトムギと小豆は健脾・除湿を代表する食材です。一緒に煮てスープにし、砂糖の代わりに氷砂糖やハチミツで甘味をつけるとよいでしょう。

氷砂糖は肺と脾を養い、気を補い、胃を整え、肺を潤し、咳や痰を和らげる作用があるとされています。

2.緑豆とアワのお粥

緑豆は熱を冷まし解毒し、アワは脾胃を養い、利尿・除湿を助けます。

夏の暑い日に適していますが、就寝前は避けたほうがよいでしょう。夜間の排尿が増えて眠りを妨げることがあります。

冷えやすい体質の方は少量にとどめるか、ナツメを加えて煮るのがおすすめです。

3.四神湯

ハスの実、山芋、オニバスの実(芡実)、ブクリョウを豚モツ(豚の胃)と一緒に煮込んだ四神湯は、一年を通して脾を養い、湿気を取り除く穏やかな滋養スープです。

4.老鴨と冬瓜の煮込み

中医学では、夏の滋養スープとして「老鴨(成熟したアヒル)と冬瓜の煮込み」が勧められています。

湿気を取り除き熱を冷ましながら、陰を養い、体力を補う働きがあります。

また、ヘチマやゴーヤも利尿・除湿に適した食材です。

5.小麦の麺を食べる

大暑は三伏の中伏(二伏)にあたります。

ことわざには「初伏は餃子、中伏は麺、末伏は焼き餅と卵巻き」とあり、『龍泉県志・巻一』にも「小暑にはアワを食べ、大暑には穀物を食べる」と記されています。

いずれも大暑には麺類を食べて体を養うことを勧めています。

『本草綱目』では、小麦食品は「心気を養い、心の病によい」とされています。

また、温かいスープ麺やお粥は脾胃を温める働きがあり、「陰中暑」(冷たい飲み物や冷房によって体内に寒邪がたまった状態)の改善にも役立ちます。

一年の「三伏」の時期のイメージ図。(大紀元)

 

大暑の暑い日に避けたい養生の禁忌

長時間座り続けたり寝続けたりしないこと

『黄帝内経』では、夏は「養長」の季節であり、「外へ出ること」を勧め、陽気を高めるよう説いています。

長時間座り続けたり寝続けたりし、さらに冷房の効いた部屋にいると、新陳代謝や免疫力が低下します。

大暑の暑さを過度に恐れず、朝の穏やかな日差しの中で軽い屋外活動を行うことで、五臓の働きを活発にし、体内の湿気も排出しやすくなります。

『抱朴子』にも次のように記されています。

「長く座り続けず、長く歩き続けず、長く見続けず、長く聞き続けず……体は適度に動かし、食事は腹八分目を心掛ける。働き過ぎず、空腹になり過ぎないこと」

かき氷や冷たい飲み物、生ものを避けること

暑い日には多くの人が冷たいものを求めます。

しかし古代の医学者は次のように戒めています。

「食べてはならない。一時的には気持ちよくても、長く続ければ病となる。李時珍は、宋の徽宗皇帝は氷を食べ過ぎて脾を病んだと記している」(『本草綱目・水之一』)

冷たい食べ物や飲み物は一時的な爽快感を与えますが、長く続けると脾胃の消化吸収機能が弱まり、体内に湿気が蓄積して陽気を損ない、慢性的な疲労や病気につながると考えられています。

猛暑の日には冷たい飲み物や氷菓子は魅力的ですが、養生の面では大きな禁忌とされています。(Shutterstock)

大量の発汗で体液を失わないこと

猛暑では大量の汗をかきやすく、体液(津液)だけでなく心気も消耗します。

そのためには、体と心の両方から整えることが大切です。

体の面では、大量に汗をかくような激しい運動は避け、運動中は少量ずつこまめに水分補給を行い、一気飲みは控えましょう。

心の養生について、『抱朴子』には「考え過ぎれば精神は散り、思い悩めば心は疲れる」とあります。

暑さは疲労感を強めやすいため、「考え過ぎず、思い過ぎず、笑い過ぎず、話し過ぎず、喜び過ぎず、怒り過ぎず、楽しみ過ぎず、悲しみ過ぎず、好き嫌いに執着せず、物事に振り回されない」ことを勧めています。

穏やかで落ち着いた心を保つことが、心気を守る最良の方法です。

『黄帝内経』には、「賢者は四季に従い寒暑に適応して養生する」とあり、夏に陽気を養わなければ、「その根本に逆らうこととなり、本を傷つけ、真の生命力を損なう」と戒めています。

食養生は一度や二度の食事で完成するものではありません。毎日の食事を大切に積み重ねることが本当の養生です。

現代人は忙しく、食事中もテレビやスマートフォンを見ながら食べることが多く、本来の食養生の効果を十分に得られなくなっています。

生命の根本を守るためには、日頃からの養生による予防が、病気になってから治療することよりも大切です。
 

【さらに参考】

以下は『本草綱目』に掲載されているお粥の処方です。参考にしてください。

緑豆粥:熱毒を取り除き、口渇やいら立ちを和らげます。

小豆粥:利尿を促し、むくみや脚気を改善し、疫病を防ぎます。

ハトムギ粥:湿熱を取り除き、胃腸を整えます。

野菜粥:胃を健やかにし、脾を養います。

セロリ粥:夏のこもった熱を取り除き、大腸・小腸の働きを整えます。

松の実粥:心肺を潤し、大腸の働きを整えます。

ショウガ粥:胃を温め、邪気を払います。

ウイキョウ粥:胃を整え、ヘルニアによる痛みを和らげます。

コショウ粥、ゴシュユ粥、辛味米粥:いずれも心窩部や腹部の痛みに用います。

竹葉湯粥:口渇を止め、心を清めます。

羊スープ粥、鶏スープ粥:いずれも過労や衰弱の回復に役立ちます。

牛乳粥:極度の虚弱体質を補います。

酥蜜粥(※酥:油や小麦粉などで作るサクサクした食品、蜜:ハチミツ):心肺を養います。

(翻訳編集 解問)

容乃加