ケトジェニック・ダイエット(糖質制限よりも厳しく糖質制限し、脂質に大きく偏った食事を摂るダイエット法)やヴィーガン・ダイエット(倫理上、または環境保護や健康上の理由から肉、魚介類、卵、乳製品などをやめ、植物性の食材を丸ごと食べるこ)を始めようとお考えですか? そうすることで、体重を減らす以上のことができるかもしれません。
『ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)』誌に掲載された新しい研究によると、この大きく異なる2つの食事が免疫系を素早く変化させ、病気の予防に栄養がいかに効果的であるかを実証しています。米国立衛生研究所(NIH)の研究者たちは、ヴィーガンやケトジェニック食を食べると、体の免疫システムがはっきりと変化することを発見しました。
「我々のデータから、ケトジェニック食は全体的に、適応免疫系に関連する経路の有意なアップレギュレーション(神経伝達物質やホルモンなどへの応答能が増大すること)と細胞の濃縮に関連していることが明らかになりました。対照的に、ヴィーガン食は、抗ウイルス免疫に関連する経路のアップレギュレーションを含め、自然免疫系に大きな影響を与えた」と研究者らは述べています。
一方で、ヴィーガンダイエットは、乳製品や卵など、動物由来の食品を制限するものであり、ケトジェニック・ダイエットは低炭水化物で、動物性食品に大きく依存する場合としない場合があります。炭水化物の摂取を1日50グラム以下に抑えながら、カロリーのほとんどをタンパク質と脂肪から摂取し、最終的に体をケトーシス状態(体がエネルギーとして主に脂肪を燃焼し始める状態)にするというものです。
近年、米国ではケト(ケトジェニック)ダイエットの人気が高まっています。ケトダイエットは2019年に爆発的に普及し、有名人や健康雑誌、ドキュメンタリー番組がその有効性を喧伝したことで、95億7千万ドル(約1兆3882億円)もの市場へと拡大しました。2020年には、2540万件以上の検索履歴も相まって、最も検索されたダイエット法となりました。
これと並行して、ヴィーガン食の人気も高まり続けています。2021年の調査によると、ヴィーガン食を実践するアメリカ人の数は2014~18年にかけて600%増加し、植物性食品市場は2017~19年にかけて29%増加しました。
どちらの食事も
2週間でマイクロバイオームを変化させる
両方の食事の効果を調べるため、20人の研究参加者が2週間、一方の食事から好きなだけ食べ物を摂取し、その後2週間、もう一方の食事から好きなだけ食べ物を摂取しました。
ケト食には、肉、鶏肉、魚、卵、乳製品、ナッツ類などの動物性食品が含まれてあり、ヴィーガン食には、豆類、米、根菜類、大豆製品、トウモロコシ、レンズ豆、エンドウ豆、全粒穀物、パン、果物が含まれていました。この研究によると、菜食主義者はケトジェニックダイエットと比較して食物繊維が多かったですが、一方、脂肪酸とアミノ酸はケト食の方が多くなりました。
どちらの食事も参加者の免疫系に有益でしたが、身体への影響は様々でした。
ヴィーガン食は、自然免疫系を促進し、より多くの赤血球にリンクした経路を促進したそうで、ケト食は適応免疫系を助けました。適応免疫系には抗原のメモリーバンクがあり、それが強ければ強いほど、以前感染したウイルスや病原体と闘うことができるといいます。具体的には、ケト食は血漿中のタンパク質濃度を高め、血液、脳、骨髄を含む幅広い組織のタンパク質濃度を高めることが確認できました。
どちらの食事も研究参加者のマイクロバイオーム(体の表面や腸内環境で形成される微生物コミュニティ)にも変化を引き起こし、栄養が体の機能に重要な役割を果たしていることを示しています。
研究者らが確認した最も顕著な変化は、ケトジェニック食を摂っている人のマイクロバイオームが、アミノ酸の生合成に関わる経路をダウンレギュレート(継続的または過度な刺激により、神経伝達物質やホルモンなどへの応答能が低下)していることでした。他の変化も指摘されています。
「ヴィーガン食で発現が増加した微生物酵素のほとんどは、植物特有の多糖類の消化に関連していましたが、ケトジェニック食で発現が増加した微生物酵素は、植物と動物の両方に由来する多糖類の消化に関連していました。我々の研究は、2週間の食事介入が宿主免疫に顕著な変化をもたらすことを明らかにしました。この結果は、特定の病気に対処している人々にとって、食べ物や調整された栄養が薬として使用できることを示している」と研究者たちは指摘した。
NIHは声明の中で、「著者らは、がんや神経変性疾患に関連するプロセスを遅らせるなど、疾病を予防したり疾病治療を補完したりするために食事の調整が可能であることを示唆している」と述べている。
この研究の著者はまた、栄養が病態管理に果たす役割の完全な意味合いをよりよく理解し、これらの結果がより大規模な集団においても同じことが言えるかどうかについては、さらなる研究が必要であることを強調している。
(翻訳編集 呉安誠)
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