一般的に「アヒルの足」と呼ばれる扁平足は、日常生活でもよく見られる症状です。多くの人は「見た目の違いに過ぎない」と思いがちですが、実はそうではありません。早期に矯正を行わない場合、扁平足は骨格・関節・筋肉の発達に影響を及ぼし、体力不足や慢性的な痛みを引き起こす可能性があります。特に子どもの場合、その影響は顕著です。
家誠足科クリニックの袁誠璋医師はこう述べています。「扁平足は単なる足の形の問題ではなく、全身のバランスや体重のかかり方にも関係してきます。見過ごすと、一生悩まされる原因になることもあります」
扁平足の症状と影響
正常な足のアーチは、歩行時や立位で体重を分散させ、バランスと柔軟性を保ちます。しかし、アーチが崩れて足裏が平らになると、体重のかかり方が不均等になります。
袁医師は説明します。「扁平足によく見られる特徴には、内股歩き、足指が浮いている、バランスが悪く歩行持久力がない、大きな筋肉の発達が遅れる、靴のかかとや底の内側が異常にすり減るなどがあります」

症状は足だけにとどまらず、姿勢の変化を引き起こし、左右の足の長さの違いや肩の傾き、歩行時の重心の不安定、腰痛や背中の痛みなどにつながることもあります。
臨床現場では、学校の朝礼で立っていられず足が震える子どもが「体力不足」や「怠けている」と誤解されるケースもあります。また、外出して十数分で疲れてしまい、転びやすいお子さまもいます。足のアーチの支えが長期間不足すると、足底の靱帯が炎症や石灰化を起こし、重症化すると関節炎や坐骨神経痛、全身の筋肉疲労につながることもあります。

多くの扁平足はインソールやリハビリによって改善が可能ですが、先天性や重度のケースでは手術が必要になることもあります。袁医師はこう説明します。
「手術では通常3~4本の骨を切って再配置し、スクリューやインプラントで固定します。手術時間は4~5時間に及び、回復期間は9か月から1年ほどかかります」
そのため、日常生活に支障が出る場合を除き、医師はまず保存的治療(インソールやリハビリ)を勧めることが多いそうです。
矯正の黄金期:3歳から12歳まで
臨床的な観察によると、3〜12歳は足のアーチが発達するゴールデンタイムです。袁医師はこう注意を呼びかけます。
「12歳までにお子さまの足に異常が見られた場合は、速やかにリハビリ科で評価を受け、理学療法や作業療法(姿勢矯正、筋力トレーニング、ストレッチなど)を行うことが大切です」
「お子さまの骨格はまだ成長途中であるため、早期の矯正が効果的です。矯正用インソールは15歳までに使うことで、正常な骨格構造の形成を助けます。逆に、骨格が完成してからではインソールは痛みを和らげる効果はあっても、構造自体を根本から変えることはできません」と袁医師は語ります。
日常のケアと予防のポイント
扁平足の悩みを避けるためには、日常的なケアと正しい靴選びがとても重要です。袁誠璋医師は、次のようなアドバイスを挙げています:
1.適切な靴を選ぶ
足のアーチをしっかりサポートする運動靴を選びましょう。長時間、平底のサンダルやビーチサンダルを履くのは避けてください。アーチの支えがない靴は、扁平足を悪化させる原因になります。
2.インソールは徐々に使用
インソールの使用を始める際は、最初から高いものではなく、控えめな高さから始め、徐々に調整していくことで、痛みや違和感を軽減できます。
3.筋力とストレッチのトレーニング
足の指で地面をつかむような運動や、つま先立ちでの歩行などを取り入れて、内側の筋肉を鍛えましょう。これにより、足のアーチを支える筋力が向上します。
4.正しい姿勢を保つ
長時間の立ち仕事や、重い物を持ち続けることは、膝や腰に過度な負担をかけます。姿勢を意識し、体への負担を分散させることが大切です。
5.定期的なチェック
お子さまの歩き方に異常が見られる、転びやすい、靴底のすり減り方が左右で異なるなどの兆候がある場合は、早めに専門医の診察を受けましょう。矯正のタイミングを逃さないことが重要です。
扁平足は一見すると小さな問題に思えるかもしれませんが、実際には全身の健康に大きな影響を与える可能性があります。
袁医師は次のように警告しています。「扁平足は、自動車の4輪に例えることができます。1つでもバランスが崩れると、長い期間の中で必ず摩耗が生じます。人間の足も同じで、全身の体重を支えているため、わずかなズレが骨格や関節に連鎖的な影響を与えるのです」
保護者の皆さまに対しては、子どもの足の健康にしっかり目を向け、早めに検査や矯正を行うよう呼びかけています。「足のアーチを正しい位置に戻してあげることができれば、お子さまは成長の中で自由に走り回ることができ、健康な人生を送る大きな助けになります」

袁誠璋医師について
袁誠璋医師は、スティーブンス工科大学で生物医学工学の学位を優等で取得し、ニューヨーク足病医学大学で博士号を取得しました。その後、退役軍人病院で様々な足病医学および外科の研修プログラムを修了し、『Journal of the Podiatric Medical Association』誌に研究論文を発表しています。アメリカ足病医学会およびアメリカ足・足首外科学会の名誉会員であり、認定足病外科医でもあります。長年にわたり、袁医師は豊富な知識と経験を活かし、中国系コミュニティに質の高い足病治療とケアを提供してきました。
(翻訳編集 解問)
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