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「ほぼ素足」な靴の方が足にはいいかも?

登山用のゴツくて窮屈なブーツに悩んでいたケリー・バーカスさんは、もっと快適な靴を求めてネットで調べ始めました。

すると「ベアフットシューズ(裸足感覚の靴)」という聞き慣れない言葉を目にしました。しかし「ほぼ素足」のような靴が、でこぼこして湿った予測不能な登山道に向いているとは思えませんでした。

「それまでは、登山にはしっかりした保護とサポートが必要だと思い込んでいました。正直、自分の足だけで耐えられるのか不安だったんです」とバーカスさんはThe Epoch Timesの取材に語ります。

それでも、調べるうちに「ベアフットシューズの理屈には一理ある」と感じるようになりました。こうした靴は、つま先がゆったりしたデザインで、指が圧迫されにくくなっています。登山では、水ぶくれや巻き爪になりやすいものですが、それを防ぐ効果が期待できます。さらに、靴底が薄くて平らなため、地面の感触を足でダイレクトに感じ取れるようになり、不安定な道でもバランスを取りやすくなるのです。

(アナバリスタ/Shutterstock)
(Shutterstock)

試しにベアフットシューズを購入したものの、次の登山ではいつものブーツを履いて出発しました。しかし、帰宅するころにはいつもの痛みに悩まされ、後悔することに。

「その時、『もう登山ブーツはやめよう』と決めました。それからは、持っている靴をすべてベアフットシューズかミニマルシューズに切り替えていったんです」と彼女は言います。

最近、ミニマルシューズの人気は高まっていますが、誰もがすぐに履きこなせるわけではありません。ただ、少しずつ慣らしながら履けば、足本来の働きを取り戻すのに役立つかもしれません。

 

靴との新しい出会い

ミニマルシューズは、歩くことを学ぶ際に足の筋肉をしっかり使う赤ちゃんにとって理想的な靴とされています。

ブリタニー・バリンスキーさんがベアフットシューズを知ったのは、1歳の子どもの靴を探していたときでした。子どもの足はとても幅広く、なかなか合う靴が見つかりません。最初は「赤ちゃんの初めての靴は普通のものを選ぶべき」という家族の意見に従って一般的な靴を買いましたが、結局使いづらくなってしまいました。その後、ミニマルシューズを探し続けたものの、ぴったり合うものが見つからず、試行錯誤を重ねること半年。そんなとき、オンラインで相談したところ、ドイツのミニマルシューズブランド「ワイルドリング」を知りました。試してみたところ、とても気に入り、それ以来ずっと愛用しています。

「この靴が本当に気に入って、自分用にも買うことにしました」と彼女はThe Epoch Timesに語ります。「大人向けのベアフットシューズがあると知って嬉しかったです。今まで持っていた靴をよく見てみると、どれも足の形とはかけ離れていたんです」

バリンスキーさんの母親は、1970年代に流行した厚底靴やウェッジソールをよく履いていました。その影響で、後に両足の手術が必要になるほど足のトラブルを抱えてしまったのです。彼女は母と同じような問題を避けたいと考え、ミニマルシューズが解決策になるかもしれないと思うようになりました。

試しに、赤ちゃん向けの展示会で1日中履いてみたところ、帰宅後も「すぐに脱ぎたい」と思わなかったことに気づきました。それまでの靴では、家に帰ると真っ先に脱いでいたのに。

今では、バリンスキーさんはイギリスでベアフットシューズの魅力を広める活動をしています。そのきっかけは、意外にも家族の中からでした。

「私がこの靴を買った日、夫が『なんで俺の分は買ってくれなかったの?』って言ったんです。それで彼の分も注文したら、1週間のうちにワイルドリングの靴が3回も届くことになりました」と彼女は笑います。「それ以来、普通の靴は一切買っていません。子どもが増えるのと同時に、家の中のベアフットシューズもどんどん増えていきました。今では子どもが4人いますが、全員ベアフットシューズを履いています」

 

徐々に慣らすことが大切

一般的な足の形をしていて、これまでに大きなケガをしたことがない人であれば、靴のスタイルを急に変えてもすぐに慣れることが多いです。しかし、そうでない人は、無理なく慣れるために、段階的に履ける靴を選んだり、ベアフットシューズを部分的に取り入れたりするのが良いでしょう。

普通の靴を履き続けると、実は足の筋力が落ちる原因にもなるのです。たとえば、ギプスをつけると骨が安定する一方で、筋肉の動きが制限されて衰えてしまうのと同じです。

特に、ハイヒールやつま先が細く硬い靴のように、足が靴の中で自由に動かせない場合、足の筋肉は少しずつ弱くなり、疲れやすくなります。さらには、筋肉の働きにも影響を及ぼし、本来の機能を発揮しにくくなってしまうのです。

筋肉の働きには、動かすことがとても重要です。体を動かすことで、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー物質が増え、体を動かしやすくなります。ATPは、心臓を動かしたり、呼吸をしたりといった無意識の生命活動を支えるだけでなく、筋肉の収縮やリラックスを助ける重要な役割を担っています。

一方で、国際的にベアフットサイエンスや足のリハビリを指導している足病医のエミリー・スプリチャル博士によると、多くの人はベアフットシューズに切り替える際に痛みを感じるそうです。「まるでギプスを外したばかりで、いきなり走ろうとするようなもの」だと彼女は言います。

また、ミニマルシューズを取り入れる前に考慮すべきポイントもいくつかあります。

  • 過去や現在の足のケガ
  • 普段どれくらい立ちっぱなしの時間があるか
  • 運動習慣や活動量
  • 足の筋力
  • 足のストレッチやトレーニングをしているか
  • 足の形(高いアーチか扁平足か、柔軟性、指の長さなど)

「だからこそ、私が『この一足がおすすめ!』とは言えないんです」とスプリチャル博士はThe Epoch Timesに語ります。「足の形やライフスタイルによって、ミニマルシューズを一日中履ける人もいれば、普段の生活で1日5,000〜10,000歩も歩く中で、慣れるのが難しい人もいます」

 

よりシンプルな靴で、より強い足へ

研究によると、ミニマルシューズを履くことで足の筋力が向上し、素足に近いほどその効果が高まることが分かっています。

2024年にJournal of Sports Sciencesに発表された研究では、9〜12歳の子ども30人が20週間にわたって学校でミニマルシューズを履いたところ、足の筋肉が大きくなり、強くなったことが確認されました。また、足のアーチ(土踏まずの部分)も改善されたという結果が出ています。

さらに、Scientific Reportsに掲載された別の研究では、ミニマルシューズを6カ月間毎日履くことで、足の指を曲げる力(趾屈力)が強くなったことが分かりました。足の筋力が弱いと、指の変形につながる可能性があります。例えば、「ハンマートゥ」は足の指の中間関節が下向きに曲がってしまう症状で、歩行時の痛みや靴の圧迫による不快感を引き起こします。また「外反母趾」は親指が他の指の方向へ曲がり、関節が突出することで炎症や痛みが生じることがあります。さらに、「クロートゥ」は足の指が縮こまるように丸まってしまい、指の付け根に過剰な圧力がかかることで、靴ずれや歩行時の違和感を引き起こすことがあります。

また、この研究では、足の筋力が安定性とバランスを向上させ、転倒のリスクを減らすことも示されています。転倒は高齢者の約3割に影響を及ぼし、生活の質を大きく損なう要因となるため、特に重要なポイントです。

ミニマルシューズの研究では「ミニマルインデックス」と呼ばれる評価基準が用いられます。この指標は、以下の5つの要素を均等に評価し、靴の「ミニマル度」を数値化するものです。

・軽いほど自然な足の動きを妨げにくい

・靴底がどの程度折りたためるか、丸められるか、ねじれるか

・かかととつま先の高低差。一般的な靴ではかかとが高くなっている

・足と地面の間にある素材の量

・サポート機能や安定装置の有無

「サポート機能」には、アーチサポート(足の土踏まずを支えるもの)やヒールカップ(かかとを固定する構造)などが含まれます。また、「安定装置」の一例として、靴のつま先が上向きにカーブしたトウスプリングがあります。これは、靴底が硬い場合に歩行をスムーズにするための設計ですが、エミリー・スプリチャル博士によると、足の指に関節炎がある人や高齢者にとっては役立つこともあるそうです。

裸足スタイルと一般の靴の比較(大紀元)

 

足本来の機能を取り戻すには

スプリカル氏の目標は、誰もが日常生活の中で「足本来の機能」を活かすことです。その方法は人それぞれで、素足で歩く、ミニマルシューズを履く、足のエクササイズを取り入れるなど、いろいろな選択肢があります。

例えば、看護師は勤務中にクッション性の高いナイキのVaporflyやHOKAのスニーカーを履き、ジムでのトレーニング時にはミニマルシューズを選ぶというのも一つの方法です。毎日少しでも素足で歩く習慣をつけるだけでも、足の機能を回復させる効果があるといいます。

「ミニマルシューズを履くからといって、一日中それだけを履く必要はありません。状況に応じて使い分ければいいんです。“完全にミニマルシューズ派になるか、まったく履かないか”という極端な考え方をする必要はありません」とスプリカル氏は語ります。

ミニマルシューズにはさまざまな種類があり、つま先が広めのデザイン、かかととつま先の高低差(ヒールドロップ)が少ないもの、クッション性がややあるタイプなど、自分に合ったものを選ぶことができます。ただし、靴底が薄いため、地面の尖ったものが突き抜けやすい点には注意が必要です。

また、スプリカル氏によると、腱を痛めている人や、関節がゆるく安定しにくい人(靭帯が極端に柔らかい人)にはミニマルシューズは向かない場合があります。関節が不安定だと、ケガのリスクが高まる可能性があるためです。

 

快適な靴へのこだわり

昔の靴は、今のように「おしゃれ優先」で作られていたわけではありません。基本的には、実用性が重視されていました。古代では、サンダルやゆったりとした革製の靴が一般的で「ストレートシューズ」と呼ばれる左右の区別がないデザインが主流でした。

アイオワ大学の「靴の科学」に関する記事によると、第二次世界大戦中は資源不足の影響で、アメリカではヒールの高さが1インチ(約2.5cm)以下に制限され、イギリスではさらに低かったそうです。しかし、戦後にこの規制が解除され、工業化によって安価な合成素材が登場すると、靴のデザインは一気に多様化。おしゃれかどうかが「良い靴」を判断する基準となりました。

スプリカル氏によると、こうした流行の変化とともに足の痛みに悩む人も増え、現在の靴に見られるさまざまな改良が生まれたといいます。例えば、クッション性を高めたり、かかとからつま先までの傾斜(ヒールドロップ)をつけたりすることで、かかとへの衝撃を和らげる工夫がなされました。特にスニーカーでは、このような機能が一般的になっています。

今では、結婚式でも新郎新婦やゲストがスニーカーやクロックスのような履きやすいミニマルシューズを選ぶことが珍しくありません。バリンスキーさんはこの流れを歓迎しており、その背景には「Z世代(1990年代後半~2010年代生まれ)の柔軟な考え方と、快適さを重視する価値観がある」と考えています。

「これはベアフットシューズにとって絶好のチャンスです。なぜなら、結局のところ、大事なのは『快適さ』だと気づくきっかけになるから」と彼女は語ります。「もう、昔ながらの靴を無理に受け入れる必要はないんです」

 

ミニマルシューズの選び方

ミニマルシューズの中には100ドル(約1万5千円)以上する高価なものもありますが、もっと手頃な価格の選択肢もあるとスプリカル氏は言います。

「ミニマルシューズは、基本的にゴムと布でできたシンプルな構造です。クッションや高度な技術が使われているわけでもありません」と彼女は指摘します。「それなのに、何百ドルもする必要があるでしょうか? 私には、そうは思えません。高いからといって、それが必ずしも価値につながるとは限らないんです」

登山ブログを運営していたバーカスさんは、読者からベアフットシューズに関する情報をもっと知りたいという声が多く寄せられたため、ブログをBarefoot Shoe Guideへと移行しました。彼女はよく、大手ブランドと低価格ブランドのシューズを比較しています。

手頃な価格のミニマルシューズの利点は、気軽に試せることです。ただし、耐久性が低かったり、素材の質が劣る場合があるため、注意が必要だと彼女は言います。

「まずはリーズナブルな一足を見つけて、試してみることが大切です。履いてみれば、その良さが実感できるはず」とバーカスさん。「自分の生活にどう取り入れるかを考えて、少しずつ始めてみてください。少しでも試すことに意味があります。そして、実際に試した人の多くは『もう普通の靴には戻れない』と言うんです。本当に戻れなくなりますよ」
 

(翻訳編集 華山律)

イリノイ大学スプリングフィールド校で広報報道の修士号を取得。調査報道と健康報道でいくつかの賞を受賞。現在は大紀元の記者として主にマイクロバイオーム、新しい治療法、統合的な健康についてレポート。