夏野篠虫 / PIXTA

ご注意ください! 秋の蚊は「小さな吸血鬼」です

8月も過ぎて、もう暦は9月。早いものですね。年初から、コロナに揺さぶられながら過ごしてきた今年も、残り4カ月です。

季節は「残暑」と言うにはもう過ぎてしまった感がありますが、そこそこ暑い日々は、あとしばらく続きそうです。

「秋の」にご注意ください

「秋の蚊」「秋蚊」「残り蚊」などという俳句の季語があります。

季語には、日本人の生活のなかで一定の存在感や共有感のある名詞が多いわけですが、この「秋の蚊」という季語は、なんとも嫌な印象として、日本人の感情に刻まれていることの証左なのでしょう。

7年前の2014年8月27日、厚生労働省は69年ぶりに「デング熱」の国内感染者を確認しました。デング熱と聞いて、日本人が遠い記憶をよみがえらせたのは、戦時中に南方の島へ出征した兵隊さんが、このデング熱に苦しめられたという恐ろしい体験です。

「東京の代々木公園で、蚊に刺された人が感染」という、なんとも大雑把な仮定のもとに、都内の大きな公園を封鎖して、やたら殺虫剤を散布しまくる異様な光景が、この年の9月に見られました。

蚊というのは、秋に近くなったこの時期が、最も活発に繁殖するのだそうです。盛夏の頃は、水溜りの水温が高すぎて蚊の幼虫(ぼうふら)が死んでしまうこともあります。

それに対して「秋の蚊」は、気温が蚊に適当である上、越冬前の産卵をひかえたメス蚊が襲いかかってきて、盛んに人の血を吸うのです。そのさまは、まるで「小さな吸血鬼」のようです。いずれにしても、夏にも増して「秋の蚊には要注意」です。

さて、不快な羽音をたてて寄ってくる蚊を駆除するには、殺虫剤のスプレーや殺虫成分をふくむ蚊とり線香などが、多く使われます。

ただし、これらは殺虫目的の化学薬品ですので、人体に害がないとは言えません。小さなお子さんがいるご家庭などは、余計に心配されることでしょう。たとえ実害が少ないとしても、殺虫剤の臭いや煙が、壁やカーテンに残ることは嫌なものです。

虫よけ」に有効な5種の天然材料

そこで、殺虫ばかりではなく、蚊を寄せ付けない「虫よけ」という方法を、今一度考えてみませんか。

まずは、家の周囲を見て、ぼうふらの湧きそうな「たまり水」がないか、点検します。水の動いていない側溝や雨水ます、放置したままの古タイヤ、水を入れ替えていない防火用水などは「蚊の生産工場」です。まずはその「工場」から、なくすようにしましょう。

さて、次に考えたいのは、人体に優しく、香りも良い「天然の虫よけ剤」です。

その一、コーヒーかす」

皆様のお宅では、毎日のひと時に、レギュラーコーヒーを淹れますでしょうか。

その「コーヒーかす」を乾燥させて、室内や冷蔵庫の脱臭剤にする二次利用はよく知られていますが、これを使って「虫よけ」ができます。

人間には香り高いコーヒーも、蚊にとっては逃げ出すほど苦手な臭いらしいのです。毎日の「コーヒーかす」を陰干しして乾燥させておきます。コーヒーが適量たまったら、アルミホイルで作った器に入れ、その器をフライパンの上に乗せます。

周囲の防火に注意しながら、コーヒーの上から火をつけると、煙がでて、室内を燻(いぶ)すようなかたちになります。蚊は、とてもいられなくなり、どこかへ退散してしまいます。

余ったコーヒーかすは、家の周囲に撒くと、それも蚊を近づけない効果があるとともに、土に同化して天然の肥料になります。

その二、「ゆずの皮」

調理で余ったゆずの利用法です。皮を1cm幅にらせん状にむき、電子レンジで加熱するか、そのまま天日で乾燥させます。

これを「ゆずの蚊取り線香」にして、火をつけてみます。周囲の火の用心には十分注意して、風の入ってくる窓や通風口の前に置くと、ゆずの香りが屋内に広がるとともに、蚊の入ってこられない快適な空間になります。

その三、「蚊よけ植物

「蚊を寄せ付けない植物」というのがあります。ハッカ、ローズマリー、ラベンダー、レモングラス、ハナショウブ、ゼラニウムなどがそれに該当します。

必ずしも室内に置けるわけではないのですが、鉢植えにしたものを、ベランダや窓辺の空きスペースに置くなど、蚊よけ効果と、植物を身近に置くことの快適性を兼ねて、配置を工夫してみてください。

その四、「エッセンシャルオイル」

ラベンダーなど、何種類かの植物のエッセンシャルオイル(精油)には、蚊よけ効果があります。植物精油は、植物の花、葉、果皮、種子などから抽出した芳香物質であり、天然の香りを有する上、いくつかの種類の精油は良好な防虫効果を発揮します。

市販されている虫よけスプレーと同等の効果がありますが、ラベンダーなど、いくつかの種類以外の植物は、皮膚トラブルを起こす心配があるため、直接肌に塗布することは避けてください。

その五、「漢方薬の匂い袋」

一部の漢方薬は、匂いが強く、蚊を遠ざける効果があります。漢方薬局では、夏に漢方の蚊よけ剤を販売しますが、一般の方でも漢方薬の蚊よけ袋を作って、携帯することができます。

作り方の一例として、ライラック、艾葉(がいよう、よもぎ)、ヨロイグサ、蘇葉(そよう、しそ)、ハッカ、石菖(せきしょう)、藿香(かっこう)、忍冬(すいかずら)をそれぞれ10gずつ取り、できるだけ砕いて、料理用の「だしパック」の中に入れます。

さらにそれを、布製の「匂い袋」にいれて携帯します。ただ、匂いが強くて気になる人、妊婦やアレルギーのある人は、避けてください。

 

用具を使った「虫よけ」

用具その一、「扇風機」。

蚊がいつの間にか寄ってきて、素肌の足元を刺すのは、実に不快なものです。

そんなときは、扇風機で弱い風を足元に当てておき、皮膚の表面から発せられる「蚊が好む物質」を吹き飛ばすようにしましょう。蚊が近づく確率が減ることは、間違いありません。

クーラーばかりの日常では、冷え過ぎて体調を崩すこともあります。扇風機の柔らかい風も、なかなかいいものです。

用具その二、「蚊帳」

殺虫剤を使わずに安眠するための、最も快適な「虫よけ」の方法は、やはり昔ながらの蚊帳(かや)を吊ることかもしれません。

和室用の蚊帳は、四方に環(かん)がついていて、部屋の四隅の長押(なげし)の金具にひもで吊ることができるようになっています。

西洋のベッド用の蚊帳は、ベッドの上部に天井から吊った蚊帳が丸めてあって、使用するときに下ろして、ベッドをすっぽり包むようにします。

どちらの蚊帳も、出入りするときには、蚊帳の端をふって蚊を遠ざけてから、すばやく中へ入りましょう。東西共通の、夏の夜の定番のしぐさです。

それでは皆様。秋の蚊に刺されないようにして、今夜も、ごゆっくりお休みください。

(翻訳編集・鳥飼聡)

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