新研究 ミツバチの毒が乳がん細胞を殺すことが明らかに

オーストラリアの研究チームがミツバチの毒液を使用した実験を行い、有力な結果が得られた。彼らが発見した毒液には、悪性の乳がん細胞の増殖を抑える効果があったのだ。

西オーストラリア州、ハーリー・パーキンス医学研究所の研究リーダーであるシアラ・ダフィー氏は、抽出された毒液No.321は「非常に効果的である」とBBCに語った。1つのサンプルが、がん細胞をわずか60分で破壊したのだ。

9月1日に「NPJ Precision Oncology」で発表されたこの研究は、2つの治療困難な悪性乳がん株、トリプルネガティブ(triple-negative)と HER2-enriched を対象とした。通常これらのがんは手術や放射線治療、化学療法で治療される。

ダフィー氏は「パースのミツバチの毒を集めることから始めました」と語った。「パースミツバチは世界で最も健康的な種の1つなのです」

「まず二酸化炭素でを眠らせて冷凍しました。そして腹部から毒針を抜き取り、慎重に毒を抽出しました」

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オーストラリアやアイルランド、イギリスに生息するセイヨウミツバチの毒液からは、ほぼ同等の効果が得られた。しかしマルハナバチの毒液は、高濃度で使用しても細胞死を誘発することはできなかった。

ミツバチ毒の活性メリチン(蜂毒に含まれる痛みを引き起こす物質)も、単独で使用した場合、がん細胞の成長を阻害するのに効果的で、周囲の細胞に害を与えることもなかった。ダフィー研究チームは、研究室で合成的に生成されたメリチンがミツバチ毒の強力な抗がん作用の大部分を再現できることを発見した。

チームは喜びをあらわにしつつも、この物質が人間のための薬として活用できるかを見極めるにはさらなる研究が必要だと明らかにした。
 

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9月2日、西オーストラリア州の主任研究員であるピーター・クリンケン教授は、チームの研究結果を「大変すばらしい」と称賛した。

彼は「この研究は、いかにしてメリチンが乳がん細胞内のシグナル伝達経路を妨害して細胞複製を制御するかを明示しています」と説明した。「また自然界の物質で人間の病気を治療することができるというすばらしい例を示しています」

豪シドニー、ガーバン医学研究所のアレックス・スウォーブリック准教授は、クリンケン教授の称賛に同意した上で、医薬品開発の見通しに懸念を示した。

「多くの物質が皿上やマウス実験では乳がん細胞を殺すことができます。しかしこれらの発見から臨床診療を変えるものに到るまでには長い道のりがあるのです」

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ミツバチの毒は何千年もの間、医学分野で使用されており、がん研究でも利用されてきた。メリチンに黒色腫やグリア芽細胞腫、白血病および卵巣がん、子宮頸がん、膵臓がんの腫瘍を小さくする効果があることはすでに知られている。それに比べて、悪性乳がんは未知の領域のままだ。

Breastcancer.org によれば、皮膚がんに加えて乳がんは米国の女性の間で最も一般的ながんである。およそ8人に1人の女性、つまり女性人口の12%が一生のうちに乳がんを発症する。

ダフィー氏は乳がん治療に蜂毒を使用する可能性について前向きであり、さらなる研究が重要であると同意した。彼女は研究結果に「がん細胞に対する蜂毒の分子基盤と特異性を理解することが、今までにない効果的な治療法を開発し最適化するための鍵となります」と記した。

ダフィー氏は、蜂毒のすばらしい点は天然製品として「広く利用可能」であり、「世界中の多くの地域で生産する上で費用対効果が高い」ことだと説明した。

(大紀元日本ウェブ編集部)