第157回直木賞、芥川賞が決定
日本文学振興会は19日、第157回直木賞、芥川賞の選考会を東京・築地「新喜楽」で開催した。直木賞は佐藤正午氏(61)の「月の満ち欠け」、芥川賞は沼田真佑さんの「影裏」(えいり) がそれぞれ受賞した。8月下旬に都内で贈呈式が開かれ、受賞者には正賞の懐中時計と副賞100万円が贈られる。
直木賞は毎年2回、1月と7月に発表され80年以上の歴史がある。無名・新進・中堅作家を対象に、新聞・雑誌・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られる。芥川賞は雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品のなかから、最も優秀な作品に贈られる。
佐藤氏は長崎県佐世保市生まれ。北海道大中退。1983年に「永遠の1/2」ですばる文学賞を受賞しデビューした。手の込んだミステリー仕立てで人間の数奇な運命を描く作風が高く評価されてきた。「月の満ち欠け」は生まれ変わりを繰り返す女性と、彼女と関わる家族や恋人の人生模様を描く長編小説。ありえない話に説得力を持たせる巧みな語り口で、奇想天外な愛の物語を描きだした。
選考委員の1人で作家の北方謙三さんは、「月の満ち欠け」を直木賞に選んだ理由について「佐藤さんは作家としてデビューして30年以上たつが、みずみずしさを失っていない魅力的な文章を書く力がある。他の候補作と比べると文章力や物語の構成力で圧倒していた」と説明した。
芥川賞を受賞する沼田真佑さんは、北海道小樽市出身で盛岡市在住。大学を卒業後福岡市で塾講師を務め、現在は盛岡市で塾講師などをしながら執筆活動をしていた。
今回の受賞作「影裏」は、第122回文學界新人賞も受賞している。 文學界新人賞とのダブル受賞は、石原慎太郎、丸山健二、東峰夫、モブ・ノリオの各氏に次ぐ5人目
芥川賞の選考委員の1人、高樹のぶ子さんは委員同士で意見が割れ、議論が白熱したことを明かしながら「震災を題材に書いた作品のなかでも『すごいものに触れた』という思い」と、作品を評した。
(編集・川上勇代)