約3万9千人が1か月間、4つのシンプルな習慣を実践しました。すべては睡眠科学の研究のためです。メラトニン入りのグミや厳格な就寝時間の設定は一切ありませんでしたが、多くの人がここ数年で最も安定した睡眠を得ることができました。
『Sleep』誌に掲載されたこの研究では、体の自然なリズムに沿ったシンプルな日常習慣が、睡眠の規則性を測定可能なレベルで改善できることが示されました。この結果は、近年蓄積されつつある関連研究の成果とも一致しています。
研究中に何が起こったのか?
31日間のチャレンジに参加した38,838人は、概日リズムの調整をサポートすることを目的とした4つの日常習慣のうち、いずれか、またはすべてを実践するよう奨励されました。
- 起床後すぐに自然光を少なくとも10分間浴びる(曇りの日は20分間)
- 1日12時間以内の時間帯で食事を済ませ、残りの時間は断食する
- 週3~5回、ゾーン2の有酸素運動を行う(最大心拍数の約60~70%まで心拍数を上げる中強度の運動)
- 毎日5分間の呼吸法を行う(例:生理的ため息――素早く2回吸い、その後ゆっくり長く吐く)
データは、WHOOP Strap(手首に装着し、睡眠や心拍数を継続的に測定するデバイス)を使用して収集されました。なお、この研究にはWHOOP社が資金提供しています。
すべての参加者が習慣を一貫して守ったわけではありませんが、多くの人がそれぞれの習慣を少なくとも半分以上の期間実践しました。
31日間の終了時には、4つの習慣を継続して実践した参加者で、睡眠の規則性に統計学的に有意な改善が見られました。また、安静時心拍数の低下と心拍変動(HRV)の向上も確認されました。HRVは、自律神経系がストレス状態と回復状態をどれだけ効率よく切り替えられるかを示す指標です。
研究には参加していない統合医療医で機能的呼吸法実践者のプリヤル・モディ博士はエポックタイムズに対し、「健康な心臓は、呼吸、運動、感情、環境からの刺激に応じて常にリズムを調整しています」と語りました。
心拍変動が高いほど、自律神経系の柔軟性が高いことを示し、体がストレス状態から回復状態へよりスムーズに移行できることを意味します。
一方、研究には参加していない睡眠・肥満医療の専門医であるムハンマド・ウサマ博士はエポックタイムズに対し、この研究はランダム化比較試験ではなく、参加者も自らWHOOPユーザーとして登録した人たちであるため、限界があると述べました。
しかし、「研究の方向性は正しい」と彼は語っています。
4つの習慣
このチャレンジの4つの習慣は、それぞれ異なる角度から体のサーカディアンリズムに働きかけます。
朝に自然光を浴びることは、サーカディアンリズムを整え、体に「今は昼間だ」という信号を送ります。
起床後1時間以内に自然光を浴びると、脳の体内時計である視交叉上核が活性化され、コルチゾールの分泌を促し、メラトニンの分泌を抑えるよう体に指示します。このホルモンの変化によって体がしっかり目覚め、夜間の安定した睡眠につながります。
ゾーン2の運動は、複数の仕組みを通じて睡眠をサポートします。身体活動によってストレスホルモンが減少し、不安が和らぐことで、眠りにつきやすくなります。
「一般的に、ストレスホルモンが低いほど睡眠は改善します。特に、寝つきが悪い人や入眠に苦労している人には効果が期待できます」と、認可心理士でペパーダイン大学客員臨床教授のジャズ・ロビンズ氏はエポックタイムズに語りました。
運動はメラトニンの分泌も促し、睡眠リズムを整え、夜間の体温低下を安定させることで睡眠の質を高めます。一般的には中強度の運動が最も効果的で、就寝直前の激しい運動は睡眠を妨げる可能性があります。
呼吸法も、自然にリラックスするための方法の一つです。自律神経系を整えることで、体を休息モードへ移行させます。
「生理的ため息――2回の素早い吸気と長い呼気――は、体がストレスを調整し、呼吸をリセットするために自然に行う呼吸パターンです」とモディ氏は言います。
この呼吸法は肺のつぶれた肺胞を開き、二酸化炭素の調整を助けるため、就寝前の急性ストレスを軽減する手軽な方法になると彼女は説明しています。
より日常的には、鼻呼吸を習慣づけることも勧められます。
「鼻から優しくゆっくり息を吸って吐くことを意識してください」と、開業医で機能的呼吸の専門家であるルイーズ・オリバー博士はエポックタイムズに語りました。「鼻呼吸は、人間の体が本来備えている自然な呼吸法です」
最後に、時間制限食は4つの習慣の中で最も穏やかな働きをします。毎日決まった時間帯だけ食事をすることで、体内時計を整える二次的なサーカディアンシグナルとして機能します。食事の間隔が長くなることで、体はエネルギー源をグルコースから蓄えられた脂肪へ切り替え、それに伴うホルモンの変化が安定した生活リズムを支える可能性があります。
登録栄養士のエイミー・ブラガニーニ氏はエポックタイムズに対し、就寝の数時間前までに夕食を終えることで胃酸逆流のリスクが減り、体が落ち着く時間を確保できるため、より快適な睡眠につながると語りました。
「睡眠中に体が食物の消化へエネルギーや資源を使わずに済めば、その分ほかの重要な働きに集中できます」と彼女は言います。「その結果、より深く、しっかり休める睡眠につながることが多いのです」
一方で、時間制限食に関する研究結果は一貫していません。一部の研究では、少なくとも8週間にわたり14時間以上の断食時間を設けることで、サーカディアンリズムの乱れがある人の睡眠改善が示唆されていますが、別の研究では睡眠効率や睡眠時間が悪化する可能性も報告されています。
「時間制限食は、すべての人に適しているわけではありません」とブラガニーニ氏は言います。
例えば、がん治療中の患者では、必要な栄養を十分に摂ること自体が難しい場合があり、食事時間を制限すると栄養不足のリスクが高まる可能性があります。
睡眠の規則性
研究参加者に見られた最も大きな改善は、睡眠の規則性でした。
睡眠の規則性――毎日ほぼ同じ時間に寝て、同じ時間に起きること――は、睡眠時間そのものよりも長期的な健康状態を予測する重要な指標とされています。
睡眠時間が不規則になると、体内時計は絶えず調整を迫られ、ホルモン分泌や代謝、心血管機能が乱れる可能性があります。
研究では、不規則な睡眠習慣は代謝異常や心血管疾患リスクの上昇と関連しており、睡眠の規則性は睡眠時間よりも全死亡リスクをより強く予測する可能性が示唆されています。
「7時間眠ることは重要です。しかし、不規則な生活の中で7時間眠るのと、毎日同じリズムで7時間眠るのとでは大きな違いがあります」とウサマ氏は言います。
安静時心拍数、呼吸数、心拍変動などの指標は、睡眠の規則性の影響を受けます。規則正しい睡眠はサーカディアンリズムを安定させ、こうした生理機能を一定のリズムで働かせることで、特に深い睡眠中の副交感神経の働きを高めます。その結果、夜間の回復が促され、長期的な健康にも良い影響をもたらします。
アメリカ睡眠医学会は、健康的な睡眠には十分な睡眠時間、良好な睡眠の質、適切な睡眠タイミング、規則性、そして睡眠障害がないことが重要だとしています。なかでも規則性は、多くの人が見落としがちな要素です。
「睡眠の規則性は、睡眠健康の中で最も見過ごされている要素です」とウサマ氏は言います。「そして、それは睡眠時間以上に、あるいは少なくとも同じくらい、長期的な健康状態を予測する可能性があります」
始めるには
4つの習慣のどれも、多くの時間や特別な道具は必要ありません。まずは、今の生活に最も取り入れやすいものから始めるのがおすすめです。
朝は外へ出て短時間散歩をし、自然光を浴びましょう。それが難しい場合は、朝食やコーヒー、お茶を屋外で楽しむだけでも効果が期待できます。
週3回、中強度の有酸素運動を取り入れましょう。速歩や軽いジョギング、無理のないサイクリングなどがおすすめです。朝に行えば、日光を浴びる効果も同時に得られます。
就寝前の1時間には、数分間だけ呼吸法や生理的ため息を実践してみましょう。神経系が一日の緊張から休息モードへ切り替わりやすくなります。モディ氏によると、日中に短時間取り入れるだけでも、蓄積したストレスを和らげ、夜の寝つきを助ける可能性があります。
最後に、時間制限食には少し計画が必要です。
「食事ができる時間が短くなるため、その限られた時間内で必要な栄養素を十分に摂れるよう、少し工夫が必要です」とブラガニーニ氏は言います。
これらの習慣が効果を発揮するのは、体が常に求めている「予測可能性」を与えているからだとウサマ氏は言います。
「この4つの習慣は、より安定した体内時計をつくるための強力なアンカーです」と彼は述べました。
安定した体内時計は、私たちの多くが意識していない、最も過小評価されている健康指標の一つかもしれません。
(翻訳編集 日比野真吾)
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