美容とアンチエイジングの鍵 千年愛される三つの食材

若さを保ちたい、老化を遅らせたいという願いを叶えるために、高価なスキンケアや複雑な美容手術をしなければならないでしょうか?  実際日常の食事に気を掛ければ、同じ効果が期待できます。ここでは、数千年の歴史に効果が裏付けられた三つの食材―クコの実、ナツメ、高麗人参をご紹介します。肌の状態を改善するだけでなく、内側から体を整えることもできます。

昔、宮廷では、摂生(養生)や美容は貴族の生活に不可欠な部分でした。貴族は外見の美しさや服装の華やかさだけでなく、内側に秘める情緒や気血(東洋医学の基本概念で、体のエネルギーと液体のバランスによって生命の活動が成り立つとされる)の整えも欠かせずにケアし、若々しい状態と健康を保てるように心掛けました。クコの実、ナツメ、高麗人参は体調を整え、視力を改善、免疫力を高める効果があるために広く用いられ、特に高麗人参は延命や長寿の貴重な薬材として王室に愛用されました。

クコの実

栄養豊富なクコの実は、抗酸化作用や肌の弾力向上に優れ、アンチエイジングに最適である(Shutterstock)

クコの実は漢方医学では栄養補給の薬材として重宝され、「長寿の実」とも言われていました。古くから長寿延命、滋養強壮、視力改善の目的で使用され、アンチエイジングや若さを保ちたい人に特にお勧めです。

クコの実にはカロテノイド、フラボノイド、多糖類などの豊富な生化学成分が含んでいます。総合研究によると、クコの実に含まれている多糖類には抗腫瘍効果、神経保護効果、抗酸化作用、免疫調整機能があります。

また、マウスを用いた研究では、クコの実、イチジク、韓国ミントのエキスを抽出し混合したものは、抗酸化酵素の活性を高め、炎症になる病原菌を抑え、コラーゲンとヒアルロン酸を増やす効果や、肌のしわを抑え、弾力や潤いを向上させる効果も確認されました。

杞菊地黃丸(こぎくじおうがん)

よく知られる「六味地黄丸」に、クコの実と菊花を加えたものです。
「杞菊地黄丸」は、腎虚(漢方医学で言う内分泌系や免疫機能など全般の機能低下によりおこる症状を言う)による肌のくすみやシミ、目を酷使したためできた黒クマに特に効果的です。現代人はパソコンやスマホを長時間に見続けることが多いので、目の健康を守るにはクコの実が不可欠です。

クコの実のお茶

クコの実10グラムに500ミリリットルの熱湯を注ぎ、10分間置きます。少し冷めてから飲むといいです。徹夜を続けた女性の患者さんは、目の乾燥や肌のくすみで悩んでいました。私は毎朝クコの実のお茶を一杯のむよう勧め、その上、「杞菊地黄丸」も服用してもらいました。2か月後、目の乾燥が改善され、肌にも艶が出たと連絡がきました。
 

ナツメ

ビタミンCやポリフェノールが豊富なナツメは、肌を守り、アンチエイジングをサポート。気と血を養い、体を内側から整える(Shutterstock)

ナツメは甘くて香りも豊かな食材で、美容やアンチエイジングに欠かせません。ビタミンCやビタミンBが豊富に含んでいるため、漢方医学では、「天然のビタミン剤」と呼ばれています。また、ナツメには「気(エネルギー)」と「血(血液)」を養い、「脾(栄養吸収)」と「胃(消化系統)」を補う効果もあるため、体力が弱い方や顔色が悪い方はナツメを摂取することで、肌の健康を取りもどすのに役立ちます。

研究によると、ナツメには多糖類やフェノール類などの多様な活性成分が含まれており、神経保護、心血管疾患の予防や治療する機能が備えています。特に豊富に含まれるポリフェノールは強力な抗酸化作用があり、肌を守る効果があります。

今年9月、学術誌『Nutrients』が発表した研究では、食事から摂取できるポリフェノールは安全かつ効果的であり、老化を遅らせ、加齢に伴う病気を予防する効能が示されました。

甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)

「甘麦大棗湯」はとても評判のいい漢方処方です。飲み物の代わりにお勧めです。心を落ち着かせ、不安をやわらげ、情緒を安定させる効果があります。不安や不眠、ストレスによって顔色や肌が悪い人に特に役に立ちます。

動物実験では、「甘麦大棗湯」に抗うつ作用があると確認されました。うつ病の治療に力を発揮するのを期待できそうです。

長期間の不眠や不安に悩まされている女性の友人がいました。顔色が青白く、肌も乾燥していました。彼女に「甘麦大棗湯」を一日一杯のむよう勧め、さらにナツメを日常の食事に取り入れるようアドバイスしました。2か月後、彼女の肌は艶を取り戻し、情緒も安定するようになりました。

甘麦大棗湯の作り方

材料
甘草 3グラム
小麦 15グラム
ナツメ 10個

作り方 鍋に材料と600ミリリットルの水を入れ、沸騰したら弱火にして10分煮込みます。これを一日1杯飲むといいです。

 

高麗人参

抗酸化や抗炎症作用を持つジンセノサイドが、肌の弾力を改善し、免疫力を強化。老化を防ぎ、疲労回復をサポートする(Shutterstock)

古くから、高麗人参は「気」を補う最高の薬材として認識され、体力や免疫力を高め、老化を防ぎ、肌の弾力を改善する効果があります。

現代科学研究によると、高齢人参に含まれる各種のジンセノサイドが強力な抗酸化、抗炎症作用を持ち、細胞の酸化ストレスを軽減し、神経や心血管を守るほか、抗がんや疲労回復にも効果があります。

臨床試験では、酵素処理された紅参エキスを使えば、目元のしわや肌の弾力及び水分量が大幅に改善したことを確認しました。

參苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)

「参苓白朮散」とは古くから伝えられた漢方処方です。「補気(ほき)(気のエネルギーを補う)」「健脾(けんぴ)(脾を健やかにする)」、湿気を取り除き、美容効果は折り紙付きです。気虚(気が不足)による肌のたるみ、顔色のくすみ、消化不良など症状の改善には特に効果的です。

古代宮廷の食事にも「参苓白朮散」を多く取り入れていました。「脾(栄養吸収)」と「胃(消化系統)」に弱い人や「気(エネルギー)」と「血(血液)」が不足している人の体調を整え、健康と若さを保つために用いました。

参苓白朮散は、高麗人参、茯苓、白朮、ハトムギ、山薬(淮山)などで構成されています。白朮は美容に効果があり、ハトムギは湿気を除きむくみを改善し、山薬は脾胃を補い消化を改善します。このような改善は、美容とアンチエイジングの基盤として非常に大事です。また、研究によると、参苓白朮散に含まれる多糖類は腸内細菌を整え、トリプトファン代謝を促進して大腸炎を改善する効果もあります。

過労により肌がたるみ、消化不良に悩んでいた患者がいました。彼に参苓白朮散を勧め、さらに週1回高麗人参の鶏スープを飲むよう提案しました。3か月後、彼の精神状態と肌の調子は大きく改善しました。

高麗人参と鶏のスープ

高麗人参は単独で煮込めば、「高齢人参スープ」ができます、他の食材と一緒に煮込むこともできます。高麗人参にはさまざまな品種があり、その中、西洋人参は比較的穏やかな性質を持っています。

高麗人参鶏スープの作り方は、若鶏1羽、高麗人参約5グラム(スライス)を用意し、鍋に入れて1リットルの水を注ぎ、沸騰させます。鶏肉が柔らかくなるまで約1時間煮込めば完成です。鶏肉はスープと一緒食べます。

私たちの臨床実践では、多くの患者がこのような食事療法と簡単な漢方の調整を通じて、美容とアンチエイジングの効果を得ています。今回の情報が皆さまの日常生活の中で美しさと健康を保つのに役立てれば幸いです。

なお、ここで紹介した漢方薬は馴染みがないかもしれませんが、アジア系の食材店で購入できるものが多いです。ただし、体質には個人差があるため、具体的な治療プランについては専門の医師にご相談ください。
                            
(翻訳編集 正道 勇) 

慢性的な精神、行動、身体の病気を対象とした統合医療医。中国医学の医師。精神科認定医。統合医療の楊研究所とアメリカ臨床鍼灸研究所の創設者兼ニューヨーク北部医療センターのCEO。『Integrative Psychiatry(統合精神医学)』、『Medicine Matters(医学の重要性)』、『Integrative Therapies for Cancer(癌の統合療法)』に貢献。また、ハーパーコリンズの『Facing East: Ancient Secrets for Beauty+Health for Modern Age(現代の美と健康のための古代養生法)』とオックスフォード大学出版局の『Clinical Acupuncture and Ancient Chinese Medicine(臨床鍼灸と古代中国医学)』の共著者。