【大紀元日本12月29日】中国には“迷惑湯”という飲み物があるらしい。中国語の“湯”はしばしば「スープ」を意味することからすれば、「迷惑なスープ」?
何のことやら分からず、あれこれ調べて見ると、より一般的には“迷魂湯”と言い、地獄で魂の本性をなくさせるために用いられる薬湯のことのようです。前世の記憶を持ったまま転生されたのでは困るため、その一切を消し去るために孟婆神が飲ませると言われます。つまり、字義通り「魂を迷わすスープ」ということで、普段の生活の中では、「人を惑わす行為や甘いことば」といった意味で用いられます。
ところで、この“迷惑”ということば、中国語では古今を通じて、「わけが分からない/分からなくさせる」といった意味で使われています。文字通り、「迷い惑う/迷い惑わす」ということです。
一方、日本語でも当初は、中国語と同じく「迷い惑う」ということで、何らかの理由で「どうしていいか分からず困惑する」という意味で用いられていたようですが、そのうち専ら「【他人の行為によって】困惑する」ことを指すようになり、今日ではそれが、「迷惑メール」「迷惑をかける」のように、「他人から厄介な目に合わされて困る」という意味に変化したようです。
ただ、方言の中では、「高価な品を頂戴して迷惑します」というように、「困惑」義(痛み入る)が残されているところがあるし、「たいへんご馳走になって迷惑(めやく)した」のように、「迷惑する」が「迷惑をかける」の意味で使われるところもあるようで、このことばの変遷の一端を窺うことができます。
いやはや、日本語の「迷惑」にはますます“迷惑”するばかりです。
(智)
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