ケイラ・バーンズ=レンツ氏は、何が起こるのかを確かめるためだけに、3カ月間サウナの利用をやめました。
バーンズ=レンツ氏は、健康最適化の分野において、自身の健康状態を最も幅広く測定し、そのデータを公にしている女性の一人として知られています。自宅には、健康管理機器や生体情報測定ツールを数多くそろえています。しかし、広範な調査に基づいて実践している健康習慣のうち、もし一つしか残せないとしたら、友人との会話や読書とともに楽しむことも多い、毎日25分間のサウナだといいます。バーンズ=レンツ氏と夫はサウナの習慣に強い思い入れがあり、最終的には、彼女が使用しているサウナを製造する会社を買収しました。
「運動、栄養、ストレス軽減、人とのつながり、睡眠、生活環境の最適化といった基本を身につけたうえで考えると、サウナは、長寿のために私たちが利用できる方法の中で、最も科学的根拠が豊富なものです」と、バーンズ=レンツ氏は大紀元英語版に語りました。
「よくある誤解は、サウナは単なるリラクゼーションやぜいたくだというものです」と、フィンランドの心臓専門医で研究者のヤリ・ラウッカネン医師は、エポックタイムズにメールで述べました。
しかし、身体が温まる間、じっと座っているだけでよいこのフィンランドの伝統は、心血管系、神経系、免疫系、精神機能、代謝系を活性化させ、その働きを高めます。また、病気や加齢に関して、より良好な結果と関連しています。
熱は身体の回復力を高めます
適応は、熱が健康にもたらす効果について広く受け入れられている説明の一つです。
「軽度または中程度のストレス要因としてのサウナは、身体をより強く、回復力のある状態にする適応反応を引き起こす可能性があります」と、ラウッカネン医師は述べました。
熱は身体にストレスを与えます。身体はそのストレスに適応するため、負荷がかかった状況でも機能を向上させることを目的とした複数の経路を働かせます。ラウッカネン医師は、その一連の流れを次のように説明しています。体温が上昇し、心拍数が急激に上がり、血管が拡張して、身体を冷やすために皮膚の表面へ血液を送ります。汗腺が活性化して発汗し、白血球がより広範囲に循環します。さらに、抗炎症反応が連鎖的に起こり、身体を元の均衡状態に戻すための修復が始まります。
私たちが感じるのは、少量の苦痛と快感が入り混じった感覚です。これは、熱が不快に感じられるようになると、神経系が身体に信号を送り、ストレスに関係するホルモンである副腎皮質刺激ホルモン(副腎皮質を刺激し、ホルモンの分泌を促すホルモン)とベータエンドルフィンを放出させるためです。副腎皮質刺激ホルモンは、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促します。一方、ベータエンドルフィンは天然の鎮痛物質として働き、その後に高揚感が生じます。この高揚感は、多くの場合、サウナを終えるころに最も強くなり、「ランナーズハイ(長時間の運動によって生じる高揚感)」に似ています。
ストレスは多くの病気に関与しているため、熱によるストレス軽減作用だけでも、サウナの利用が数多くの健康効果と関連している理由になり得ます。しかし、それ以外にも別の仕組みがあります。
サウナの利用は長寿と関連
頻繁なサウナの利用は、あらゆる原因による死亡リスクの低下と関連しています。これは、熱への曝露が心血管系を保護するとみられることに加え、低強度から中程度の運動に似た作用をもたらすためです。
医学誌『JAMAインターナル・メディシン』に掲載された研究によると、サウナを週1回利用した男性と比較して、週2~3回利用した男性では全死因死亡リスクが23%低く、週4~7回利用した男性では37%低くなっていました。
ラウッカネン医師は、サウナを利用することや、その他の方法で身体を温めることは、公衆衛生上のリスクを軽減するうえで重要な役割を果たす可能性があると述べました。
「科学的にも非常に興味深いことです。私たちの疫学的研究結果は、より深い生物学上の疑問を提起したからです。なぜサウナ浴は、より良好な健康状態と結びついている可能性があるのでしょうか」と、同医師は述べています。
初期の研究結果の一部では、長期的なサウナの利用が血圧の低下や左心室機能の向上と関連していることが示されています。また、1回のサウナ利用でも、運動をしたときと同じように心拍数が上昇する可能性があります。
サウナ利用は脳卒中と心臓病のリスク低下に関連
伝統的なサウナで一般的な乾いた熱を使用するフィンランド式サウナは、コレステロール値、中性脂肪値、血圧、炎症、血管内皮機能(血管が血流、血液凝固、炎症を調節する働き)など、心血管疾患の危険因子を調整するとみられています。これは、医学誌『メイヨー・クリニック・プロシーディングス』に掲載された総説で報告されています。
「これらの身体システムは、互いに深く結びついています」と、ラウッカネン医師は述べました。「血管機能の改善は、心血管疾患のリスクを低下させる可能性があります。全身性炎症の低下は、心血管・代謝系、呼吸器、脳の健康に関係する可能性があります。また、自律神経系のバランスが改善すれば、身体の回復、ストレス、睡眠、心身の健康に影響を与える可能性があります」
医学誌『ニューロロジー』に掲載された、53~74歳の男女1628人を対象とする研究によると、サウナを週4~7回利用すると、脳卒中が61%減少していました。
熱ショックタンパク質は脳を保護する可能性
熱ショックタンパク質は、熱によって活性化される細胞の防御機構であり、熱が体、とりわけ脳にもたらす効果に関わっている可能性があります。このタンパク質は、細胞内で正しく折り畳まれなかったタンパク質の修復を助けます。これには、アルツハイマー病やその他の神経変性疾患の患者の脳内で見られるタンパク質も含まれます。こうしたタンパク質は互いに凝集してプラーク(異常なタンパク質などが蓄積して形成される沈着物)となり、脳細胞を破壊してしまいます。
医学誌『エイジ・アンド・エイジング』に掲載された研究では、サウナの利用が認知症とアルツハイマー病に対する予防効果を示し、利用頻度が高いほどその効果も強くなりました。週4~7回サウナを利用した場合、発症リスクは66%低下していました。
35歳のバーンズ=レンツ氏は、すでに認知症の予防を目標にしています。この分野で研究が増えていることが、毎日のサウナ利用を続ける動機になっているといいます。
「アルツハイマー病と診断される人の3分の2は女性です。そして、サウナが女性に大きく役立つ可能性があることも分かっています。ですから、それも私がこの習慣を一生続けたいと思っている大きな理由の一つです」と、バーンズ=レンツ氏は述べました。
初期段階の研究では、熱ショックタンパク質が、がんや心血管疾患に対しても保護的に働くとみられています。自己免疫疾患における熱ショックタンパク質の役割は、炎症を促進する反応と抑制する反応の両方に関係しているため、より複雑です。ただし、熱への曝露は、関節炎、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス(免疫系が自分の身体を攻撃する自己免疫疾患)、脊椎関節症(脊椎の関節炎)に有望であるとみられています。
熱への曝露はうつ症状を軽減する可能性があります
熱は、気分を高め、ストレスを軽減する作用を通じて、うつ症状の軽減と関連している可能性があります。しかし、うつ病の根底にある身体的な状態に熱が作用することも、その理由かもしれません。
医学誌『ジャーナル・オブ・アフェクティブ・ディスオーダーズ・リポーツ』に掲載されたメタ解析によると、温熱療法を受けた人では、痛みの軽減、睡眠の改善、神経系の調整、炎症の低下、温度変化への適応、ストレスに対する回復力の向上のすべてが、うつ症状の評価点の低下と統計的に有意な相関を示しました。
分析対象となった研究で使用された熱には、サウナ、温泉、温浴、全身加温装置が含まれていました。研究者らは、この結果について、熱が、薬物療法や心理療法によるうつ病治療の有効な代替手段、または補助的な手段になり得ることを示していると述べています。
温熱療法は一部の代謝指標を改善
研究者の仮説とは異なり、温熱療法によって筋肉のインスリン感受性(血糖値を下げるインスリンに身体が反応する度合い)は向上しませんでした。しかし、医学誌『アクタ・フィジオロジカ』に掲載された小規模な研究によると、毎日4~6時間、暖かい部屋で安静に過ごした参加者では、肝臓が血糖値をより適切に調節できるようになりました。
研究者らは、熱によって肝臓の脂肪が減少した可能性があると推測しています。肝臓に蓄積する脂肪は、脂肪肝や血糖調節不良の一因です。軽度ではあるものの長時間にわたる熱への曝露を10日間続けたところ、11人の参加者ではコレステロールと血液中を循環する脂肪が減少し、脂肪燃焼が増加しました。これは、肝臓が燃料として脂肪を燃焼する状態へ移行したためである可能性があります。
熱が2型糖尿病、肥満、その他の代謝上の問題を抱える患者に役立つかどうかについては、ほかの研究で結果が一致していません。しかし、糖尿病患者では、特に筋肉や脂肪組織において、熱ショックタンパク質の発現が低下していることが一般的です。熱への曝露や運動は、熱ショックタンパク質の機能を回復させるのに役立つ可能性があります。
発汗は有害物質の排出を助ける可能性
汗をかいて有害物質を排出するという考えは、健康分野で広く主張されています。しかし、適切な研究が不足しているため、その実態はやや不明確です。研究では、サウナ利用後の汗に重金属が含まれていることが確認されていますが、熱によって身体全体の有害物質の総量が意味のある程度まで減少するかどうかは明らかになっていません。
一部の研究結果では、難燃剤、農薬、ビスフェノールA、フタル酸エステルなど、特定の有害化学物質を身体から取り除くうえで、発汗は尿による排出より優れている可能性が示されています。
この点が明確でないことから、バーンズ=レンツ氏は、サウナを利用しなかった3カ月間の前後で、自身の体内にある有害物質の総負荷を検査しました。その結果に驚きはなかったといいます。体内の環境由来の有害物質の総量が増えていたのです。
バーンズ=レンツ氏は長寿という目標の一環として、食事や定期的な運動によって、化学物質および生物由来物質への曝露から身体を解毒しています。健康状態を改善するため、山火事の影響を避けて国の反対側へ引っ越すことさえしました。体内に蓄積する環境由来の有害物質は、細胞に損傷を与え、エネルギー産生や臓器機能に影響を及ぼす可能性があります。長期的に曝露すると、進行性の神経変性を引き起こす可能性もあります。
そのため、バーンズ=レンツ氏は特に、木工用接着剤やポリウレタンを使用していない会社のサウナを選びました。これらの素材は、サウナが高温になった際に、ガス状の化学物質を放出する可能性があるためです。
熱の微妙な違いと、それが重要である理由
温熱療法の効果は、適切に調整された熱への曝露によって最も得られやすい可能性があります。
「熱が少なすぎれば、意味のある刺激が生じない可能性があります。熱が多すぎる場合や、不適切な状況で熱に曝露した場合には、害を及ぼす可能性があります」と、ラウッカネン医師は述べました。「効果をもたらすとみられるのは、極端な高温ではなく、耐えられる範囲で管理された熱に繰り返し曝露することです」
現在までのところ、長期的な効果を示す最も強力な科学的根拠は、1回につき約70~100度のサウナに10~20分間入り、それを週4~7回行うフィンランド式サウナから得られています。
ラウッカネン医師によると、温度は高くても耐えられる範囲であるべきです。十分な水分を摂取し、利用後に身体を冷やし、自分の体調の変化に注意して熱による体調不良を避けることが、いずれも重要です。心臓弁膜症、高血圧、低血圧など、状態が安定していない心血管疾患がある人や、急性疾患のある人は、温熱療法について医師に相談する必要があります。
温浴、スチームルームの利用、赤外線療法や約43~57度のサウナ、さらに赤外線による加温と温かい毛布で身体を包む方法を組み合わせた日本の和温療法など、ほかの温熱療法にも関連する効果がある可能性があります。ただし、科学的根拠の蓄積度は方法によって異なります。
「生物学的な作用に重なる部分があることは十分に考えられますが、すべての温熱療法に同じ水準の科学的根拠や同じ効果があると決めつけないよう、注意しなければなりません」と、ラウッカネン医師は述べました。
サウナは、心血管系やストレス反応にもたらす効果の点で、運動と比較されることがよくあります。しかしラウッカネン医師によると、運動には筋肉の収縮、身体の動き、関節・骨・筋肉にかかる機械的な負荷が伴います。こうした効果を、熱だけから得ることはできません。同医師は患者に対し、可能であれば運動を行い、追加の効果を得るためにサウナを利用するよう伝えています。
「もう一つの誤解は、サウナがあらゆる病気を治す万能薬だというものです。決してそうではありません」と、ラウッカネン医師は述べました。「サウナは健康的な生活習慣に代わるものではありませんが、予防的な健康管理に力強い効果を加えるものになる可能性があります」
(翻訳編集 井田千景)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。