【紀元曙光】2020年12月18日

東京の人間は雪を知らない。

▼もちろん東京ものの筆者も、雪国のご苦労は想像できない。東京でも一年に一度くらいは雪が降るが、5センチも積れば「大雪」で転倒者続出となる。それほど東京人は雪に弱いのだ。

▼昨夜からテレビの画面に映るのは、群馬から新潟へ続く関越自動車道路。あまりの大雪のため多数の車が動けなくなった。自衛隊が出動したが、長い人では30時間も足止めされたという。車内に閉ざされたドライバーは一様に疲労困憊していた。

▼この様子を、多くの報道が「立ち往生」という言葉で伝えていた。現代語の「立ち往生」は、非常に困った状況のなかで解決策がなく身動きがとれない状態を、少し揶揄または自虐するような場合に使う。立ち往生の本来の意味は「困って動けない」ではなく、主君である源義経を逃がすため、武蔵坊弁慶が追手の前に立ちはだかり、その身に無数の矢を受けながら絶命するという、壮絶な忠臣の姿だったはずだ。

▼「弁慶の立ち往生」は、いつしか笑いのニュアンスさえ含む使い方をされるようになったが、先述の大雪による立ち往生は、まことに深刻で、笑いごとではない。雪の怖さを知らない筆者には想像もつかないが、あれは死亡事故にもつながるのではないか。

▼何年前か忘れたが、晩秋の南魚沼地方を取材で訪れたことがある。最高級のコシヒカリが豊かに実り、その重さで収穫直前の稲が横に寝ている光景を見てきた。山の雪を源とする清らかな水が、日本一おいしい米をつくる。雪は難儀だが、それがもたらす実りは、やはり嬉しい。雪国の皆さん、お元気で。

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