【紀元曙光】2020年10月17日

(前稿より続く)モンゴル帝国は14世紀以降、その版図を大幅に小さくした。

▼もっとも、最盛期があまりに大きすぎた。モンゴル人は、帝国の経営をあっさりと捨てて、元の遊牧の民にもどっただけとも言える。

▼モンゴル人は奪った土地を長く所有することに執着しなかった、と司馬遼太郎さんもどこかに書いていた。欲しいものは、交易で入手するか、武力で奪うかであるが、いずれにせよ、持ち運びのできない土地は彼らが本当に欲しいものではない。異民族への征服の際には相当残酷な方法をとったが、その後の統治には、言語の制約もあって細かいことは求めなかった。

▼モンゴル騎兵の強さは、持ち馬の数が圧倒的だったことにある。遠征には、騎兵一人につき30頭ほどの「替え馬」をともなった。元気な馬をどんどん取り替えて乗るから、馬体が小さくてもその足は衰えない。西洋の重騎兵に対して、モンゴル軍はその機敏な運動性で圧勝した。馬が口にする草と水があれば、万里の果てまで進軍できる。加えて、彼らの精神的支柱は、自分たちは英雄チンギス・ハンの末裔であるという民族の誇りであった。

▼そんなモンゴル人のうち中国領内とされる南モンゴルに居住する人々を、共産党中国は、ねじふせてでも「中国人」にしてしまおうとする。が、時の潮目はすでに変わっている。モンゴル語での教育を禁じるなどの中共の所業は、今後、全てが裏目に出るのだ。

▼フランスのナント歴史博物館で予定されていたモンゴル関係の展示に、中国政府が「検閲」などの横槍を入れてきた。案じるなかれ。もちろんそれも必ず裏目に出る。(4回了)

▶ 続きを読む
関連記事
新年を迎えるため、12月下旬になると、各家庭では家の内外を隅々まできれいに掃除し、同時にさまざまな飾り物を設置して、新しい一年が順調に進むよう祈願します。これらの飾りには、それぞれ異なる意味が込められています
成長を求めるほど、人生が窮屈になることはないか。自己改善が自己中心へと傾く矛盾を描き、意図性と余白の大切さを問い直す一篇。頑張りすぎて疲れた人ほど、今の生き方を静かに見直せます。
食べ過ぎや胃の重さが気になる季節に。冬のスパイスを使ったやさしいミルクが、消化を穏やかに支え、心と体を温めます。知っておきたい理由と簡単レシピを紹介。
頭を打った経験が、将来の認知症リスクに影響するかもしれない。中医学と研究知見から、マッサージ・食事・自然で脳を守る実践法を解説。日常でできるケアが見えてくる一篇です。
速度無制限で走れる道路が、世界にわずか2カ所だけ存在することをご存じだろうか。夢と危険が隣り合うマン島とドイツ・アウトバーン。その実態と意外な背景をご紹介。