卵(鶏卵)は1日に何個まで食べられるでしょうか?
「卵を多く食べるとコレステロール値が上がり、心臓血管系のリスクが高まる」と心配する人も少なくありませんが、問題は食べる卵の数ではなく、その食べ方にあります。
卵の料理は「シンプルが一番」
卵は、栄養豊富な食物です。
卵白は主に水分とタンパク質を含み、卵黄はレシチン、ゼアキサンチン、ルテイン、セレン、亜鉛、鉄、葉酸、およびビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンDなどの各種の栄養素を含みます。
これらは、どれも不可欠の栄養素ですが、卵を食べ過ぎると、コレステロール値が高くなるのではないかと心配する人もいます。
2019年、米イリノイ州にあるノースウェスタン大学は、鶏卵摂取量とコレステロール値、心血管疾患、および死亡率との関連性を分析しました。
研究の結果、「1日に卵を半個以上食べると、心血管疾患が6%増加し、死亡率が8%上昇する」というのです。いずれも高くはない数値ですが、なんとも気になる上昇ではあります。
しかし、多くの専門家はこの研究結果に疑問を呈しています。台北市にある松徳クリニックの医師・張適恒氏も、「私の考えでは、この研究は厳密ではありません」と指摘します。
張適恒氏によると、同研究は被験者が記入したアンケートをもとに「卵を何個食べたか」を単純に集計したもので、卵の調理方法まで厳密には把握していないと言います。
よく知られている卵の調理法には、ゆで玉子、煮玉子、茶玉子(茶葉を使った煮玉子)、目玉焼き、ポーチドエッグ、スクランブルエッグ、オムレツなどがあります。
なかには、卵の食べ方としてあまり健康的でない調理法もあります。例えば、ふわふわした食感のオムレツやスクランブルエッグは、かなりの量の生クリームやバター、食塩などが入っています。
目玉焼きには、加工肉であるソーセージやベーコンが添えられます。食パンを、生クリームと砂糖を加えた卵水に浸してフライパンで焼くフレンチトーストなどもあります。
そうした一般的な料理は、鶏卵だけを食べるのとは全く異なる栄養摂取になるのです。
健康に問題のない人なら、「1日に5~7個の卵を食べても大丈夫」と張適恒氏は言います。
食物中のコレステロールは人体への影響が少ないので、高脂血症の人でも1日1~2個の卵を食べても大丈夫です。ただし、コレステロール値が非常に高い人、タンパク質を制限しなければならない腎臓病患者は、必ず医師や栄養士の指示に従ってください。
いずれにしても、ゆで卵やポーチドエッグなど、できるだけシンプルで、ヘルシーな食べ方を選びましょう。
スクランブルエッグがお好きなら、バターやマーガリンではなく良質の植物油を少量使い、食塩、生クリーム、醤油など調味料の量をできるだけ減らすようにします。加工肉のベーコンやソーセージ、ジャムつきトーストなども合わせないようにしましょう。
高齢者もタンパク質は必須です
高齢者の筋肉量が急激に落ちて、体力が低下する現象をサルコペニアと呼んでいます。
このサルコペニアの進行を防ぐ、あるいは遅らせるために、高齢者もタンパク質を十分に摂取する必要があります。
張適恒氏は、歯が抜けたり顎が弱った高齢者は、噛む必要がある肉類はあまり食べられないため、「卵からのタンパク質摂取に偏る傾向がある」と指摘します。
高齢者にとって、鶏卵は良質のタンパク源です。ただ、卵だけではどうしても不足するので、白い肉(鶏肉)や魚、少量の赤い肉(牛肉・豚肉)も適宜メニューに取り入れてください。
歯が弱ったお年寄りには、細かく刻むか、すり身にするなど調理方法で食べやすくしてあげましょう。
「鶏卵の生食」はお薦めできません
現在、日本の食料品店で売られている鶏卵は、厳格な基準にもとづく消毒がおこなわれています。
もう昔のことですが、未消毒の鶏卵が流通していた時代は、日本でもサルモネラ菌などの雑菌による食中毒がしばしば起きていました。
それらは、卵の外殻に付着した鶏糞の汚染が原因と考えられていましたので、産卵後の卵を消毒(次亜塩素酸溶液で洗浄)することで、ひとまず回避できるとされています。
しかし今日では、外殻だけでなく、鶏卵の内部にまでサルモネラ菌が及ぶことが分かっています。そこから得られる結論として、「加熱調理していない鶏卵の生食は推奨できない」ということです。同じ理由で、半熟卵もお薦めできません。
日本の皆様が「卵かけご飯」を大変好まれることは、よく存じています。こちら台湾でも、生魚である寿司や刺身と同様に、卵の生食を容認する人が比較的多いと思われます。
しかし、あなたの健康を心より願う意味で、「鶏卵の生食」はぜひ避けていただきたいのです。
半熟卵であれば良いという意見もありますが、高齢者や幼児、あるいは病気療養中の人は、必ず加熱調理した全熟卵を食べるようにしてください。
(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)
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