評論:サーキットブレーカー制度はなぜ失敗したか
中国株式市場のサーキットブレーカー制度は1月4日に実施されて、一時停止となった8日まで、わずか4日間しか発揮されなかった。中国のみならず、おそらく世界の株取引歴史をみても前例ないほど短命だった。
新年最初の取引日だった4日に株価の急落に伴い、下げ幅が限度幅の5%と7%と相次いで達し、15分間の一時取引停止と終日取引停止とサーキットブレーカーを発動された。7日も同様に2回発動され、しかも取引開始から史上最短の29分間で終日取引停止となった。
中国証券管理監督委員会(中証監)がサーキットブレーカー制度を導入した理由は、昨年夏に起きた中国株価暴落を教訓に、株価急落の際に投資家の心理を安定させ、パニック的な投げ売りを防ぐため。しかし逆に株価急落を助長した。中証監は7日夜、期間を設けずにサーキットブレーカー制度を一時停止することを決定した。
失敗の原因は不合理な変動幅
なぜ中国のサーキットブレーカー制度は失敗したのか。最も明らかな原因は、発動する判断基準である滬深300指数(CSI300)が上下5%と7%との変動幅がいかに不合理だったことにある。CSI300が上下5%変動すると、15分間の取引停止となる。上下7%変動すると、その日の取引が即座終了させられる。
しかし、サーキットブレーカー制度を有する米国、日本と韓国を見ると、米国は上下7%、13%、20%と3つの変動幅パターンがある。日本は上下8%、12%、16%。韓国は8%、15%と20%。いずれも発動するか否かを判断する変動幅が広く、3つのパターンを設けている。また米国の場合、主要株価指数が上下7%と13%変動するとそれぞれ15分間の取引停止になるが、それは一日1回に限る。
実際に国内外の専門家はこれまで中証監に対して忠告してきた。上下5%の変動幅であれば、値動きの激しい中国株式市場ではサーキットブレーカーが頻繁に発動される違いない。また5%から7%までの間隔が狭すぎるため、取引停止されるのを不安に思う投資家の心理をさらに悪化させ、結果的にパニック的な投げ売りに繋ぐとの逆効果がある。したがって、国内外の株式市場の経験、実情分析と常識推量から、5%と7%との変動幅が非常に不合理であることが明かだ。なぜ中証監が専門家の反対意見を押し切って実行したのか、実に不可解。
株価の急激な変動を減らす根本は市場情報の透明性、取引の公平さにある。この2つの条件がなければ、サーキットブレーカー制度は市場の安定化を図る目的を果たせない。情報が不透明で、取引の公平さを欠ける市場では投資家はサーキットブレーカーの発動を売り材料とみなすのみだ。
中国経済減速
中国のサーキットブレーカー制度が失敗したもう一つの主因は中国経済減速で、投資家の悲観的心理が拡大したことを挙げられる。過剰に輸出への依存、信用拡大、生産能力の過剰と消費不足など構造的な要因が経済減速を招いた。政治および経済の体制を徹底的に改革を行い、特に政治と経済の深刻な専制かつ独占な状況を打ち破らなけば、経済状況が良くならない。
ただ中国共産党政権は改革の推進歩調が緩やかで、スローガンばかり耳に入るが、実際の行動を見えてこない。しかも当局は依然として徐々に効果が出なくなった金融政策で、景気を刺激しようとする。投資家はすでに経済的ファンダメンタルズに悲観的であるため、いかなるマイナスな情報が市場の緊迫な反響を起こす。サーキットブレーカー制度はまさにその悲観的な心理によって停止されたのだ。
(評論員・劉孟奇、翻訳編集・張哲)