スイスのジュネーブにある国連人権理事会会議場(ALAIN GROSCLAUDE/AFP/Getty Images)

国連、内部告発者に嫌がらせ 支援団体「正義を自称する偽善」と批判

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が数年前から、反体制派や人権活動家の情報を中国政府に渡していた問題が、国連元職員の告発により明らかになった。元職員は、告発により国連から嫌がらせを受けていたと大紀元の取材で明かした。事情通は、中国が人権理事会の理事国に選任されるよう、国連は告発を無視し続けたと考えている。

スキャンダルを暴露

2013年初頭、アイルランド出身のエマ・ライリー(Emma Reilly)氏は、人権高等弁務官事務所(OHCHR)と人権理事会支部の非政府組織(NGO)への連絡係を担当していた。

ある日、ライリー氏は上司から、中国の反体制派の名簿を中国政府へ渡すよう指示を受けた。「ショックを受け、すぐさま上役に報告した」という。

国連人権高等弁務官と国連倫理事務所はライリー氏の報告を受け取ると「昇進したければ上司にこの情報を使って、賄賂を送るべきだろう」と返答したという。「これが国連の腐敗の深刻さだ」とライリー氏は失望を口にした。

それでも、ライリー氏は奔走し、この情報漏えいを欧州連合の国連代表者たちにも知らせたという。しかし「上司は、彼ら(各国の国連代表者)に嘘をついて、そんなことは起きていないと説明していた」と述べた。

こうした告発活動のなかで、ライリー氏は報復に遭った。「私は村八分にされた。機能しない部署への異動となり、記者やNGOに中傷された」ライリー氏は自己免疫機能に問題を抱えている。これを知った上司は、医療システムの不十分なモーリタニアに異動させようとしたという。

ライリー氏は20人あまりの国連幹部のメールグループのやり取りで、この名簿漏えいについて話題になったことから、幹部の多くはこの事案を知っているとした。

香港で国際人権団体アムネスティと連携していたライリー氏は、中国の反体制派が危機に直面していると分かっていた。中国政府は、人権高等弁務官事務所から入手した情報を元に、中国国内にいるウイグル人やチベット人の活動家らを迫害した。一部の人は施設に収容され、拷問を受け、死亡したケースもあるという。

国連に対する中国共産党政権の影響力増に懸念が強まっている。「国連が反体制派の名簿を漏らすことは起きてはならない」とライリー氏は語る。

ライリー氏の告発は2019年12月15日放送の米国FOXニュースに取り上げられた。報道によると、ライリー氏の告発内容は米国上級外交官と下院議員に送付されている。報道を受けて、国連は、批評家やアナリストから「中国の干渉を許した」との強い批判を受けた。このため、内部監査制度は見直されている。大紀元の取材に応じたライリー氏によると、情報の外部漏えいを許した職員は解雇されたという。

取材に応じた他の匿名の国連職員もまた、こうした腐敗は国連全体で見られると指摘した。また、第三者機関の監視が必要だと主張している。

国連裁判

2013年から続く彼女の告発活動は、ついに2019年5月、国連で裁判が開かれることになった。ライリー氏は、中国政府に反体制派名簿を提供し続けた国連の違法性を訴えた。さらに、告発者への不適切な対応の改善を求めた。

「国連自身が内部の規則を無視して、その告発者が辞任するまで可能な限り報復を加えている。また、過去にはニセの罪で有罪判決を受けている」ライリー氏は、自らの例は、正しいことをしようとした他の国連の内部告発者の一例に過ぎないと主張した。

こうした内部調査は「茶番劇」となった。ライリー氏によると、国連側は「重要な証拠を隠し、私の人格攻撃に焦点を当てた」という。いっぽう、担当のダウニング裁判官はライリー氏の主張に耳を傾け、「私の主張にショックを受けている様子だった」と述べた。

翌6月に2回目の裁判が開かれたが、1回目のダウニング裁判官は担当から解かれていた。国連は「問題があり、調査中」だという。このため、ライリー氏の裁判は振り出しに戻った。

「国連には本物の第三者監視機関が必要だ。そうでなければ告発者を保護できない」とライリー氏は訴え続けている。

ジュネーブ拠点の国際弁護士のエドワード・フラハティ(Edward Flaherty)氏は、ライリー氏の事案を受けて、国連の内部告発者への対応は「真実を追及したり、権力の濫用を止めたりするのではなく、国連幹部を保護するためだけに設計され、運用されている」と指摘した。

元国連内部調査官ピーター・ギャロ弁護士は、同様の懸念を大紀元に語った。「国連は、中国が人権理事会に選出されることを確実にするために、中国の人々が拷問を受けたり、虐待で死亡したりする危険を無視したのだろう」とした。

ギャロ弁護士は、国連による嫌がらせの被害者の支援組織「訴えを聞く(Hear Their Cries)」を運営している。ライリー氏の事案および裁判官の解任について、国連が正義の機関だと自称する偽善を示したと批判した。「機能不全に陥っている。官僚主義者たちによる機密の部屋になった」

大紀元は国連人権高等弁務官事務所に取材を申し込んだ。広報担当は、「現在訴訟が進行中のため、コメントすることは適切ではない」とした。

(国際ジャーナリスト アレックス・ニューマンAlex Newman リバティ・センチネル・メディアCEO/翻訳編集・佐渡道世)

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