立秋、天地の気の流れが変わり始めます

立秋の体をいたわる食卓養生 鶏肉、かぼちゃ、山芋で秋支度【薬膳一品】

立秋を過ぎると、天地の気の流れは静かに向きを変えます。夏の「伸びる」「外へ広がる」流れは、少しずつ「収める」「内に蓄える」方向へ移っていきます。

この時季に、体もその変化にうまく合わせることができれば、秋冬を健やかに過ごすための正気をしっかり蓄えることができます。食養生で大切なのは、肺を潤し、胃腸を整え、心を養い、腎を支えることです。

立秋といっても、まだ暑さは残っています。そのため、食事も夏と同じでよいと思う人も多いかもしれません。しかし中医学では、立秋を境に、食の方向を少しずつ切り替えることが大切だと考えます。

  1. 生ものや冷たいものを控えめにし、胃腸を温かく養い始める。
  2. 秋の乾燥に備えて、肺を潤し始める。
  3. 冬に向けて、腎を少しずつ支えていく。

今日ご紹介する二つの家庭料理は、まさに立秋の食卓にふさわしい組み合わせです。

今日の主役:鶏肉とかぼちゃの煮物 × 山芋とろろ汁

一品は、体をやさしく温め、胃腸を整える煮物。もう一品は、肺を潤し、腎を支える汁物。この二つを合わせることで、立秋に必要な食養生の流れが整います。

鶏肉とかぼちゃの煮物(ChatGPT生成)

鶏肉とかぼちゃの煮物

なぜ立秋にかぼちゃがよいのでしょうか。

かぼちゃ:性質は温で、味は甘く、脾・胃・肺に関わる食材とされます。
中を補い、気を養い、胃腸を整え、肺を潤して痰をさばく働きがあると考えられています。

立秋の頃、胃腸は夏の疲れから回復しようとしています。かぼちゃの甘みと穏やかな温かさは、この時季の胃腸に受け入れられやすく、やさしく支えてくれます。さらに、かぼちゃは肺にも関わるため、秋に向けて乾燥を防ぎ、潤いを補うという意味でも役立ちます。

鶏肉:性質は温で、味は甘く、脾・胃に関わる食材です。
中を補い、気を養い、胃腸を温め、筋骨を支える働きがあるとされます。

立秋を過ぎると、暑さは残りつつも、体は少しずつ秋冬へ向けた準備に入ります。鶏肉の穏やかな温性は、夏のあいだに消耗した体を支え、正気を補い、秋冬に向けたエネルギーの蓄えを助けてくれます。

合わせる食材として、生姜もよく合います。

生姜:性質が温で、味は辛く、肺・脾・胃に関わる食材です。冷えを散らし、胃を温め、消化を助けます。煮物に少量加えることで、肉の臭みを抑えるだけでなく、料理全体の温める力も穏やかに高まります。

醤油とみりん:和風煮物の基本の味つけです。みりんは甘みと温かみを添え、食材の甘みを引き出しながら、胃腸にやさしい味わいに整えてくれます。

調理のポイントとしては、かぼちゃを煮崩れるほど煮すぎず、少し形と食感を残すこと。鶏肉は先に醤油で軽く下味をつけると、風味が増します。弱火でゆっくり煮ることで、かぼちゃが煮汁の甘みを含み、やさしい味に仕上がります。

(ChatGPT生成)

山芋とろろ汁

山芋は、立秋にとても大切な滋養食材です。

山芋:性質は穏やかで、味は甘く、脾・肺・腎に関わる食材とされます。
胃腸を整えて気を補い、肺を潤し、咳を和らげ、腎を支えて精を固める働きがあると考えられています。

山芋は、脾・肺・腎の三つを同時に養える数少ない食材です。立秋の「肺を潤し、胃腸を整え、心を養い、腎を支える」という養生の方向に、とてもよく合います。

山芋の粘りは、ムチンなどの成分によるもので、胃の粘膜を守り、消化吸収を助ける働きが期待できます。中医学的に見ても、肺と腎を潤しながら、胃腸に負担をかけにくい食材です。

合わせるだしは、昆布やかつおを使った和風だしが合います。

昆布:性質が寒で、味は塩辛く、肝・胃・腎に関わるとされます。こわばりや滞りをやわらげ、腎を養う助けになります。山芋と合わせることで、腎を支える働きがより引き立ちます。

味つけは、少量の味噌や醤油で十分です。あくまで山芋の自然な甘みを主役にし、全体を清淡に仕上げるのがよいでしょう。

調理のポイントは、山芋をすりおろしてから熱い汁に加え、加熱しすぎないことです。とろりとした食感と栄養を生かすため、最後に加えて軽く温める程度にします。より濃厚な口当たりにしたい場合は、山芋の量を少し増やしてもよいでしょう。
 

この献立の薬膳的な組み立て

かぼちゃ:温性で甘く、脾・胃・肺に関わり、胃腸を整え、肺を潤します。
鶏肉は、温性で甘く、脾・胃に関わり、中を補い、気を養い、正気を支えます。

生姜:温性で辛く、肺・脾・胃に関わり、冷えを散らし、胃を温め、消化を助けます。

山芋:穏やかで甘く、脾・肺・腎に関わり、胃腸を整え、肺を潤し、腎を支えます。

昆布:寒性で塩辛く、肝・胃・腎に関わり、滞りをやわらげ、腎を養います。

全体としては、肺を潤し、胃腸を整え、正気を温かく補い、腎の力を養う組み合わせです。

 

立秋の食養生、3つのポイント

1.「清熱」から「温補」へ少しずつ切り替えること

立秋は、夏から秋への転換点です。食事も、夏のように熱を冷まし湿をさばく方向から、穏やかに補い、体を整える方向へ移していきます。かぼちゃ、鶏肉、山芋は、その切り替えに合う代表的な食材です。

2. 肺を潤す養生を今から始めること

秋の乾燥はまだ本格化していませんが、肺はすでに秋の気に呼応し始めています。乾燥を感じてから慌てて補うより、立秋の時点から肺を潤す食材を取り入れておくほうが、季節の変化に対応しやすくなります。

3. 冬に備えて腎を養うこと

中医学には「秋収冬蔵」という考え方があります。秋に収め、冬に蓄えるという自然の流れです。立秋から腎を支えておくことで、冬に向けたエネルギーの土台が整いやすくなります。山芋、黒ごま、くるみなどは、腎を養う食材として取り入れやすいものです。

立秋は、体が少しずつ季節の変化を受け入れ、内側に力を蓄え始める時期です。温かい煮物と、やさしい山芋のとろろ汁から始める食卓は、体に秋の訪れを知らせ、無理なく収め、正気を蓄えるための一歩になります。

情報やモノが溢れる現代において、「人生」をテーマに発信する文筆家。趣味は季節の野菜を使ったシンプルな手料理と、スマホを置いて自然に触れること。