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【歌の手帳】夕顔の白く 

夕顔の白く夜の後架(こうか)に紙燭(しそく)とりて(武蔵曲)

歌意「夜半、紙燭の灯りを頼りに屋外の厠に向かうと、闇のなかに夕顔が白く咲いていたよ」。

出典の『武蔵曲(むさしぶり)』は大原千春の偏による俳諧選集で1682年刊。そこに載っていたこの俳句の作者は、なんと松尾芭蕉なのです。

本来、五音である初句が「夕顔の白く」で八音。芭蕉にこんな破格の俳句があるのかと意外な感を禁じ得ません。作品としては全然良くないのですが、俳諧に新風を吹き込もうとする芭蕉の、一つの苦心の試みかと思われます。

「夕顔」「紙燭」で想起するのは、もちろん『源氏物語』夕顔の巻。光源氏の思い人である「夕顔の君」が物の怪にとり憑かれて突然死するという、ちょっとホラーな話です。

(聡)

 

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