【歴史が生んだ逸品】刀削麺の起源と元王朝の秘密

2017年11月9日に掲載した記事を再掲載 

日本でも人気の中華料理・刀削麺(ダオシャオメン)はもともと山西省の一般家庭の主食でした。太くもちもちの麺にパンチの効いたつけ汁を絡めて食べるのも最高ですが、料理人の手慣れた包丁さばきを鑑賞することもこの料理ならではの醍醐味と言えるでしょう。実は刀削麺の調理法は歴史と深い関わりがあり、知られざる誕生秘話がそこにはあります。

刀削麺の調理は生地作りから始まります。まず小麦粉に水を混ぜて生地を作り、削りやすいよう少し乾かします。やや硬くなったら生地を丸め、枕状に形を整えます。そして片手で生地を持ち、もう片方の手で生地を少しずつ削りとります。削り取られた生地はそのまま沸騰した鍋に落ち、ゆであがります。刀削麺はほかの麺と比べて太いため、つけ汁につける、もしくは炒めて食べるのが普通です。

刀削麺は麺生地を刀で直接鍋に削り落とし、独特の形状と食感が生まれるのが特徴です(shutterstock)

そのような刀削麺も中国の歴史と分けて語ることはできません。刀削麺の歴史は元王朝の時代から始まったと言われています。モンゴル人が当時の中国を占領し元王朝を建てましたが、漢民族には抑圧的な統治手法を取っていました。統治者は漢民族が反乱を起こさないよう、庶民からすべての金属器具を取り上げ、10軒の家で1つの料理包丁を共用させました。

ある日の昼頃、一人の老人が隣の家に包丁を借りに行きましたが、運悪く貸してもらえませんでした。家に帰る途中、老人は不意に右足で薄い鉄片を蹴り上げ、それを持ち帰りました。老人の妻は「こんな薄い鉄片で私にどう料理しろというの?」とぶつぶつ不満を漏らしました。老人は仕方なく「切れないなら、私が削ってみるよ」と言って鉄片を手に取り、鍋の前で小麦粉の生地を削り始めました。削り落とされた麺は白魚が水に落ちるかのごとく、次々と鍋に落ちていきました。

ゆであがると妻はさっそく麺をすくい上げてつけ汁をかけました。老人の意外な発見で一家はおいしい麺を食べることができました。老人は「これからは料理包丁を借りに行かなくても良い。この鉄片は融通がきくから、これを使って麺を作ろう!」と嬉しそうに言った。この調理法は瞬く間に山西で広がり、幾度も改良を経て今日の刀削麺になったと伝えられています。

(翻訳編集・真悟)