8月18日、ホワイトハウスの大統領執務室での会合後、トランプ米大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領が欧州の指導者たちと共に撮影した一枚。(WinMcNamee/Getty Images)

制裁よりも国際決済網「SWIFT」がウクライナ戦争の終局を左右する理由

先日、フランスのマクロン大統領、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長、イギリスのスターマー首相、ドイツのメルツ首相ら欧州の指導者が大統領執務室に集結した。その写真は瞬く間に広まり、トランプ大統領は「レゾリュート・デスク(歴代大統領が使用してきた象徴的な執務机)」の背後に座し、大西洋を越えて訪れた面々に囲まれていた。構図や演出、そしてその姿勢から浮かび上がるのは、見慣れた物語――ワシントンが主導し、欧州が従うという構図だった。

しかし、真の影響力の均衡は写真には映らない。それは、より静かな仕組みの中に潜み、水面下のシステムが交渉を形づくっている。その目に見えない権力構造の中核にあるのが、ベルギーに本部を置く、ほとんど知られていない(金融業界や国際経済に関わる人を除いて)機関であるSWIFT(国際銀行間通信協会)だ。

ウクライナ戦争において、SWIFTは決定的な梃子となった。かつては単なる送金メッセージの基盤と見なされていたが、いまやスクリーニング、凍結、排除を可能にする戦略的な道具へと変貌している。そしてこの戦争で、SWIFTからの排除がもたらした経済的打撃は、戦場での局地的な敗北・後退をも上回るほど深刻だった。

▶ 続きを読む
関連記事
中国の貿易黒字は過去最高を更新する見通しだ。しかし、輸出好調の陰では内需との不均衡が深まり、貿易摩擦も激化。金融支援に潜む不良債権リスクや輸出企業の採算悪化など、巨額黒字が抱える三つの代償を読み解く
AI生成があふれる時代、人間の創造性や「本物」の価値はどう変わるのか。ジェボンズのパラドックスから、AI時代の希少性と創作の未来を読み解く
気候訴訟を起こす牧場主らに対し、現代文明と農業を支える石油の恩恵を自覚すべきだと説く論考。人間を地球の害悪とみなす風潮や過度な脱炭素論に異を唱え、環境再生の主体としての農と人の役割を問い直す
「社会主義は再びアメリカを幸福にできるのか?」何億人もの死者、悲惨な生活環境、個人の自由の剝奪をもたらしてきた、最も抑圧的な統治形態が、いったい誰を「より幸福」にできると、まともな判断力を持つ人間が信じるというのだろうか。
ダーウィンの進化論がいかにして生命の神聖さを否定し、現代における人工妊娠中絶の容認や優生思想へとつながっていったのかを論考。唯物論的価値観が生命の尊厳を破壊してきた歴史的・倫理的背景に鋭く切り込む