歌川広重の『名所江戸百景』。水道橋駿河台の一景には、画面いっぱいの真鯉(黒鯉)が描かれています。
下に流れる神田川。遠くには富士山。鯉といっても水中の魚ではなく、五月の江戸の空を元気に泳ぐ「鯉のぼり」です。緋鯉(ひごい)の鯉のぼりは、ありません。懐かしい唱歌では「大きい真鯉はお父さん。小さい緋鯉は子どもたち」で、お母さん鯉は入っておらず、まだ家族としてのワンチーム鯉にはなっていなかったようです。
そういえば昔、学校で父兄会だったものが父母会になって、今は保護者会。もちろん時代とともに名称が変わり、その概念も変えなければならない事物は多いでしょう。クレヨンの「はだ色」も今はないそうですね。
「でも、変わらぬ風景もあっていいんじゃない」と、今では珍しくなった鯉のぼりを見上げて、つぶやいています。
(慧)
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