中国国営CGTN、元社員が内幕暴く 「政治検閲の先生」「上からの指示」
中国国営の外国語放送「中国環球電視台(CGTN)」の海外での運営方法について、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は20日、CGTNの元従業員12人へのインタビューを報じた。ほとんどは匿名を希望し、中には中国の報復を恐れている人もいた。
「中国政府が嫌がることは報じるな」
ワシントンの元CGTN上級編集者は、入社して間もなく、北京本社の幹部が「報道内容を異常に厳しく管理している」ことを知ったという。「ニュース原稿やキャスターの台本に、中国(共産党)が気に入らない内容を盛り込むことは許されなかった」と語っている。
CGTNの編集ルールは、時に外国人社員に混乱を与えることがあった。例えば、2012年に習近平副主席(当時)がワシントンD.C.を訪問した際には、不測の事態によりCGTN編集部が大混乱に陥った。
当時、現場では多くのチベット人や法輪功学習者らが、中国共産党による迫害に抗議していた。CGTN編集部は当初、デモ隊を隠すために、「赤い中国国旗が辺り一面を覆う」と予想していた。しかし、リポーターのジェシカ・ストーン(Jessica Stone)さんが生中継したところ、デモ参加者は多く、抗議の声もあまりにも大きかったため、デモ隊の存在を無視できず、報道の中で言及せざるを得なかった。
CGTNの生放送中にデモの映像が流れたとき、「編集部はパニックに陥り、上司たちは皆、テレビに向かって叫びだした」と元編集者は振り返った。この放送に関わったスタッフは、後に「二度とこのようなことが起こらないように」と反省を要求されたという。
「政治検閲の先生」や「上からの指示」
CGTNの元プロデューサー、ニュースキャスター、編集者はインタビューで、すべての原稿は「先生」と呼ばれる人物が政治的な検閲を行っていたと証言した。
2016~19年までCGTN編集部で校閲を担当していたゲイリー・アングルブラント(Gary Anglebrandt)さんによると、すべての原稿は中国人が書き、英語ネイティブ編集者が手を加え、自然で意味のよく通るものにした後、政治検閲を担当する「先生」に渡されるという。
同氏の仕事は、原稿の文法やスペルの間違いを修正し、それを当番の「先生」に送ることだった。「先生」たちはすべての報道を政治的に正しいかどうか確認するという。
CGTNの中国で拘束された外国人のテレビ自白放送について、アングルブラントさんは「プロデューサーに放送しないようアドバイスしても無駄だ。『上からの指示で放送しなければならない』の一点張りだ」と語った。
FT紙は記事の中で、この「上」からの圧力が、CGTNが欧米のメディア規制当局と対立した主な原因の一つだと分析している。
CGTN、海外のネット有名人を募集
2008年の北京オリンピック以降、中国共産党はCGTNを通じて、いわゆる「ソフトパワー」を国際的に展開している。CGTNは、北京本部のほか、ワシントンD.C.(北米統括)、ロンドン(欧州統括)、ケニア・ナイロビ(アフリカ統括)に制作拠点を置いている。
16日付の英タイムズ紙によると、CGTNは4月に「メディア挑戦者」キャンペーンを開始し、世界中で影響力のあるジャーナリストやネット有名人を募集している。これは、欧米のメディアにおける中国共産党のイメージ低下に歯止めをかけるため、中国政府が展開する大規模なプロパガンダキャンペーンの一環である。
中国共産党の対外プロパガンダを長年研究してきたジャーマン・マーシャル財団のマレク・オルバーグ(Mareike Ohlberg )研究員は、米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、「中国官製メディアは、メッセージの信頼性を高めるために、より多くの外国人支持者を募ろうとしている。漫画などのカジュアルなコンテンツや、いわゆる『革新的』な手段を用いて、プロパガンダ機関のイメージを弱め、その影響力を高めている。(中略)驚いたことに、CGTNは今回、これを公に、しかも大々的に行っている。これまでは、秘密裏に行っていた」と語った。
また、米オークランド大学ジャーナリズム学部の蘇巧寧教授はRFAに、「習近平総書記が、信頼でき、親しみやすく、尊敬できる中国のイメージを求める中、過去の戦狼外交のトーンは変わりつつある。この方針のもと、対外プロパガンダを展開するための新戦力を募集している。言論の自由と国家安全保障の間に線を引くことは難しいが、これこそが権威主義国家が民主主義国家に浸透する主な理由である」と指摘した。
日本ではCGTNの日本語ニュースは現在、AFPBB(フランス通信社日本語版サイト)や、Yahooニュースなどのニュース会社を通じて配信されている。
(翻訳編集・王君宜)