(Photo credit should read TORSTEN BLACKWOOD/AFP/Getty Images)

貪らないことを宝とする

宋の時代に、ある人が一つの宝石を手にいれた。彼はこれを斉の大夫・子罕(しかん)に献上しようとしたが、子罕はこれを受け取らなかった。「この玉は宝石の専門家に鑑定してもらった、本物の宝石です。あなた様に献上しようと思います」という人に対して子罕は、「私は貪り(むさぼり)を宝としません。あなたは宝石を宝としていますが、もし宝石を私にくれれば、私たちは二人とも、自分の宝を失うことになります。それならやはり各自で宝を保管したほうがいいでしょう」と言い、宝石を受け取らなかった。

『左伝』から引用した上記の物語の意味は奥深い。子罕は「貪りを宝としない」ようにし、すべてのものを欲深く欲しがらず、ただ「満足を知ること」で、初めて「常に楽しむ」ことができる。「貪」という漢字は「今」と「貝」(宝)とによって構成されているように、ただ目前にあるものだけを宝とするなら、これを永遠に維持することはできないだろう。漢字にはそれを見るだけで人々が道義を学び、常に自分を律することができるようにという配慮が伺われる。

もし欲望や貪りの心を自制しなければ、人間は逆に自分の欲望の奴隷となり、金銭や情欲の支配下に置かれてしまう。そのために一生を費やし、憚ることなく悪事を行い、人間のもつべき道徳規範や尊厳を捨て去り、ひいては個人の命や国家を犠牲にすることもある。自然のすべては天による按配であり、善悪には報いがあることが永遠に変わらない真理であるように、貪りに駆られて血眼になって相争えば、必ず悲惨な運命になることも、忘れてはならない。

▶ 続きを読む
関連記事
子どもを守るつもりの行動が、実は自信や回復力を弱めていることがあります。心理学者が指摘する「過度な養育」の5つのサインと、子どもの自立を育てる関わり方を解説します。
古代中国の食医は、薬ではなく「食事」で体を整えていました。五行や季節の変化を読み取り、食材の性質で気の流れを調える――東洋医学の原点にある食の知恵を解説します。中医学 食養生 薬食同源
睡眠時間を少し削るだけでも、将来の健康に影響するかもしれません。最新研究では、睡眠は食事や運動以上に寿命と強く関係する可能性が示されました。なぜ十分な睡眠が長生きにつながるのか、その理由と健康への影響をわかりやすく解説します。
突然の不調に、足がヒントをくれる?中医学と最新研究から読み解く足反射ゾーンの仕組みと、自宅でできるやさしいケア法を解説。見る・触れるだけでわかる体からのサインも紹介します。
助ければ感謝されるとは限らない——イソップ寓話「オオカミとツル」が伝えるのは、人の善意と期待の落とし穴。