私が診療した患者さんの中でも、とりわけ印象に残っている方がいます。その方の血圧は長年にわたり180〜200mmHgという高い状態が続いていました。定期的に病院へ通い、長期間にわたって降圧薬を服用していたにもかかわらず、血圧は安定せず、そのたびに不安を抱えていました。しかし、中医学による治療を2〜3カ月続けたところ、血圧は徐々に安定し、140mmHg未満まで下がりました。
患者さんから「どうやって血圧を下げたのですか」と尋ねられたとき、私は「単に降圧薬で数値を抑えたわけではありません」とお伝えしました。私が行ったのは、血圧が高くなっている本当の原因、つまり長年にわたり蓄積した精神的ストレスを見つけ出したことです。
私はいつも皆さんにお伝えしたいと思っています。高血圧とは、血圧計に表示される数字だけではありません。それは体からの警告であり、体内や生活習慣に長く続いてきたアンバランスな状態を映し出しているのです。
高血圧の約90%は、本態性高血圧(原因が特定できない高血圧)に分類され、明確な原因を特定できません。
私は以前、陳志明医師の著書『The Hypertension Revolution(高血圧革命)』で印象的な症例を読みました。陳医師によると、父親は何年もの間、血圧の薬を服用しており、血圧の数値は安定していました。しかし、それでも60代で心筋梗塞によって亡くなったそうです。
多くの場合、薬だけでは血圧を一時的にコントロールできても、根本的な問題は解決できません。血管が長期間にわたる酸化ストレス(活性酸素による細胞へのダメージ)、炎症、あるいはコレステロールの蓄積によって硬くなると、心臓はより強く血液を送り出さなければならず、大きな負担がかかります。その結果、高血圧は改善しにくくなるだけでなく、心肥大(心臓の筋肉が厚くなる状態)や心筋梗塞につながる可能性もあります。
そのため、高血圧をコントロールするためには薬だけに頼るのではなく、血圧上昇の原因となる要因を見つけることが重要です。例えば、栄養バランスの偏った食事、運動不足、睡眠不足、慢性的なストレスや精神的負担などが挙げられます。
慢性的な不安は血圧を高いままにする
感情が血圧に大きな影響を与えていることを、多くの人はあまり意識していません。
怒りや不安、緊張、過度のストレスを感じると、交感神経が常に活発な状態になります。その結果、心拍数が増え、血管が収縮し、血圧が上昇します。この状態が長期間続くと、高血圧が慢性化しやすくなります。
中医学では、「怒りは気(生命エネルギー)を上昇させる」と考えられています。感情の激しい変動は、肝気鬱結(かんきうっけつ:肝の気の巡りが滞る状態)や肝陽上亢(かんようじょうこう:肝の陽気が過剰に高ぶる状態)を招きやすく、その結果、頭痛、不眠、動悸、高血圧などを引き起こすとされています。
先ほどご紹介した患者さんの場合、食生活が主な問題ではありませんでした。仕事や家族のことを常に心配し続ける慢性的な強い不安こそが原因だったのです。気持ちが徐々に安定し、睡眠の質が改善すると、それに伴って血圧も正常値へと近づいていきました。
もちろん、感情のコントロールは高血圧の予防や治療の一要素にすぎません。本当に血管を守るためには、食事、運動、そして生活習慣全体を見直すことも必要です。
地中海式食事法が持つ抗炎症効果
毎日何を食べるかは、想像以上に血圧へ大きな影響を与えています。
私の友人にも高血圧の人がいます。普段はきちんと薬を飲み、血圧も比較的安定していました。しかし、ある日、宴会で塩分や飽和脂肪酸を多く含む料理を大量に食べたところ、その日の夜には血圧が170mmHgまで上昇し、翌日には足のしびれやめまいまで現れました。医師からは、「このような食生活を続ければ、脳卒中になる危険があります」と警告されたそうです。
塩分や飽和脂肪酸を多く含む食品は、血管への負担を増やし、炎症反応を促進することで、血圧のコントロールを難しくします。
研究では、地中海式食事法を長期間続けている人は、高血圧になるリスクが有意に低いことが分かっています。この食事法は慢性的な炎症を抑え、血管の弾力性を維持するだけでなく、認知症や心血管疾患のリスクを低下させる可能性もあります。
地中海式食事法は難しくありません。次の3つを意識するだけです。
1. 良質な油を選ぶこと
私はオリーブオイルや台湾産ツバキ油を勧めています。どちらも一価不飽和脂肪酸を豊富に含み、血管の炎症を抑える働きがあります。一方、コーン油、ひまわり油、大豆油などオメガ6系多価不飽和脂肪酸を多く含む油は、摂り過ぎると炎症を促進する可能性があるため、過剰摂取は避けましょう。
2. 野菜を中心に食べること
毎食少なくとも2種類の野菜を取り入れましょう。サツマイモの葉、ほうれん草、きのこ類などは、カリウムや食物繊維を補給でき、体内の余分な塩分の排出を助けます。
3. 魚を増やし、赤身肉を減らすこと
週に2〜3回は魚を食べましょう。サバ、サンマなどがおすすめです。一方で、赤身肉の摂取は控えめにしましょう。
血圧を下げる可能性がある簡単な運動
食事だけでなく、運動も同じくらい重要です。
私が特におすすめしたいのは、とても簡単で効果的な握力トレーニングです。
方法はシンプルです。拳を強く握り締めた状態を2分間維持し、その後1分休みます。このサイクルを4回繰り返し、週3回行います。
この単純な握る動作を軽く考えてはいけません。高血圧患者324人を対象とした研究では、8〜10週間継続して握力トレーニングを行った結果、収縮期血圧(上の血圧)が平均8.11mmHg低下しました。この効果は降圧薬を服用した場合に匹敵するものでした。
拳を握る運動はアイソメトリック運動(筋肉の長さを変えずに力を入れ続ける運動)の一種です。一見すると体は動いていないように見えますが、筋肉は継続的に緊張しています。この持続的な筋収縮によって血液中の一酸化窒素が増加し、血管をリラックスさせて拡張しやすくすると考えられています。
また、研究では、握力が5kg低下するごとに心血管疾患による死亡リスクは17%増加し、脳卒中のリスクは9%上昇することも報告されています。これは、握力が血圧だけでなく、心臓や脳の健康状態を示す重要な指標でもあることを示唆しています。
心臓を守る朝の2つの習慣
血圧管理は数値だけではありません。1日の中でリスクが高まる時間帯にも注意が必要です。朝目覚めると、血圧や心拍数、ストレスホルモンの分泌は自然に上昇します。そのため、心筋梗塞や脳卒中などの心血管・脳血管イベントは早朝に最も起こりやすいことが知られています。研究では、午前6時から正午までの脳卒中リスクは、それ以外の18時間と比べて79%高いことが示されています。
まず、目覚めたらすぐに起き上がってはいけません。急に体を起こすと血圧が大きく変動し、起立性低血圧(立ち上がった際に血圧が急低下する状態)を起こして、めまいや転倒につながる可能性があります。私がおすすめする方法は次の通りです。目が覚めたらそのまま仰向けで30秒間、自転車をこぐように脚を動かします。その後、起き上がって30秒座り、さらに立ち上がってから30秒ほど全身を伸ばします。こうすることで、血管が徐々に変化へ適応する時間を確保できます。
次に、朝は冷たい水で顔を洗わないようにしましょう。皮膚が冷水や冷たい空気に触れると交感神経が刺激され、末梢血管が収縮して血圧が急上昇することがあります。ぬるま湯で顔を洗うことで、心臓や血管への負担を軽減できます。
血圧が急上昇したときの応急対処法
血圧が突然上昇した場合は、すぐに内関(ないかん)というツボを押してください。内関は「応急処置のツボ」とも呼ばれ、急な胸の不快感や動悸、血圧の急上昇を和らげると考えられています。
内関は手首の横じわから指3本分ほど肘側に進み、前腕の内側にある2本の太い腱の間に位置しています。この部分を30〜60秒間、しっかり押してください。症状が和らぐことがあります。
重要:激しい胸の痛み、息切れ、体の片側の脱力、ろれつが回らないなど、心筋梗塞や脳卒中を疑う症状がある場合は、直ちに救急医療を受けてください。
高血圧は単なる数字ではありません。それは心血管系に負担がかかっているサインであることが少なくありません。
多くの人にとって薬物療法は重要ですが、長期的な改善には、高血圧を引き起こしている要因そのものへ取り組むことも欠かせません。野菜や良質な脂質、魚を中心とした食生活、適度な運動、ストレス管理、そして朝の健康的な習慣は、いずれも血管の健康を支える助けとなります。
小さな習慣でも、毎日継続することで血圧を安定させ、心臓や脳を守り、将来的な重篤な合併症のリスクを減らすことにつながります。
この記事で表明された見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
(翻訳編集 井田千景)
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