策に溺れた? 米朝首脳会談の中止で北朝鮮が劣勢に

トランプ米大統領は24日、6月12日シンガポールで開催予定の米朝首脳会談中止すると発表した。大統領は同日の記者会見で、北朝鮮に対して最大限の圧力と制裁措置を継続していくと述べ、軍事行使の可能性も示唆した。休戦状態が終結へ向けて大きく動き出した半島情勢は後退した。大紀元のコメンテーターは、会談の中止は策をもてあそぶ北朝鮮が招いた結果だとみており、「中止によって、トランプ氏は米朝問題で主導権を握ることになった」と分析した。

米メディアによると、北朝鮮は首脳会談に向けた実務会議の席に現れなかった。トランプ氏は金正恩氏宛ての公開書簡で「最近の声明にみられる激しい怒りとあらわな敵意」が原因だと説明した。

北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は24日、ペンス副大統領を「愚か」「政治的なまぬけ」と批判し、米朝の交渉が失敗する場合「核による決戦が始まる」と息巻いた。その前の16日、同日予定されていた南北閣僚級会談を一方的に中止し、米朝首脳会談の中止の可能性もちらつかせた。一連の言動は問題視されたようだ。

トランプ大統領の会談中止発表は「絶妙なタイミング」

大紀元コメンテーターの唐浩氏は、北朝鮮は核兵器・ミサイルを放棄するつもりは毛頭ないと指摘した。

平昌五輪大会の前から、北朝鮮が挑発を封印し、融和姿勢を見せた。南北首脳会談で文在寅韓国大統領と手を取り合って微笑む金正恩の姿はかつての残虐な暴君のイメージを見事に覆した。その後、自ら米朝首脳会談の開催を呼びかけ、拘束中の米国人3人を解放するなど、金正恩氏が「平和の使者」にもてはやされた。半島危機の解決が目前にやってきたかのように見えた。

しかし、米側は北朝鮮に対して、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」を会談開催の条件として突きつけた。この要求に金政権が終始抵抗し、「段階的な非核化」を繰り返した。

国際社会に非核化の意思をアピールするため、北朝鮮は24日、豊渓里核実験場を爆破した写真を公表した。

米政府は、北朝鮮には非公開の核実験場がほかにも数カ所あると指摘していた。唐氏は、「段階的に閉鎖するということは、今後再稼働の可能性があるとも解釈できる」と述べた。「豊渓里核実験の爆破は、国際社会を欺く北朝鮮の政治ショーに過ぎない」とした。

その数時間後、トランプ氏は米朝首脳会談の中止を発表した。世論の関心は北朝鮮から会談に変わった。唐氏は「金氏の政治ショーは一瞬にして台無しにされた」と発表のタイミングが絶妙だと評した。

これまで北朝鮮は瀬戸際外交を巧みに駆使し、米指導者を手玉に取り、援助を引き出して来た。しかし、交渉術に長けるトランプ氏はその策を見透かした。北朝鮮は策士策に溺れ、トランプ氏は今回の駆け引きで優勢に立ったと、同氏は分析する。

会談の行方は?

会談は今後開催される可能性がまだあると同氏は見ている。突然仕掛けた揺さぶりで、トランプ氏が「守勢を攻勢に変え」、中止が北朝鮮を大人しく交渉のテーブルにつかせるための策略だと、唐浩氏は分析する。

米側のドタキャンは北朝鮮の意表をついたようだ。その後出された声明で、北朝鮮は中止は「思いがけないことだ」と当惑した様子だ。さらに、「関係改善のための首脳会談がどれだけ切実に必要なのか」と訴え、「いつ、いかなる方法でも、向き合って問題を解決する用意があることを米国側に改めて明らかにする」と異例の低姿勢だった。

トランプ氏はその後、米朝首脳会談が当初予定通り、6月12日に行われる可能性が残っているとの認識を示した。北朝鮮と協議中とも明かした。

一方、北朝鮮問題の背後に見え隠れている中国に注意を払う必要があると唐氏は指摘する。「中国の入れ知恵次第で、北朝鮮はまた手のひらを返す可能性がある。ただ、トランプ氏は米中貿易問題で中国への圧力を高めていくだろう」

(大紀元ウェブ編集部)

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