これは、北欧の神と女神のイラストです。(Shutterstock)

愛と美の女神・フレイヤの物語(下)

ヘイムダルが首飾りを取り戻す

目が覚めたフレイヤは首飾りがなくなっていること、そして、部屋のドアが開けっぱなしになっていることに気づき、すぐに何が起きたのかを悟りました。彼女は警備のヘイムダル(Heimdall)のところに向かい、首飾りを取り戻すよう頼みました。

ヘイムダルはアースガルズの守護者であり、体力、スピード、敏捷性、スタミナなど超常的な戦闘能力を備え、木の中の樹液の流れの音さえ聞こえるといわれています。また、アースガルズと地球で起きたすべてのことを聞き、見ることができます。

美しいフレイヤが悲しむ姿を見て不憫に思ったヘイムダルは、フレイヤを慰め、必ず取り戻すと約束しました。

フレイヤの部屋に入ったヘイムダルはロキの気配を感じ、超能力を使って偵察しました。すると、首飾りを持ったロキがフーラのところへ向かっているのが見えたので、直ちに持っていた角笛のギャラルホルンを鳴らしたのです。角笛の音に驚いたロキは、フーラのところに行く時間がないことに気づき、すぐに大鳥に変身してアースガルズを離れようとしました。

ヘイムダルも直ちに翼を広げ、後を追いかけたのです。こうして、2人は三日三晩追いかけっこをしました。この時、2人はすでにアースガルズから遠く離れ、世界の果てまで飛んで行っていました。

このままでは疲れ果ててしまうと思ったロキは、近くの崖に着地し、2人は様々な姿に変身しながら猛烈な戦いを繰り広げました。結局ロキは負けてしまい、血だらけになり、「一体どういうつもりだ?」と聞くと、ヘイムダルは「フレイヤの首飾りを返せ、そうしたら命だけは助けてやる。もし、アースガルズに戻っても手出しはしない」と答えました。

しかし、不服に思ったロキは、後を顧みずに再びヘイムダルと戦い、結局、疲れ果てて地面に倒れ込み、首飾りもヘイムダルに取り返されてしまいました。

アースガルズに戻ったヘイムダルは約束通りフレイヤに首飾りを返しました。大事にしていた首飾りを取り戻すことができたフレイヤは再び素敵な笑顔を浮かべたのです。

しかし、このことをきっかけに、ロキとヘイムダルの関係が一気に悪化し、宿敵となりました。

(翻訳編集・天野秀)

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