どの社会にも、その時代を象徴する理想像があります。アメリカでは、ほとんど何よりも「生産性」が重視されています。最も多くの収益を上げる人、最高の成績を残す人、あるいは誰よりも長時間働き続けられる人が英雄とされます。この価値観は当たり前のように思えるかもしれませんが、決して昔からそうだったわけではありません。時代や文化によって、人々が大切にしてきた価値観はさまざまでした。例えば、子孫繁栄、忠誠心、勇敢さ、強さなどは、その代表的なものです。
生産性を重視する文化には、多くの利点があります。過去200年間で物質的な豊かさや生活水準が飛躍的に向上した背景には、このような価値観が大きく関わっていると言えるでしょう。私は、その成果を称賛しながらも、一方でそれが人間の心や生き方にゆがみをもたらしてきたことにも目を向けるべきだと考えています。
自分自身を「生産的な仕事をする経済的な存在」としてしか見なくなると、それ以外の価値を認識することが難しくなります。しかし、私たちは「どれだけの成果を出したか」だけで決まる存在ではありません。むしろ、生きていて、人生を体験しているということ自体が祝福すべきことなのです。多くの人は、人生は生きるためにあるという本質を見失っています。そして、生きるということは、立ち止まり、休み、余韻を味わい、周囲の世界に目を向けることでもあります。
生産性を私たちの社会のように極端に重視すると、それは人々の行動そのものを変えてしまいます。ゆっくり過ごすことに罪悪感を抱き、休むことをためらい、「生産的ではない」と思える時間はすべて無駄だと感じるようになります。その結果、子どもや高齢者、病気の人など、生産性が高くない人たちの価値まで低く見られるようになってしまいます。また、「成果を出すためなら仕方がない」として好ましくない行動が正当化され、不安や疲労を抱えたり、社会に取り残されたように感じたりする人が増える原因にもなっているのでしょう。
私たちは、「今のあり方が唯一の正解ではない」ということを、時折思い出す必要があります。他人を変えることはできなくても、自分自身は変えられます。そして、自分が変わることで、「別の生き方もある」ということを周囲に示すことができます。
私自身も、知っている誰にも負けないくらい、休むことが苦手です。私は長い間、「休息は努力して勝ち取るもの」だと思い込み、体力を回復して再び働くために必要最低限しか休んできませんでした。それどころか、寝る前に少しでも仕事を進めたいという理由で、本当はもっと眠りたいと思いながらも睡眠時間を削ることさえありました。
だからといって、仕事を敵視する必要はありませんし、現実から逃げるためにスマートフォンや画面の中へ逃避することが解決策でもありません。本当に大切なのは、休息や余暇を、人間らしい人生を構成する正当な一部として心から楽しむことです。人間らしさを取り戻してくれるものはすべて、機械やテクノロジーが中心となる現代において、私たちにとって大きな力となるでしょう。
暮らしの中に休息を取り入れる7つの方法
ただ生きているだけで、あなたにはすでに休む価値があります。そのことを少しでも感じてもらえたらと思い、私自身が心から心地よいと感じている休息の方法をいくつかご紹介します。
1. 急がず、目的も決めずに長い散歩をする
テクノロジーから離れましょう。運動のためでも、目的地へ向かうためでもなく、道中で五感が感じるものをただ楽しむために歩いてみてください。思考は、行きたい場所へ自由に漂わせて構いません。
2. 紙の本を読む
座り心地のよい椅子を見つけ、時間を忘れるまで読書を楽しみましょう。知識を増やすための本ではなく、別の世界へ連れて行ってくれるような物語を選ぶのがおすすめです。
3. 静かに座る
祈りをささげてもよいですし、ただ静かに心を落ち着けるだけでも構いません。私たちの頭の中はいつも慌ただしく動き続けており、一つのことだけに集中する時間はほとんどありません。思考の流れを少しずつゆるやかにし、一つのこと、あるいは何も考えない時間を味わってみてください。
4. 大切な人とマッサージをし合う
信頼できる人から優しく触れてもらうことは、とても心地よいものです。肩や手を軽くマッサージするだけでも、ストレスは和らぎ、意識を「今、この瞬間」へ戻してくれます。
5. お風呂やシャワー、サウナで温まる
照明を少し落とし、心身をゆっくりと解きほぐしましょう。このリストにある多くの方法は、感覚をじっくり味わう時間を自分に与えたり、普段よりもゆっくり過ごしたりすることが目的です。温かいお湯は、ただ体を洗うためのものではなく、その心地よさを味わうための贅沢でもあります。
6. ベッドでゆっくり過ごす
目覚めた瞬間に慌ただしく一日を始めるのではなく、少しだけベッドの中でくつろいでみましょう。私は目が覚めた途端に飛び起きるのが苦手です。そのため、数分だけベッドでのんびりし、寝返りを打ったり、少しだけ本を読んだりしてから起きるようにしています。穏やかな気持ちで一日を始めるには、とても良い方法です。
7. 大切な人と、ゆっくり食事を楽しむ
私たちは食事を「エネルギー補給」や「食べたい欲求を満たすもの」として考えがちですが、その意味はそれだけではありません。食卓を囲み、大切な人たちと料理を味わう時間は、人類が古くから受け継いできた、心を豊かにしてくれる最も深い営みの一つです。
それでもなお、「休むこと」に抵抗を感じるのであれば、休息は自分のためだけではないということを思い出してください。自分の歩みを少し緩めることで、「良い人生とは、どれだけ多くのことを成し遂げたかで決まる」という偏った価値観を拒み、自分の選択を導く新しい価値観のための余白をつくることができます。より多く休むことで、私たちは互いに向き合う時間を持てるようになり、身の回りにあふれている美しさに気づき、それを育む時間も得られるのです。
(翻訳編集 井田千景)
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