FDA 企業に任せず食品の安全性を検証する体制を!

FDA、食品添加物対策で組織再編へ ― 専門家が警鐘

ヒューマンフードプログラムにより、食品に含まれる化学物質の安全性を確保するという我々の使命を、最も効果的に遂行できるようになります」とFDAが発表しました。

米国食品医薬品局(FDA)は、10月1日に新たなヒューマンフードプログラムを開始しました。このプログラムにより、FDAの組織が再編され、人々の食品供給をより適切に監視・保護できる体制が整えられます。

このプログラムの一環として、食品添加物や着色料、一般に安全と認められるGRASGenerally Recognized As Safe)物質、食品接触物質、意図しない食品汚染物質など、食品中の化学物質に対するポストマーケット評価(市場投入後の評価)が体系的に行われるようになります。

食品規制に関わる多くの学者や弁護士は、この新プログラムがGRASラベルの下で、承認された食品添加物に対するより厳格な規制に、つながることを期待しています。

食品添加物や着色料などの化学物質に対するポストマーケット評価が行われる(Shutterstock)

 

今の所、現在のGRAS指定により、食品企業はFDAの審査を受けずに、添加物の安全性を判断できるため、潜在的な健康リスクに対する透明性と監視の欠如が懸念されてきました。

ニューヨーク大学公衆衛生政策・管理学部准教授のジェニファー・ポメランツ氏は、『エポック・タイムズ』に対し、「大きな懸念の一つは、FDAや公衆が知らない成分が食品供給に含まれていることです」と語りました。

また、9月25日に行われたFDAの公開会議で、ポメランツ氏は「GRAS物質の業界による自主規制と、すでに食品に含まれている物質に対するFDAの正式なレビューの欠如では、公衆の健康を守るには不十分です」と述べています。

これに対し、FDAは『エポック・タイムズ』の取材に対し、「安全性の監視を改善することに尽力しているものの、ポストマーケットレビューのプロセスは予算や現行法によって制約される」と答えました。

FDAは現在、ポストマーケットシステムに関する公的意見を12月6日まで受け付けており、このシステムは2025年に開始される予定です。

『エポック・タイムズ』は、FDAにもコメントを求めました。

 

プログラムの目的は?

FDAの**ヒューマンフードプログラム(HFP)**は、FDAの近代史上最大の再編成となり、8千人以上の職員に影響を与えます。この取り組みは、食品供給の監視を強化し、食品の安全性を向上させ、新たな業界の課題に対応することを目的としています。

この再編成の重要な部分には、食品検査、調査、輸入品に対する焦点が含まれています。

HFPによる提案された改革の主な内容は以下のとおりです。

監視の強化:GRAS物質や食品添加物に対するレビューをより徹底的に行い、安全性データを慎重に評価するプロセスを整備する予定です。

安全性を慎重に確かめる(Shutterstock)

 

栄養への注力:栄養に焦点を当てることで、食事に関連する疾病の対策を進め、全ての人々の健康向上を目指します。

パートナーシップの強化:FDAは、州の規制当局との連携を強化し、新しい食品技術を取り入れることで、ますます複雑化する食品業界を効果的に管理する方針です。

変化への対応:このプログラムは、グローバル化や気候変動、人々の食品生産や消費の進化などの課題に対して、FDAが柔軟に対応できるようにすることを目的としています。

 

GRASに関する論争を理解する

食品規制の専門家たちは、新たなプログラムがGRAS(一般に安全と認められる)として承認された食品添加物に対する管理を強化し、FDAの監視なしで食品業界が新しい化学物質を導入できる現状を、改善することを期待しています。

GRAS指定は、1958年の食品添加物修正法に由来し、資格のある専門家によって「一般に安全」と認められた特定の物質は、厳格な試験を免除されるというものです。当初、この制度は一般的な成分の承認を迅速に行うために導入されましたが、時間が経つにつれて規制の抜け穴が生じてきました。

ニューヨーク大学公衆衛生政策・管理学部のジェニファー・ポメランツ氏は、「当時は超加工食品の消費量が非常に少なく、FDAも現在のような大量の超加工食品(硬化油、添加糖、香味料、乳化剤、保存料などの添加物を多く含み、工業的な過程を経て作られる)がアメリカ人の食生活の主流になるとは想定していませんでした」と述べています。「超加工食品は当時のアメリカの食事に存在していませんでした」。

ポメランツ氏は、「『一般に安全と認められる』物質は、塩やコショウのようにすでに食品供給に含まれているか、安全性の証拠を提出することで認められました」と説明しています。

FDAは新しい化学物質が市場に登場する前にその安全性を評価しますが、「食品添加物」は承認が必要であるのに対し、「GRAS」成分はその必要がありません。この区別により、企業は歴史的な使用例や自社の安全性評価に基づいてGRASステータスを決定でき、FDAに通知する必要がありません。その結果、天然甘味料や保存料のような未検証の物質がGRAS指定を利用して導入されていることがあるのです。

天然甘味料や保存料のような未検証の物質がGRAS指定を利用して導入されていることがある(Shutterstock)

 

1990年から2010年にかけて、約1,000の物質がFDAに通知されることなく、企業によってGRASとして指定されました。1997年以降、FDAは食品業界が独自にGRAS物質を決定できるようにし、企業は自社の安全性評価を行いながらもFDAに通知する必要はなくなりました。FDAは情報開示を奨励していますが、これは任意であり、多くの新しい物質が通知されずに食品として供給されているのです。

FDAが新たに立ち上げたヒューマンフードプログラムは、これらの抜け穴に対応することを目指しています。

ハーバード法科大学院のヘルスロー・政策イノベーションセンターのディレクターであり、この研究の共同著者であるエミリー・ブロード・リーブ氏は、「FDAは、食品供給中のごく一部の成分に対してポストマーケット権限を利用し始めたばかりであり、有害性の証拠が何十年も前から存在しているにもかかわらず、その対応が進んでいません」と述べています。

 

予算の課題

公開会議で、ジム・ジョーンズ氏(ヒューマンフード担当副コミッショナー)は、予算の制約がFDAによる包括的なポストマーケットレビューを妨げていると述べました。

「公衆衛生の使命を果たすために必要なプログラム的な要求が、私たちの利用可能な資源(予算)を上回っている状況で、新しい会計年度に計上されています」と彼は説明しています。

FDAの公開会議では、ポストマーケットレビューの強化と改善について議論されましたが、ポメランツ氏によれば、多くのコメントは、これだけでは不十分であることを示唆していました。

ポメランツ氏は、科学データを効果的にレビューし、提案されたポストマーケット評価を管理するためには、より多くのスタッフが必要だと指摘し、これらの変化を実行するためにはさらなる資金が必要だと強調しました。

FDAは議会に対して資金の増額を要請し、3千万ドルを安全性懸念のレビューに充てることを求めましたが、近年は700万ドルしか受け取っていません。

 

(翻訳編集 華山律)