中国語の「薄荷」を、日本語で音読みするとハッカになります。
ハッカと言えば、懐かしい思い出があります。子供のころの駄菓子屋で(1個5円?)売っていた、白い三角形の板状になっているお菓子(ハッカ菓子)です。売れ残り近くになると、紙箱のなかでひどく割れており、ひし形だったり、六角形だったりしていました。
とくに味が良いわけでもありませんが、口にひとかけら入れたときの、鼻孔へ抜けるような清涼感がおもしろくて、つい買っていたように記憶します。
ハッカの用途は多種多様
あのハッカと同類のものを「ミント」と呼ぶことは、はるか後年になって知ります。
厳密に言うと、ミントという名称のほうが概念はひろく、ミントのなかの一種にニホンハッカがあるそうです。このミントの香り成分を、メントールあるいはメンソールと言ったりしますが、そんな商品名をどこかで見たか、聞いたような気がします。
ミントの清涼感やその味は広く人々に親しまれ、飲料や食品、あるいは用品(駄菓子屋で売っていた子供向けのハッカパイプも含めて)などにも使われています。
このハッカは、漢方薬の一つとしてもよく使われます。ハッカの有効成分は葉や茎に含まれているのですが、日本でも「ハッカの葉を目に当てると目の疲れがとれる」「虫刺されの個所に葉をもんで汁を塗る」などの用法が知られています。
漢方医学におけるハッカの効能には、解熱、腫れを退かせる、殺菌、消炎などがあり、いずれにしてもハッカの特性を十分に生かした用法であると言えます。
また、とくに中国の南方に伝わる民間療法ですが、夏採りの新鮮なハッカを入れたお茶(ミントティー)を飲んで体の熱を冷まし、暑気を払っています。
ハッカは体内に「清涼な風を吹きこみます」
その他、健康に有用なハッカの用法を、いくつかご紹介しましょう。
ハッカの葉を少量内服すると、その清涼感によって内臓の神経が鎮静化し、胃腸の張りが改善されて、消化機能を助けます。
またミント成分は吸収されて血液中に入り、皮膚の毛細血管を拡張します。汗腺の分泌を促し、発汗、解熱作用を発揮するとともに、鬱気を解消することで、肝気(肝臓の気)の鬱滞(うったい)による胸痛、脇痛などが改善されます。
さらにハッカ葉の特効として、ガンの患部の血管の成長を抑制するはたらきがあります。そのため、ガン部位に血液が供給されなくなり最終的にガンを「飢餓状態」にして死亡させる、つまり抗ガン効果があると言われています。
ハッカ汁を皮膚の局部に塗布すると、殺菌や末梢神経を麻痺させる効果があるため、痛みをやわらげ痒みを止めることができます。一枚のハッカ葉を口に含んで噛めば、口内の細菌を殺し、炎症を抑えることができます。
ハッカの精油(エッセンス・オイル)も一種の漢方薬で、適量を内服すると中枢神経系を興奮させ、汗腺の分泌を促進し、発汗と解熱の作用を発揮します。かぜや感冒初期の発熱、頭痛、鼻詰まり、めまいなどの症状の改善に用いられます。
「試してみませんか?」ハッカの民間療法3種
中国あるいは台湾の民間に伝わる3つの療法を、ご紹介します。いずれも簡単な方法ですが、体の調子を整えて、健康を回復させてくれます。
1、ハッカ豆腐茶
「茶」といっても、茶葉の代わりにハッカの葉をつかった「茶外茶」です。発汗を促す温かい飲み物とお考えください。
風邪の初期の治療に効果があります。まだ発熱するほどではない段階で、鼻水、鼻づまり、咳、くしゃみが頻発するようなときに、このハッカ豆腐茶をつくって飲んでみてください。
風邪の熱を取り除くことができて、ごく軽症で快方に向かわせてしまいます。子供やお年寄りにも、お薦めできます。
材料は、ハッカの葉50g、豆腐1丁、ねぎ1本。
まず、フライパンで豆腐を香ばしく炒りつけます。そこへ刻んだねぎとハッカの葉を加え、水を2カップ入れます。そのまま火にかけて、水量がはじめの半分になるまで煮込みます。
碗によそって、くずれた豆腐などの具材と一緒に服用します。
秋冬の季節ならば、これに生姜を加えると、より高い発汗作用が得られます。
2、ハッカはちみつドリンク
暑さや熱中症予防に効くドリンクです。
新鮮なハッカ100gをジューサーまたは手搾りで搾ります。
200ccのお湯を鍋に入れ、はちみつ200ccと適量の砂糖を加えて火にかけます。
とろ火で20分ほど煮込み、ハッカ汁を混ぜ合わせて、さらに2~3分煮れば完成。常温に冷ましてから、1日2回、50ccずつ飲んでください。
3、ハッカの粟粥
ハッカと粟(アワ)で炊いたお粥は、消化を助けてくれます。
粟50gをきれいに洗い、適量の水を加えて、とろ火でとろみが出るまで炊きます。ハッカの葉10gを加え、かき混ぜて完成。1日2~3回服用します。
ハッカの苗は、日本の園芸店でも購入できます。ガーデニングの片隅に、実用にも役立つハッカを植えてみてはいかがでしょうか。
(文・呉国斌/翻訳編集・鳥飼聡)
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