使い残しの玉ねぎは本当に有毒?!噂話の真偽は如何に・・・?!

料理に欠かせない万能野菜、玉ねぎ。

そんな玉ねぎにまつわる話が、インターネット上でたくさん出回っています。

例えば「使い残しの玉ねぎは病気バクテリアを磁石のように吸収してしまうから有毒」というSNSの投稿。

もしくは、「その昔インフルエンザが大流行した際、家の周りに玉ねぎの切れ端を置いた家族だけが病気にならず、その玉ねぎがインフルエンザウィルスを吸収していたことを医者が発見した」という記述。

こんな情報を目にしたらびっくりして友人家族にシェアしたくなってしまいます。

でも待って下さい。本当に玉ねぎは有毒で、本当に病気を吸収する力があるのでしょうか?

これらの謎を紐解く鍵は、どうやらその情報源にあるようです。

「玉ねぎがインフルエンザを吸収した」という噂話の情報源は1919年当時の美容師。名前も特定されておらず、残念ながらその信憑性は低そうです。

それに対して「玉ねぎは有毒である」という噂。この噂話には「アメリカ食品医薬品局(FDA)は、未調理の玉ねぎはバクテリアを誘発すると結論付けた」と、実在するアメリカ政府機関の名前が含められています。公的機関の正式発表を引用しているから間違いなく信頼できる情報だ!と言いたいのですが・・・実は全くのでっち上げなのです。FDAの広報担当者は「FDAは使い残し玉ねぎについて声明を発表したことはない」と、この情報との関わりを否定しています。

ではこの「デマ」、どの様にして広まったのでしょう?スノープス(Snopes)というサイトが「使い残し玉ねぎは腐ったマヨネーズより危険」という噂の出どころを調査したところ、ある料理ライターが執筆した記事である事がわかりました。このライターが「マリンズ・フード・プロダクツ」という食品工場を見学した際にガイドから聞いた話「食中毒が報告されたら、医者はその原因としてまず玉ねぎを疑う。未調理の玉ねぎはバクテリアを磁石のように吸収するから、使い残しを保存すべきでない」という部分のみが切り離され、人から人へと拡散されていたのです。しかしマリンズ社はこの記事作成への関与を否定、元記事もインターネットから削除されてしまいました。

この巧妙に作り上げられた「デマ」はそのリアルさから多くの人が信じ込んでしまい、アメリカでは様々な機関がその火消しを積極的に行っています。

アメリカ農務省の食肉ホットラインは使い残し玉ねぎの問い合わせに対し、「噂は全くのでたらめ」と対応しています。アメリカ玉ねぎ協会のサイトにも、「使い残し玉ねぎの噂は全て出まかせであり、密閉容器に入れて冷蔵庫にしまえば7日間は鮮度を保つことができる」と明記されています。食品安全専門家は、「玉ねぎにはバクテリアを吸収する力などなく、使い残しもきちんと取り扱えば数日間は全く安全」という情報を発信しています。

(Shamaan/Shutterstock)

一方、玉ねぎは何千年にも渡って大衆薬として使われてきており、切れ端を胸の上や耳の中に置けば玉ねぎが悪い病気を吸い出してくれると信じられてきたのも事実です。しかしそこにも間違いがあります。玉ねぎが病気を吸い出すのではなく、玉ねぎの化学物質が体内に入り込んでいるのです。

玉ねぎを切ると涙や鼻水が出てくる現象を科学的に見てみましょう。玉ねぎは切られることによって細胞膜が壊され、それぞれの層に別々に含まれている酵素を発散します。これらの酵素が結びつくと化学反応により硫酸ガスが発生し、それが目と鼻を刺激して涙や鼻水を出すのです。

もうおわかりですね。玉ねぎが病気やバクテリアを吸収するのではなく、玉ねぎの化学物質が体内に入り込んで体に作用しているのです。

玉ねぎの化学物質には抗菌・抗ウィルス性があり、体の粘液を薄める効果もあるので炎症も抑えます。また、ビタミンC、鉄分、ケルセチン(心臓血管の動きを助ける物質で腫瘍の成長も遅らせる)、更にはイヌリンというプレバイオティクスも豊富で、体内のバクテリアバランスを健康的なレベルに維持してくれます。このように、多くの化学物質が体内の見えない部分で魔法のように作用し症状を抑えるため、「玉ねぎが病気を吸収した」と勘違いされていたのです。

(Barbara Dudzinska/Shutterstock)

それだけ体に良いのなら玉ねぎをたくさん食べよう!と言う方は要注意。文化・風習によっては玉ねぎの効力は強すぎると考えられており、摂取を避ける場合もあります。インド伝統医学では玉ねぎ・ニンニクを取り過ぎることは良くないとされ、摂取量が制限されています。

伝統的な仏教でも匂いの強い玉ねぎやニンニクは禁止されていました。現代でも腸に問題のある人が摂取すると状態を悪化させる危険があるため、玉ねぎやニンニクを避けるように指導されています。

使い残し玉ねぎは有毒である、という噂は全くの迷信です。

最新研究により、玉ねぎには血液をサラサラにし、がんを予防し、呼吸器系の感染を治すなど体の免疫を高める作用があることも証明されています。

さあ、万能野菜玉ねぎを程よく使って美味しくて健康的、一石二鳥な食事を楽しみましょう!

(大紀元日本ウェブ編集部)

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