【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

自分に大声で話しかける利点 心理学者の解説

精神的に不安定な人が独り言を言っているのを見かけることがありますが、独り言を言う人全てが精神疾患を抱えているわけではありません。実際、心理学者によると、自分に大声で話しかけることは正常で、多くの利点があるとのことです。

アメリカのオッターバイン大学の認知心理学教授、ロバート・N・クラフト(Robert N. Kraft)氏は、ウェブサイト「Psychology Today(今日の心理学)」で、自分に大声で話しかけることの利点について分析しました。

クラフト氏は、子供の頃から独り言を好んでいたと書いています。当時、他の人がそうしているのを見たことがなかったので、自分に話しかけることはおかしく、嫌われる行為だと思っていました。しかし、大学に入ってから、他の人も独り言を言うことに気づきました。その後、心理学の教授として、独り言の普遍性と有用性について観察しました。

彼は、内なる独り言が実際に非常に一般的で、私たちが目覚めている時間の大部分を占めていると指摘しています。私たちは内なる声を思考の主要な形態として受け入れていますが、それを口に出すことは少し奇妙に感じられることが多いです。

興味深いことに、書面で自分と対話すること(例えば日記を書くこと)は受け入れられており、むしろ奨励されています。これは私たち自身との対話を外在化した形式で、私たちの健康に有益です。

したがって、独り言というやや制約の少ない行為を、内なる声を外在化する健康的で肯定的な方法として見なすことには理由があります。以下は、いつどのように大声で独り言を言って自分を助けるかについての説明です。

●パフォーマンスを向上させたい時

活動が始まる直前に大声で独り言を言うことで、パフォーマンスが向上します。例えば、バスケットボール選手が試合前に自分の動きを大声で言うと、より良いパフォーマンスを発揮します。また、アーティストがパフォーマンス前に積極的な独り言を表現すると、モチベーションが上がります。

バスケットボール選手が試合前に大声で独り言を言うことで、パフォーマンスが向上することがわかっています。写真は2023年9月5日、バスケットボール・ワールドカップ準々決勝、アメリカ対イタリア戦(Ezra Acayan/Getty Images)

 

●新しい情報を学ぶ時

難しい資料を学ぶ際、頭の中で考えていることを大声で読み上げることで、参加度や学習の楽しさが増すことがわかっています。以前、看護学を学ぶ学生を対象に行われた研究では、大声で話すことが臨床推論スキルの向上を促進し、これらのスキルを学ぶ満足度も高めることが示されました。

●不安を感じたり新奇な体験をしたりする時

声に出して自分に話しかけることは、驚くべき出来事や、対人関係の問題、病気などの困難に対処するのに役立ちます。

一人旅や登山などの活動をする人は、新しい環境で独り言を言うことで、その場をより理解しやすくなり、自己コントロールもしやすくなることに気づくでしょう。

●過去の出来事を処理する時

恥ずかしい社交的なやり取りや落胆するような学業成績など、落ち込むような状況を経験した後、大声で独り言を言うことで、後悔をより効果的に克服し、自己批判を減らすことができます。

●複雑な活動を行う時

声に出して独り言を言うことで、家具を組み立てたりボタンを縫い付けたりするなど、いくつかの手順が必要なタスクを実行する際に集中力を維持できます。例えば、ボタンを縫い付ける際に、「針を穴に通して、指に気をつけて」と自分に言い聞かせることができます。

声に出して独り言を言うことは、フィードバックや建設的な批評、行動の強化にもつながります。

家具を組み立てる男性(Shutterstock)

 

●内なる対話をモニタリングする時

「否定的な内なる自己会話」は有害であり、「否定的な外なる自己会話」も同様です。しかし重要なのは、声に出して言うことでネガティブなセルフトークがより明確になり、自分のネガティブさに気づき、それを修正しやすくなることです。これにより、セルフトークのメリットが最大限に発揮されます。

●自己距離化(self-distancing)に役立つ時

自己距離化とは、自分の行動や状況を第三者の視点から見ることを指します。代名詞「あなた」や自分の名前を使って大声で独り言を言うことは、自己距離化を促進し、思考、感情、行動を調整する能力を高めるのに役立ちます。

例えば、あなたの名前がエミリー(Emily)だとすると、自分の感情的反応を疑問に思う時、「エミリー、なぜあなたはそのように感じているの?」と自問することができます。

もし代名詞「私」を使って自分と会話すると、話す自己と聞く自己が絡み合ってしまい、自己距離化を促進し、第三者の視点から自分を見ることが難しくなります。

以前の研究では、参加者が公開スピーチの前に独り言を言う際、自分の名前や「あなた」と言った人の方が、「私」と言った人よりもパフォーマンスが良かったことが分かっています。また、自分の名前や「あなた」と言った人は、スピーチ後に欠点について自己批判することが少なく、欠点について考える時間も少なかったです。

 

(翻訳編集 里見雨禾)

陳俊村