座りすぎると余命が縮む?身体を回復させる6つの動作
長時間座っていると寿命が縮むかも!? 座っていると致命的な病気の発生率が高まることは、数多くの研究で証明されています。これから座る時間を減らすだけでなく、凝り固まった体を伸ばし、筋肉を鍛え、座りっぱなしで起こるダメージを軽減する6つの動作をご紹介します。
長時間座りっぱなしの生活は死亡リスクを高める
仕事でも、ゲームでも、ドラマ視聴でも、椅子に座る時間が長ければ長いほど、健康被害が増えるのです。
米国の「JNCI(Journal of National Cancer Institute)」に掲載された研究によると、長く座ったままの状態と、癌や糖尿病、心血管疾患とは関連性があることが確認されました。
座りっぱなしは血行を悪くし、血液をドロドロにするため、長期的には血圧の上昇や動脈硬化の原因となります。座りっぱなしの状態が続くと、下肢の血の滞りが血栓の発生を招いたり、体内の細胞のインスリン抵抗性が高まり、糖尿病を引き起こします。
多くの研究は、座りっぱなしが「慢性的な自殺」であるという事実を浮き彫りにしています。NTU病院リハビリテーション科の主治医である陳冠誠博士は、座りっぱなしの状態は体内の臓器や各器官系に影響を及ぼし、そのメカニズムは非常に複雑であると述べています。
座っているとカロリー消費量や代謝が低下し、肥満やメタボリックシンドロームの原因にもなります。また座った姿勢が長時間になると、骨量の減少や筋力の低下も招き、重症の場合はサルコペニア(筋肉量が減少したり筋力が低下したりする)になります。
さらに悪いことに、週に一度の定期的な運動でさえ、座りっぱなしの生活習慣の悪影響を完全に相殺することはできないということです。
カナダのトロント大学の研究によると、座りっぱなしの人は、あまり座っていない人に比べて、糖尿病になる可能性が90%高く、心臓病やがんで死亡する可能性が18%高く、何らかの原因で死亡する可能性が24%高いという結果が出ているそうです。またこの数値は、定期的に運動している人とそうでない人の平均値だそうです。
この数値について、トロント大学の循環器専門医であるデビッド・オルター博士は、座りっぱなしでいることが代謝に与える悪影響が、運動効果による好影響を上回るからだと考えています。たとえ1日に30分や1時間、定期的に運動をしていても、それ以外の時間帯の行動が健康に大きな影響を与える可能性があります。
オルター博士も「TIME」誌に、体を動かすことで座りっぱなしの状態の悪影響をある程度(約15%)相殺することができますが、完全ではないと語っています。
筋力を向上させ、痛みを和らげる6つの簡単なエクササイズ
運動は、座りっぱなしの生活の影響を相殺することはできませんが、それに伴う代謝の低下を改善することは可能です。そのためには、できるだけ座りっぱなしは避け、定期的に運動するのが一番だと、陳博士は言います。
座りっぱなしを減らすためにできることは?立ったり座ったりを交互に繰り返し、適切なタイミングで立ち上がって仕事をすることなどです。同僚と仕事の話をするときは、コミュニケーションツールを使わず、相手の席まで歩きます。仕事中、トイレに行ったり、水を飲んだり、簡単なストレッチをしたりと、ちょっとした空き時間を利用してみましょう。
陳博士は少なくとも1時間に1回、できれば30分に1回は立ち上がって体を動かすといいと語っています。デスクでできる簡単なエクササイズが6つあります。
1.アキレス腱伸ばし(ストレッチ)
手順:まっすぐ立ち、片足を前に出し、前の足は膝を曲げ、後ろの足はまっすぐにし、アキレス腱を伸ばします。10~30秒キープしたら、足を入れ替えて交互に伸ばします。
このストレッチは、足の血行を良くします。また、後ろの足をまっすぐにすることで、足首や足の裏の筋膜が伸ばされているのを感じることができます。
2.太ももの筋肉を伸ばす(ストレッチ)
手順:かかとをできるだけお尻に密着させるよう、手で足の甲をゆっくり引っ張ります。この動作を10~30秒続け、足を入れ替え、交互に4~8回行います。
大腿部の筋肉を牽引することで、下肢の筋肉をほぐすことができます。
3.肩・首のストレッチ(ストレッチング)
手順:頭を傾け、手を頭に添え、ゆっくりと頭が肩に対して45度の角度になるまで首を伸ばします。再び10~30秒キープしてから左右を入れ替えます。
椅子に座ったままできる小さな動作で、首から肩にかけての筋肉をゆっくりと伸ばします。この運動を数回繰り返すことで、肩や首のコリや痛みを和らげることができます。
4.水筒の上げ下げ(筋肉運動)
手順:水を入れた水筒を持ち、片手を前に出して水平に持ったり、肘を曲げたりして、上半身の筋力をつける。8~12回上げ下げします。
上肢の筋力を鍛えることで、座りっぱなしによる筋力の低下を防ぐことができます。
5.足上げ(筋肉運動)
手順:椅子に座り、片足をまっすぐ前に出して足を上げ、ゆっくり上下させる。 両足を交互に10~30秒ずつ、8~12回ほど上げ下げします。
この片足上げ運動は、太ももの大腿四頭筋を鍛え、筋肉を強化し、代謝を向上させることができます。
6.階段の上り下り(筋肉運動)
手順:まず補助として段差や高さの安定した箱やスツール(椅子)を見つけ、上り下りの動作を行います。踏み台に足全体が入っていること、転ばないようにまっすぐ立つことが大切です。全体の運動時間は10~20分程度で、少し息切れがするけれど話せる、という程度までやります。
このステップ運動は、下半身の筋肉を鍛え、筋持久力を鍛えるとともに、基礎代謝量を増加させる有酸素運動です。
通常、中程度の強度の運動を行い、週に150分以上運動することが必要です。中程度の運動とは、少し息が切れますが、まだ話すことができるという状態を指します。例えば、早歩き、ジョギング、エアロビックダンス、水泳、サイクリングなどです。
家事や仕事をすることで、運動をしたことになると思っている人もいるのではないでしょうか。しかし陳冠誠博士によると、昨年コペンハーゲンで行われた研究で、労働は運動に取って代わることはできないことがわかったそうです。運動にはそれぞれのやり方があります。例えば、力仕事が多い人は、心肺機能を強化するために有酸素運動を選択するとよいでしょう。
(翻訳・香原咲)