花も恥らう傾国の美女 楊貴妃

【大紀元日本9月30日】楊貴妃は名を楊玉環という。開元7年(719年)満州永楽(現在の山西永済)の生まれで、父は蜀の国(現在の四川省)で司戸(しこ)の職にあった楊玄琰。

開元23年(735年)、楊玉環は16歳で玄宗皇帝の息子・寿王に嫁いだ。ところが、偶然にも、740年秋、宦官・高力士に連れられて、長安郊外の温泉保養地・温泉宮(華清池)に出かけた際、玄宗に見初められた。楊玉環の魅力の虜となった玄宗は、息子の嫁である彼女を何としても手に入れたいと考えた。そこでまず、彼女を道観(道教の寺)に入れて尼にさせ、太真と名づけて、剃髪をさせずに修行させた。そして、5年後の745年、玄宗は彼女に女官の最高位である「貴妃」の称号を与えて後宮に迎え入れたのである。楊玉環を「楊貴妃」と呼ぶのはそのためである。

この時、楊貴妃はすでに27歳になっていた。しかし、彼女の容貌は衰えることなく、詩人白居易は『長恨歌』の中で彼女の美しさを次のように形容している。

廻眸一笑百媚生(瞳を巡らせて微笑めば、何とも言えぬ艶かしさが生まれ、)

六宮粉黛無顔色(美しく化粧した大勢の女官たちも平凡な女性に見えてしまう)

楊貴妃の美しさを表すこんな逸話もある。

楊玉環は大奥に選ばれた後、故郷が恋しくて、気晴らしのためによく花園を散歩した。ある日、彼女が花に手を触れると、どの花も恥ずかしくて頭(こうべ)を垂れた。このことが広く伝わり、それ以来人々は彼女の美しさを「羞花(花も恥らう)」という言葉で喩えるようになったと言われる。中国で美人を形容する諺に「沈魚落雁,閉月羞花」というのがあるが、この「羞花」とは楊貴妃を指しているのである。(ちなみに、沈魚=西施、落雁=王昭君、閉月=貂蝉)

楊貴妃はその美しさゆえ、玄宗皇帝の寵愛を一身に受け、大奥での地位はこの上ないものとなった。しかも、彼女のおかげで、彼女の一族も重用され、楊家は一時期隆盛を極めた。まず、楊貴妃の一番上の姉が韓の国の夫人に封ぜられ、三番目の姉が虢(かく)の国の夫人に、そして八番目の姉が秦の国の夫人に封ぜられた。さらには、賭け事を好む従兄の楊国忠までも官吏に封ぜられ、しかも楊貴妃との関係をいいことに、朝政を牛耳って、悪事ばかり働いた。

それまで開元の治と呼ばれる善政をしていた玄宗皇帝は、楊貴妃を迎えて以来、酒色に溺れ、それに加えて、楊氏一族の跋扈(ばっこ)と横行によって、政治は腐敗を極めた。楊貴妃が「傾国の美女」と言われる所以である。

臣民たちは不満の目を楊氏一族に向けた。天宝14年(756年)、早くから謀反を企てていた安禄山は、楊国忠を排除することを理由に武装反乱を起こし、破竹の勢いで、まっすぐ長安を目指した。そこで、玄宗皇帝はやむなく混乱の中で楊貴妃を連れて蜀に逃亡することになった。楊国忠も一緒であった。途中、馬嵬(ばかい)(現在の陝西興平西)まで来た時、護衛の兵士たちが進むのを止めた。彼らは、今回の戦乱の原因は楊貴妃と楊国忠にあるので、二人を死刑に処するべきだと要求したのである。

玄宗皇帝は、安禄山の反乱の原因は確かに楊国忠にあるので、彼は死刑にすべきだが、楊貴妃には罪がないので赦免すべきだと考えた。しかし、すでに兵士たちの信頼を失った玄宗はもはや彼らの不満を抑えることはできなかった。

結局、玄宗は如何ともしがたく、楊貴妃に白い絹布を一本渡して、梨の木の下で首をつらせたと言われる。そのときのことを白居易は、『長恨歌』の中で次のように感嘆している。

六軍不發無奈何(六軍は前へ進まずどうすることもできない)

宛轉蛾眉馬前死(美しい楊貴妃は皇帝の馬前で死んでしまった)

享年わずか38歳であった。

ただ、楊貴妃の死について、実のところはよく分かっておらず、一説には、彼女は安禄山の乱を逃れて、阿倍仲麻呂と共に日本にやってきて隠棲したとも言われており、現に山口県長門市油谷町には楊貴妃のお墓がある。

関連記事
寒い季節こそ、ゆったり過ごし心身を整えるチャンス。睡眠や食事、メンタルケアで冬を快適に楽しむ方法をご紹介します。
50年以上前から次世代の食料として研究されてきたオキアミ(プランクトン)。クジラなどの海洋性生物にとっては生存のための原初的な存在だ。そのオキアミからとれるオメガ3が注目されている。本文にあるようにオメガ3は人の健康にとっても有益なものだ。クリルオイルは、オメガ3と抗酸化成分が豊富で人気のある健康補助食品。フィッシュオイルに比べてコストが高い点が難点だが……
仏に対抗しようとした調達が、暗殺未遂や陰謀を重ねた末、地獄に堕ちるまでの報いの物語。
「犬に散歩される」気の毒な飼い主たち、笑っちゃってゴメンの面白動画→
過度な運動や減量で陥りやすい「低エネルギー可用性」。エネルギー不足が体に与える影響とその対策について、専門家のアドバイスを交え解説します。