世界保健機関(WHO)によると、「世界各地で急性小児肝炎が発生している。現在のところ、少なくとも1人が死亡。また17人の重篤な子供に対して、肝移植が必要である」と伝えています。
何がこのような小児肝炎を引き起こしたのか。その原因はまだ明らかになっていませんが、研究者は、通常の風邪を含む一連の病気を引き起こすウイルス群のなかから、アデノウイルスの可能性を指摘しています。
最初の症例
最初の症例は2021年10月、米アラバマ州の病院から報告されました。
その時点で、5人の子供が原因不明の肝機能障害で入院しています。
2022年4月5日、WHOはスコットランドで10人の子供の症例が出たと通知しました。その3日後、英国内で74の症例が確認されています。
WHOが得た情報によると、現在のところ、全世界で確認された169の症例のうち、大部分の病例は英国で発見されたものだと言います。
その内訳は、4月21日までで、英国が114例、スペイン13例、イスラエル12例、米国9例です。その他の21例は、デンマーク、アイルランド、オランダ、イタリア、ノルウェー、フランス、ルーマニア、ベルギーなどの各国に分散しています。
日本の厚生労働省は4月25日、「疑われる症例が1件見つかった」と発表し、欧米以外の地域でも病気が広がっている可能性があるとの懸念を示しました。
一般的な症状
肝臓へのウイルス感染によって、皮膚や白眼の部分が黄色くなる「黄疸」が起こります。
さらに、腹痛、下痢、嘔吐などの症状が続きます。
大人の肝炎は通常、上記の症状に加えて発熱がともないますが、今回の子供の症例のほとんどは発熱していません。急性小児肝炎のその他の症状としては、疲労、食欲不振、濃い尿、大便の色が薄い、関節痛などがあります。
この病気の小児の年齢は、生後1カ月の新生児から16歳までで、その多くは10歳未満です。
流行の原因は何か?
このたびの世界的な小児肝炎の原因は、まだ不明です。
保健当局と専門家は、 既知のウイルスで、74人の子供から検出されたアデノウイルス感染の可能性を含めて、さまざまな原因を調査しています。
一部の患者は新型コロナウイルス(中共ウイルス、COVID-19)にも感染していますが、これらのウイルスと肝炎との関連性は不明です。
WHOによると、A型、B型、C型、D型およびE型の肝炎ウイルスなど、急性ウイルス性肝炎を引き起こす「一般的な病原体」は見つかっていない、としています。
海外旅行との関連を含めて、他の危険因子は今のところ認められていません。これまでに、感染児童が出た国では、各方面からの監視活動が強化されています。
WHOは、アデノウイルスを原因とする肝炎発症は、重篤な症例はまれではあるが「可能性はある」としています。なおWHOは、既知のアデノウイルスだけでなく、新しいタイプのアデノウイルスの出現についても調査しなければならないと言います。
アデノウイルスとは何か?
米国疾病予防センター(CDC)によると、「アデノウイルスは、インフルエンザのような症状、つまり発熱、咽頭痛、気管支炎、肺炎、下痢などの様々な症状を引き起こす一般的なウイルスである」としています。
WHOによると、既知のウイルスのうち「50種類以上のアデノウイルスがヒトに感染を引き起こす」としており、その症状は「呼吸器関係が最も多いが、胃腸炎、結膜炎、さらには膀胱への感染症を引き起こすこともある」と言います。
WHOは、今回の小児肝炎患者の40%以上でアデノウイルスが検出されたとしています。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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