メディアグループとして北京当局と戦う中国人=米紙「ウオール・ストリート・ジャーナル」

【大紀元日本12月2日】去る11月、中国内外の中国人にとっては「公開状の時代」となった。中国大陸の知識人及びエリートたちが次々と中国指導者宛に公開状を出し、現体制への不満を訴え、中国社会で政治改革を行い、人権迫害の停止及び思想・信条の自由を要求した。

近年、中国ではこのような体制批判の声が中国大陸では日増しに大きくなっており、中国共産党政権にとって大きな圧力になってきた。その背景として、海外中国語メディアである新唐人テレビ局、大紀元グループ及び希望の声ラジオ局などのメディアグループが、北京当局と戦う新しい中国人の民主と自由を求めるパワーを育む存在となってきたことが上げられる。米紙「ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は先月15日のトップ記事で、法輪功メンバーが作ったこのメディアグループが、当局の封鎖を打破して運営されている実情、その規模及び資金の由来などを紹介した。

法輪功学習者が運営するメディアグループ

新唐人テレビ局の向東さんを取り上げた記事(WSJのサイトより)

この記事は、ニューヨークに拠点を置く新唐人テレビ局経済番組のキャスターである向東さんの日常生活を取り上げ、新唐人テレビ局及び関連メディアの様相を深く観察した。

38歳の向東さんは、日常の仕事はデーターベース管理者。中国人民大学出身の向東さんは1989年、天安門広場で抗議する学生の一人。大虐殺が起こった前夜、人民軍が広場に進駐する場面を目撃した。

「その夜、私は中国から離れることを決意した。中国の未来に失望した」と向東さんが同紙に語った。

1990年、向さんはアメリカに留学、バージニア州のオールドドミニオン大学で会計学を専攻した。卒業後、ワシントンDCで金融アナリストの仕事に就いた。その後アメリカで、中国大陸から訪ねてきた中国人から法輪功創始者の著作『転法輪』を手に入れたのがきっかけで、法輪功の健康維持法とその道徳観を習い始めた。

法輪功は、1992年に中国東北部長春市出身の李洪志氏により伝出され、その心身修練法は中国の伝統的な教えに根ざしている。中国大陸では80年代から気功ブームが流行り、気功に馴染んだ中国の民衆たちがまもなくあらゆる流派の中、法輪功の健康効果及びその深い教えにひかれ、1999年中国当局が法輪功を弾圧するまで一億人もの愛好者がいたという。

弾圧の光景を思い出した向さんは、1999年当時のことを1989年天安門事件に例え、「10年も経ったのに、彼ら(中国当局)は何も変わっていなかった」という。

89年の天安門事件の虐殺を目の当たりにして、中国から離れることを選んだ向さんは、今回は逃げる道を選択しなかった。向さんはある日の朝、法輪功の鍛錬を終わった後、仲間たちと一緒に、大衆に対して法輪功が迫害される真相を説明すると決定した。米国各地からきた法輪功の学習者たちと一緒にワシントンの中国大使館の前で集まり、大使館の官員たちと対話をしたり、真相資料を配ったりした。同年11月、アメリカ議会は中国に対して、法輪功学習者への迫害を停止しようという拘束力の無い決議案を採択した。

更に、北京当局の宣伝機関が法輪功について世界に流した虚偽の宣伝に心を痛め、向さんは一部の法輪功学習者と独自のメディアを作り始めた。アラバマ州バーミンガムの一部の法輪功学習者はニュースサイトを立ち上げ、カリフォルニア州の学習者はテレビ番組の制作を勉強し始め、ワシントン地区の学習者は一部の人がラジオ局を作り始めたほか、新聞社を設立した学習者もいた。

向さんはテレビ番組作りに集中することを選んだ。2000年7月、向さんは地元のあるメディア関連組織が運営した夜間学校に通い始め、メディア専門知識を勉強しながら、法輪功真相を伝える番組を作り始めた。

向さんと同じような行動をとった人々の単独のプロジェクトは徐々に、一つに集結していった。地元の新聞紙が最終的に「大紀元時報」という新聞メディアに合併され、ラジオ局は「希望の声」として連結した。テレビ番組グループは、2001年10月、ニューヨークで24時間衛星放送のテレビ局・新唐人テレビ局(NTDTV)を設立することに合意した。

2006年まで、このようなメディアは、上述したもの以外、映画制作会社と世界で巡回出演の中国伝統文化精神を中心に表現する芸術団体、十数のウェブサイトにまで発展した。

中国共産党のタブーを報道

WSJ紙の報道によると、この団体の目指すところは当初、法輪功の声を取り上げるのが狙いだったが、その後、法輪功以外の範囲広い話題を網羅するマスメディアに発展し、さらに中国の民主を促進する重要な役割を果たす中国語主要メディアとなった。

そのうち、新唐人テレビの中国語と英語番組が取り上げる問題は、中国当局のコントロール下にあるメディアから見れば、タブーな話題が多い。当局の政治腐敗から2003年に発生した中国のSARS問題。米国と台湾首相選挙を生放送し、中国大陸の民衆に民主制度の実際の場面を見せた。2008年の米国大統領の選挙もまた生放送を予定しているという。また、昨年、中国大陸で密かに拘禁された法輪功メンバーに対して中国当局が組織的に臓器摘出し、販売しているという臓器狩り問題を、欧米のメディアや人権組織に先駆けて報道した。

同紙の報道によると、NTDTVの番組は衛星を通して、北米、ヨーロッパとアジアで放送する以外、中国大陸でも見られる。中国大陸の視聴者はウェブサイトでも見ることができるという。中国では、個人が衛星アンテナの設置を禁止し、法輪功関連のウェブサイトへのアクセスを禁止している。にもかかわらず、衛星アンテナの個人使用者は相当普及しており、インターネットユーザーらはあらゆる方法で政府のフィルタリングを突破して海外の情報を手に入れている。法輪功学習者により開発されたソフトもよく利用されている。

同紙が取材した中国貴州省のある視聴者・陳さんは、人権活動家の仲間からNTDTVのことを知り、NTDTVのウェブサイトにアクセスして放送を視聴している。大陸の国有テレビ局は情報統制されており、NTDTVのようなオープンさはない。中国大陸では、NTDTVを視聴するものは、反体制者のみではなく、一般市民もいるという。

同紙によると、NTDTVは中国の民主活動家のプラットホームにもなっている。中国人反体制民主活動家・魏京生氏と人権弁護士・高智晟もNTDTVの支援者であるという。

資金の由来

こうしたメディアについて常に問われるのは、その資金の由来。中国大陸当局の攻撃的な言い方では、これらのメディアは大陸の政敵である台湾または他の団体からから資金を提供されていると見ている。

WSJ紙の報道によると、シカゴにある台湾経済文化事務所の代表チャールズ・リーは、中国大陸側の見方を否定した。

新唐人テレビ局によると、テレビ局の資金は、主に個人からの寄付により構成され、台湾政府からの資金はもらっていないという。

ニューヨークで育った中国系米国人女性ケリー・洪さんは、テレビ局設立の資金集めの仕事を担当した。女性服ビジネスを営む洪さんも、法輪功学習者である。民主活動家や台湾の法輪功学習者らが無料で番組制作に従事した。米国在住の中国人個人からいくつの大きな寄付が贈られ、主に衛星とオフィスの賃貸に使用しているという。

年収10万ドル以上の向さんは、毎年自分の収入から1万ドル以上を使って、新唐人テレビ局ワシントン支局の運営に充てている。昼間の仕事以外、無償で毎晩5、6時間を使って自分が担当する番組の制作と報道などに投入しているという。

向さんのような個人からの寄付は、テレビ局の収益の7割以上を占めるという。新唐人テレビ局の社長李(王宗)さんによると、テレビ局にとって資金は常に頭の痛い問題であるという。広告による収益は上がっているが、中国当局の嫌がらせによりスポンサーらの資金援助だけでは、新唐人の支出費用を賄えない。最近、新唐人は視聴者から寄付を集めるキャンペーンを実行しているという。

法輪功学習者が運営するもう一つの主要メディア、大紀元時報によると、中国語版大紀元の費用は主に広告収入でカバーされている。中国語版大紀元の広告収入は、多言語バージョンを支えているという。

永遠に中国共産党に買収されないメディア

法輪功学習者が運営する国際メディアに関する、WSJ紙の報道について、大紀元時報総編集長の郭軍さんは「永遠に中国共産党に買収されないメディア」と自紙の立場を表明した。郭編集長によると、大紀元は設立して以来、わずか数年で国際社会に影響力のある中国語メディアグループに発展した。紙面メディアが電子メディアに追撃され経営難に直面する現代、大紀元時報は海外で発展し続け、国際メディア市場ですでに足場を築いた。現在、米国、カナダ、台湾、香港とオーストラリアで日刊紙を発行し、英文、フランス語、ドイツ語、日本語、韓国語、ヘブライ語、ロシア語など十数言語バージョンも発行しているという。

(報道・肖シンリ)
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