腸を整えてアンチエイジングを「お薦めは日本の味噌や納豆」

「腸胃好、人不老(胃腸が良ければ、人は老けない)」と言われます。
適切な食生活によって腸内細菌叢を良好な状態に保つことは、アンチエイジング(老化防止)にも役立ちます。

腸内環境の悪化は「一種の老化」

腸内の菌種が少なくなり、相対的に悪玉菌が多くなるのは「一種の老化」を意味します。

プロバイオティクスという言葉は、アンチバイオティクス(抗生物質)に対して提案された用語であり、通常は「腸内フローラ(腸内細菌)のバランスを改善することによって増える、健康に有益な微生物」と定義されています。
よく知られているプロバイオティクスとしては、乳酸菌やビフィズス菌があります。

台湾の国立陽明大学の教授でプロバイオティクスの専門家である蔡英傑氏は、「人がどれほど老化しているかは、実際の年齢ではなく、腸内細菌叢をふくむ全身の生理状況によって判断されます」と言います。

蔡氏によると、腸内細菌叢に「善玉菌が減り、悪玉菌が多くなる」および「腸内菌の多様性がなくなる」という2つの変化が現れたら、それは老化の徴候であり、特に「腸内のビフィズス菌減少が顕著になってくる」と指摘します。

こうした腸内細菌叢の変化を視野に入れ、加齢に応じて不足する善玉菌を補う食物を意識してとる必要があります。
 

日本食の味噌納豆は優れた発酵食品で、有益なプロバイオティクスを含んでいます。(Shutterstock)

「腸を老化させない食事」を目指しましょう

では、実際にどのような食事をとることが、腸内環境を整え、老化防止につながるのでしょうか。そのポイントを以下に3点、挙げます。

1、異なる発酵食品をとり、多様な菌種を摂取する
腸内環境を整える発酵食品として第一にお薦めできるものに、日本食の味噌や納豆があります。

また、キムチチーズ、乳酸菌飲料、ヨーグルト、魚醤(ぎょしょう)、醤油、臭豆腐(しゅうどうふ)、腐乳(ふにゅう)、酢、酒醸(チューニャン)、プーアル茶なども、腸に良い発酵食品です。

食品から多くの善玉菌を得るために、比較的確実なのは発酵乳です。

実際、発酵乳(ヨーグルト、飲むヨーグルトなど)に使用される菌種、例えばビフィズス菌は、それを摂取することで確実に補充することができ、かつ比較的多く飲用することができるからです。

ただし、発酵乳の欠点は菌種が単一で、いくつかの一般的な菌しかないことです。

そこで蔡氏は、発酵乳以外にも、多種類の発酵食品をとることを提言しています。
ただ、一部の発酵食品は食べる量が限られているのが難点です。塩分過多などの心配もあるので、キムチや味噌だけを食べ過ぎてはいけません。
毎日の食事のなかで多様な菌を補充するように、バランスの良い食事を心がけましょう。

2、水溶性食物繊維を十分にとる
食物繊維は、非水溶性と水溶性に分けられます。

非水溶性繊維は排便を促進しますので、腸内細菌にとっては間接的に有益です。これらは野菜や果物、全粒穀物に多く含まれますが、繊維感が強いため、よく噛む必要があります。

一方、水溶性繊維の多くは、滑らかでネバネバした食感を有します。
これらは、それ自体が腸内細菌の「食べ物」となり、プロバイオティクスの成長を促進するとともに、悪玉菌の増加を抑制するのです。

そのため、水溶性繊維は腸内細菌に対して直接のメリットがあります。これらの繊維は満腹感を高め、血糖の急激な上昇を防止するとともに、血中コレステロールを低下させるはたらきもあります。

水溶性繊維が豊富な食物としては、エンバク、豆類、サツマイモ、ジャガイモ、カボチャ、オクラ、キノコ類、海藻類、カリフラワー、ニンジン、リンゴ、ナシ、バナナ、キウイ、柑橘類、瓜類、こんにゃく、寒天などがあります。
 

キノコ類には豊富な水溶性繊維が含まれており、プロバイオティクスの「食べ物」になります。(Shutterstock)

3、良い生活習慣を維持し、悪玉菌の増加を抑制する
善玉とも悪玉とも言えない、腸内の中性菌は60%~70%を占めます。

これらは普段良くも悪くもないのですが、時に「風になびく草」のような性質を持っているため、腸内に善玉菌が増えると中性菌もそれに同調します。逆に悪玉菌が多くなると、中性菌は悪玉菌になってしまいます。

そのことも含めて、「悪い腸内菌を増やす生活習慣」は、ぜひ改めていただきたいのです。

例えば、暴飲暴食や揚げものをよく食べるなど不健康な食事、ストレスの蓄積、夜更かし、運動不足などがそれに当たります。

なお、運動不足を解消するため体を動かすことは良いのですが、激しい運動をする必要はありません。
蔡英傑氏は、「規則的で適度な運動をすればよいのです。一時的な激しい運動は、むしろ培養された腸内細菌叢に不利となります」と注意しています。

(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)