人々はよく「読書は有益だ」と言いますが、読書は知識を増やすだけでなく、経済的な面でも良い影響があることが新たな研究で明らかになりました。児童が読書をすることで、将来の収入が大きく増える可能性があり、国家全体の経済パフォーマンス向上にもつながるとされています。
イギリスの不動産開発・投資会社「ブリティッシュ・ランド」とイギリス国家識字基金が、PR会社「WPIストラテジー」に委託して実施した研究では、児童の課外読書に経済的価値があることを初めて示しました。
WPIストラテジーのモデル試算によると、もしイギリスのすべての学齢児童が毎日課外読書を行った場合、今後30年以内に16歳時点で5科目の「中等教育普通証書」を優秀な成績で取得する人数が110万人増えるとされています。また、これらの人々の生涯収入は平均57,500ポンド(約11,900,000円)増えると推定されています。
分析ではさらに、30年後には、このような課外読書習慣の変化によってイギリスの国内総生産(GDP)が年間最大46億ポンド(約9500億円)押し上げられる可能性があると述べられています。
ブリティッシュ・ランドはニュースリリースで、同社が10年以上にわたりイギリス国家識字基金と協力し、同基金の「ヤング・リーダーズ・プログラム」を支援してきたと説明しています。このプログラムは、イギリスで最も困難な地域に住む55,000人以上の子どもたちに読書の機会を提供し、これまでに167,000冊以上の本を配布してきました。
イギリス国家識字基金では、2020年に「読書を楽しむ」と答えた児童の割合が過去15年で最も低い47.8%となりましたが、同基金の報告によると、2021年にはわずかに上昇し、半数(51.5%)が読書を楽しむと回答しています。
ブリティッシュ・ランドのサイモン・カーターCEOは「今回の研究は、若い世代の学習能力と識字能力を育むことが、私たち全員に利益をもたらすことを示しています」と述べています。

しかし現在、多くの子どもたちはスマホやタブレット、パソコンなどの電子機器に夢中になっており、課外読書の習慣を持つ子は多くありません。
イギリス国家識字基金の最新研究では、毎日課外読書を行う子どもや若者は全体の3割(30.1%)にとどまっています。これは、イギリスにおける現在の読書水準が、WPIストラテジーの試算が想定する「毎日読書」とは大きくかけ離れていることを意味します。
同基金はさらに、前年に無料の学校給食を受けていた男子児童では、毎日の読書習慣が悪化したことを指摘しています。このグループでは、課外時間に毎日読書をする割合が5.7%減少しました。
課外読書の減少傾向は他国でも同様です。アメリカの「国家教育進展評価」のデータによると、2023年にほぼ毎日課外読書を行うアメリカの児童はわずか14%で、2020年から3ポイント、2012年からは13ポイント減少しています。
また、読書習慣のある大人も多くはありません。大人が本を読まなければ、子どもが本を読む可能性も低くなります。
市場調査会社「YouGov」が今年初めにイギリスの成人2,000人を対象に行った調査では、過去1年間に40%の人が本を1冊も読まず、オーディオブックも聴いていないと回答しました。約4分の1(23%)は1〜5冊を読みまたは聴き、50冊以上を読んだ(または聴いた)人はわずか4%で、これは週1冊以上のペースに相当します。
年齢別に見ると、高齢の人ほど読書をする傾向があります。過去1年間で少なくとも1冊読んだ(または聴いた)割合は、65歳以上が65%、50〜64歳が63%でした。これに対し、25〜49歳は57%、18〜24歳は53%にとどまっています。
注目される点として、現在は電子書籍などスクリーンで読書をする人が増えていますが、研究では紙の本を読むほうが脳に良い影響を与える可能性があるとされています。紙の本の冊数は学力と明確な正の相関が見られる一方、電子書籍の冊数には同様の関係が見られないとされています。
(翻訳編集 解問)
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