【紀元曙光】2020年10月7日
来場所から新大関となる正代関は、「ネガティブ力士」と呼ばれている。
▼確かにギラギラした印象は全くなく、受け答えも淡泊。四股名も、山だの龍だのと強そうな文字を選んでつけるのが通例だが、本名の正代さんを使っている。さすがに大関昇進の伝達式では、「大関の名に恥じぬよう、至誠一貫の精神で相撲道に邁進して参ります」と力強い口上を述べたが、普段のインタビューでの言葉は至って控えめである。
▼きっと温厚で、人柄も良いのだろう。もちろん、実力があるから大関まで昇進したにきまっているが、常に勝たねばならないプロの世界では珍しいタイプかもしれない。それでも横綱不在で、しかもウイルス拡大防止のため観客の入場を制限した先場所を、大いに盛り上げてくれた。相撲好きの一人として、正代関に感謝したい。
▼聞けば、始めからプロの力士を目指していたわけではないらしい。東京農大2年生のとき、学生横綱という堂々たるタイトルを獲得した。そこで大学を中退してプロの世界に入れば、幕下15枚目格付出という優遇されたスタートを切ることができた。
▼しかし正代関は、大学で学業を続ける道を選んだ。4年生で教育実習に行き、そこで自分が教師には向いていないことを知ってから、角界入りを志望するようになったという。
▼遅咲きの大器である。どこか冷めているようなネガティブ発言のお相撲さんだが、よくよく見ると、階段を踏みしめながら一段ずつ上るように、その歩みは確実に上へ向かっていた。今もコロナ禍の日本。こんな力士も、また捨てがたい魅力があると気づいた。
関連記事
新年を迎えるため、12月下旬になると、各家庭では家の内外を隅々まできれいに掃除し、同時にさまざまな飾り物を設置して、新しい一年が順調に進むよう祈願します。これらの飾りには、それぞれ異なる意味が込められています
成長を求めるほど、人生が窮屈になることはないか。自己改善が自己中心へと傾く矛盾を描き、意図性と余白の大切さを問い直す一篇。頑張りすぎて疲れた人ほど、今の生き方を静かに見直せます。
食べ過ぎや胃の重さが気になる季節に。冬のスパイスを使ったやさしいミルクが、消化を穏やかに支え、心と体を温めます。知っておきたい理由と簡単レシピを紹介。
頭を打った経験が、将来の認知症リスクに影響するかもしれない。中医学と研究知見から、マッサージ・食事・自然で脳を守る実践法を解説。日常でできるケアが見えてくる一篇です。
速度無制限で走れる道路が、世界にわずか2カ所だけ存在することをご存じだろうか。夢と危険が隣り合うマン島とドイツ・アウトバーン。その実態と意外な背景をご紹介。