2014年、東京で模擬展示されたカジノのルーレット。参考写真(Getty Images)

外為法違反事件 中国IR企業の筆頭株主は国営ITコングロマリット

日本への統合型リゾート(IR)進出を試みていた中国のカジノ企業関係者が、日本国内に無申告で数百万円の現金を持ち込んだとして、東京地検特捜部が外国為替法違反の疑いで捜査している。NHKなどが12月18日に報じた。この中国企業は沖縄北海道で投資計画を立てていた「500ドットコム」だ。国内ではオンライン賭博の厳しい規制により赤字が数年続いているが、同社の筆頭株主は中国国有IT複合企業で、その後ろ盾の大きさから「10年間売上なしでも生き残れる」と公式コメントを出している。

500ドットコムは、2001年に深センで設立したオンラインくじ販売が主体の民間企業。公式ホームページによると、中国でスポーツくじ、ロトくじなどの販売を行う。ほかにも多数の国でオンラインポーカーやブラックジャックなどのサービスを提供している。中国本土で唯一、合法賭博とされるのはオンラインくじで、当局はくじの販売を2社に限定し、500ドットコムはそのひとつ。もう1社は国営企業。

日本におけるカジノ統合型リゾート計画推進に注力するため、日本法人は2017年10月に設立。沖縄へ最大3000億円、北海道留寿都村へ1500億円超の投資を計画していた。

500ドットコムは2017年8月に沖縄那覇市でIR計画に関するシンポジウムを開催した。潘正明・最高経営責任者(CEO)、当時内閣府副大臣でIR担当の秋元司・衆議院議員、笹川経済支援機構代表理事で日本カッシーノ・フォーラムの笹川能孝氏、元横浜商科大学教授の小濱哲氏らが登壇した。

潘CEOはスピーチで、中国で著名なリゾートの海南島と香港、マカオを訪問する本土旅行者は年間合計1億1000万人だが、そのうち5~10%にあたる550~1100万人を沖縄県に誘導したいと述べたという。

時事通信によると、東京地検特捜部は中国企業との関係を聞くために、秋元衆院議員に任意で事情聴取した。議員は、不正への関与を否定したという。

「10年間売上なしでも生き残れる」

沖縄や北海道で計画するIRの構想規模は数千億円と大きいが、500ドットコムは実際、中国国内事業で赤字が続いている。2014年、同社の売上高は5億8000万元(約94億円)だが、2015年には9955万元(約16億円)、2016年には1092万元(約1億7000万円)にまで激減した。米国のPRニュースワイヤーによると、2019年第3四半期の純収益は980万元(約1億5000万円)、営業損失は1億3830万元(約21億円)。

背景には、中国政府によるインターネットくじの厳しい規制がある。以前はテンセント、アリババ、新浪、など30あまりのIT企業が独自のネットくじ事業を運営しており、2014年ブラジルの国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップ開催年には、前年比102%増加の850億元(約1兆4000億円)を記録し、スポーツロッタリー販売のピークに達した。しかし、2015年に政府がネットくじ販売を規制すると、大半の上場企業はくじ事業から撤退した。さらに2018年8月、財務部、国家発展改革委員会、中国人民銀行など12の政府部門は、「インターネット環境の清浄化」するために、企業や個人によるネットくじ販売は違法とし、深刻な処罰を受けると警告した。

2017年、500ドットコムは、ヨーロッパのカジノ会社Multi Groupと香港カジノ会社のMelcoLot社を買収した。中国メディアは、海外企業の買収は国内ゲーミング事業の不振と業績悪化を改善するための策だと分析している。中国人旅行客に人気が高い、日本の沖縄や北海道にIR進出を試みるのも、同様の見方がある。

PRニュースワイヤーによると、500ドットコムの2019年第3四半期の純収益は、欧州におけるオンラインくじ販売と、オンラインカジノの収益が大半で、総収益の94.9%を占める。

2015年の政府の販売停止令以降、500ドットコムの営業成績は赤字を記録している。にもかかわらず、同社の公式ホームページには、「10年売り上げなしでも生き残れる」と強気の報告をしている。2015年4月発表の同社プレスリリースには、「2014年12月31日時点で9億1420万元(約155億円)の現金を確保している。年間営業コストが8000万~9000万元でも、およそ10年間売上なしでも生き残れる」とある。同社は2013年11月、ニューヨーク株式市場にも上場しており、投資家を安心させるための方法とみられる。

6000万人を超える登録ユーザーは「非常に重要なリソース」

500ドットコムの強気な態度の理由には、同社の筆頭株主が、華為技術(ファーウェイ)とも肩を並べる、中国国有のIT複合企業・清華紫光集団であることに注目したい。

清華大グループである清華紫光集団は半導体、AI、ビッグデータ、監視技術などを開発している。中国政府が支援して、外国から半導体技術を移転する取り組みの先頭に立つ企業だ。大学の人脈を利用して、技術取得を進めたとされる。紫光集団の代表取締役の趙偉国氏は2015年、億万長者となった。

清華紫光集団は2015年、1億2400万ドル(約150億円)で500ドットコムの株30%を取得し、筆頭株主となった。この買収について、紫光集団の副総裁で500ドットコム代表取締役の張永紅氏は、中国メディア「一線」の取材に対して、500ドットコムのユーザーデータを重要視したためだと述べた。「6000万人を超える登録ユーザーは非常に重要なデータのリソースだ」と張氏は発言している。

インターネットサービスを中国で運営する国内外の企業は、民間国営問わず、政府にデータを提供するよう義務付けている。中国国家インターネット情報弁公室は5月28日、「データ安全管理規則」原案を公表した。それによると、政府は、ネットサービスの運営者が国外にデータを移動する前に、監督部門の同意を得ることを求めている。

(翻訳編集・佐渡道世/李沐恩)

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