【紀元曙光】2020年7月16日

芥川龍之介の『杜子春』。仙人になることを望む杜子春に、師である鉄冠子は「何を見ても、決して声を出してはならぬ」と厳命する。

▼仙人になるための修行で、峨眉山の頂上から地獄に落ちた杜子春は、閻魔大王による過酷な責め苦にあっても、じっと堪えて声を出さなかった。しかし、畜生道に落ちていた両親が引き出され、目の前で鬼に鞭打たれると、杜子春は思わず「お母さん」と声を出してしまう。

▼芥川は、もとの中国古典にある杜子春の物語を、だいぶ日本人好みにアレンジして描いている。芥川の杜子春は、仙人にはなれなかったが、勤勉な生活の中に幸せを見つけるという、まことに結構な結末なのだ。

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