「見つけられなかったダニこそが、最も危険なダニです」と、アメリカテネシー大学の医療昆虫学教育専門家アンジェラ・タッカー氏は語ります。
春が訪れ、夏が近づくにつれて、屋外で過ごす時間は増えていきます。それに伴い、誰もが避けたい厄介な存在であるダニにさらされる機会も増えます。
ダニは単なる不快な害虫ではありません。深刻な病気を媒介することがあり、アメリカでは過去20年間でダニ媒介性疾患の症例数が2倍以上に増加しています。さらに、ダニの活動シーズンは年々長くなっています。幸いなことに、ダニに刺されるのを防ぐ方法は数多くあります。
ダニによる被害は現実の脅威
すべてのダニに注意が必要です。
「ダニは病原体を媒介します。人を刺すあらゆる種類のダニが、致命的あるいは命に関わる病原体を伝播する可能性があります」と、カナダ・ノバスコシア州のアカディア大学で生化学准教授を務め、ダニ研究の第一人者としてダニ研究室を運営するニコレッタ・ファラオーネ氏はエポックタイムズに語りました。
ファラオーネ氏によれば、ダニが特に危険である理由として、多くの人が見落としている点があります。それは、ダニが複数の病原体を同時に保有しており、それらが互いに作用し合うことで治療を複雑にすることです。ダニは細菌、ウイルス、原虫(単細胞の寄生生物)を媒介し、それぞれ異なる薬剤による治療が必要になります。
また、危険性は居住地や職場、レジャー活動を行う場所によっても異なります。地域ごとに生息するダニの種類や保有する病原体が異なるためです。自分の地域にどのようなダニが生息しているか分からない場合は、地域の保健当局やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のダニ監視マップを確認するのがよい出発点になるとタッカー氏は述べています。
ダニの基礎知識
ダニは昆虫ではありません。8本脚を持つクモ形類であり、クモやダニ類、サソリの仲間です。飛ぶことも跳ぶこともできず、ほとんど目が見えません。
このように限られた能力しか持たないにもかかわらず、なぜ庭に数分いただけで何十匹ものダニが体に付着するのか、不思議に思うかもしれません。
「基本的には、ダニは私たちの匂いを感知できるのです」とファラオーネ氏は言います。「周囲で何が起きているかを匂いによって察知します。また、熱や湿度を検知するセンサーも持っています」
ダニは私たちが吐き出す二酸化炭素を感知し、体臭を嗅ぎ取り、体温も察知できます。
ただし、ダニは付着する前に体を這い上がり、皮膚が露出した場所を探す時間が必要です。病原体の伝播は通常、付着後24〜48時間の間に起こるため、その時間内に徹底した身体チェックを行えば、大きな違いを生み出せます。
身を守る方法
最初の防御策は、外へ出る前から始まります。つまり、身に着けるものです。
衣類
ダニに刺されないための最も簡単で安全かつ効果的な方法の一つは、屋外で着用する衣類です。特に森林や背の高い草地、低木の茂みなど、ダニが好む環境では重要です。
長袖、長ズボン、靴下、つま先が覆われた靴を着用することで、ダニと皮膚の間に物理的な障壁を作れます。ズボンの裾を靴下の中に入れることは見た目の点数こそ高くありませんが、この8本脚の厄介な生物から身を守るための追加の防御になります。また、明るい色の服を選ぶとダニを見つけやすくなり、取り除くのも容易です。
忌避剤
市販されている代表的な化学的ダニ忌避剤には、DEET(ディート)、ピカリジン、ペルメトリンの3種類があります。ただし、それぞれ作用は異なります。ダニを殺すもの、寄せ付けないもの、宿主を見つける能力を妨げるものがあります。使用する際は、効果とリスクの両方を考慮することが大切です。
DEET(ディート)
DEETは最も広く使用されている忌避剤で、アメリカで販売されるダニ忌避製品の80%以上を占めています。DEETはダニを殺すわけではなく、人間を含む宿主を見つける能力を妨げます。最大限の効果を得るために推奨される濃度は20〜30%で、効果は約8時間持続し、その後は再塗布が必要です。
しかし、DEETにはリスクもあります。世界中の水系で最も頻繁に検出される化学物質の一つであり、水環境において長期間残留する低濃度汚染物質として作用することが研究で示されています。特に子どもは影響を受けやすく、DEETへの曝露量が多い子どもほど性ホルモン濃度が低く、骨量も減少していることが研究で確認されています。
アメリカ環境保護庁(EPA)はDEETを子どもにも安全としていますが、一部の情報源では子どもへの使用は慎重に行うべきであり、妊婦は避けるべきで、衣類の下には使用しないよう推奨しています。また、アニマル・ヒューメイン・ソサエティ(動物保護団体)によると、ペットへの使用は絶対に避けるべきです。
ピカリジン
ピカリジンは、ブラックペッパーに含まれる天然成分ピペリンを模倣して作られた合成忌避剤です。ダニや昆虫、ツツガムシを寄せ付けませんが、殺すことはありません。ピカリジンは比較的新しい製品で、アメリカでは2005年から販売されています。一方、ヨーロッパやオーストラリアでは1998年から使用されており、最も人気の高い忌避剤となっています。
皮膚にも衣類にも使用でき、スプレー、液体、エアゾール、ウェットシートなどさまざまな形態で販売されています。ダニに対する効果持続時間がDEETの約8時間に対して約12時間と長く、毒性も低いため、DEETの代替として選ばれることがよくあります。
ピカリジンはEPAによって、使用方法を守れば安全と認められています。ただし、誤って口に入るのを防ぎ、目を保護するため、使用後は必ず手を洗ってください。
ペルメトリン
ペルメトリンは忌避剤ではなく、ダニを接触によって殺す殺虫剤です。
衣類や靴、アウトドア用品に使用し、皮膚には絶対に塗布しないでください。非常に高い保護効果があります。
2020年の研究では、ペルメトリン処理された衣類を着用した屋外労働者は、未処理の衣類を着用した人と比べてダニに刺される回数が65%少なかったことが分かりました。
アメリカではペルメトリン処理済みの衣類が販売されています。実際に、ペルメトリン処理されたアメリカ陸軍戦闘服は2013年以降、すべてのアメリカ陸軍兵士の標準装備となっていますが、軍服へのペルメトリン使用自体はそれ以前から行われていました。これらの制服はダニだけでなく、蚊やツツガムシ、ハエも寄せ付けません。
ペルメトリン処理された衣類を使用する場合は、他の洗濯物とは分けて洗ってください。
また、濡れた状態のペルメトリンは猫に対して非常に有毒です。猫を飼っている家庭では、衣類や装備に処理する際に十分注意が必要です。
ペルメトリンが内分泌系(ホルモンを分泌・調節する体の仕組み)に影響を与える可能性についても懸念があります。ある研究では、処理済み衣類を着用する屋外労働者の尿からペルメトリンが検出されました。濃度はEPAや世界保健機関(WHO)の安全基準を下回っていましたが、低濃度でも健康への影響が生じる可能性は否定できません。
エッセンシャルオイル
より自然な方法を求める人にとって、一部のエッセンシャルオイルは有望な選択肢です。最も研究が進んでいるのはレモンユーカリです。ファラオーネ氏の研究室による最近の研究では、レモンユーカリ精油が、DEETを含むダニ忌避スプレーと同等の効果を示しました。対象となったのは、ライム病を媒介するクロアシマダニと、ロッキー山紅斑熱を媒介するアメリカイヌダニの2種です。特定の布地では、その効果が数週間持続しました。
効果が確認されている他のオイルには、クローブバッド(チョウジのつぼみ)、クリーピングタイム(ほふく性タイム)、レッドタイムがあります。クリーピングタイムとシトロネラの組み合わせは、ある研究で91%の忌避効果を示しました。
また、タイム、ローズマリー、オレガノには、ダニの幼虫を殺したり、雌ダニの繁殖を防いだりする可能性が示されています。
タッカー氏は、レモンユーカリやシトロネラのエッセンシャルオイルがダニに有効であることは証明されているものの、それらを含むすべての製品が同じ効果を持つわけではないと注意を促しています。
「製品にこれらのオイルのいずれか、または両方が含まれているからといって、その製品自体が効果的であるとは限りません」とタッカー氏は述べています。必要に合った忌避剤を選ぶために、製品名や有効成分を検索できるEPAのツールの利用を勧めています。
衣類にスプレーするのは良い方法です。ダニは通常、まず衣類に付着してから皮膚へ移動するためです。また、植物由来の天然成分は、自身や環境への潜在的な毒性を減らすことにもつながります。
最も重要なダニチェック
屋外で過ごした後、特に森林や背の高い草地、低木の茂みを歩いた後は、全身をチェックしてください。膝の裏、脇の下、鼠径部(足の付け根)、頭皮、皮膚のしわ部分は特に念入りに確認しましょう。
最初のチェックを終えたら、屋内に戻ってから2時間以内にシャワーを浴びてください。まだ付着していないダニを洗い流し、付着しているダニにも気付きやすくなります。
「シャワーを浴びることで、皮膚のしわ、脇の下、脚の間、頭皮、体の前面と背面にいるダニを確認しやすくなり、取り除く助けにもなります」とタッカー氏は言います。「背中側を見るために鏡を使ってください」
ダニを取り除く際には、ピンセットではなく専用のダニ除去ツールを使用することが重要だとファラオーネ氏は述べています。これにより、皮膚に食い込んだ口器まで確実に除去できます。こうしたツールはダニの体の下に滑り込ませて持ち上げるため、ダニ全体を損傷なく取り除けます。一方、ピンセットでは口器や頭部だけが皮膚内に残る可能性が高く、強くつまむことで病原体を体内へ押し込んでしまう恐れもあります。
衣類からダニを取り除く方法
屋外活動後にダニを家へ持ち込まないための方法の一つは、帰宅後すぐに衣類を脱ぎ、すべて乾燥機に入れて高温で乾燥させることです。ファラオーネ氏によると、ダニは熱と乾燥に弱く、水分を失いやすいため、直射日光も好みません。乾燥機は熱と乾燥によってダニを死滅させます。
洗濯機だけでは十分ではありません。
「ダニは私たちと同じように呼吸しているわけではないため、洗濯機の洗浄サイクルを生き延びることが可能です」とタッカー氏は指摘します。
家庭用品も役立ちます。
「衣類に粘着式の衣類クリーナー(コロコロ)をかけてください」とタッカー氏は言います。「屋外へ持って行くのも良い考えです。ダニを素早く取り除くのに役立ちます。もし持っていなければ、ガムテープでも十分効果があります」
ダニ対策のために、アウトドアの習慣を大きく変える必要はありません。適切な服装を選び、忌避剤を慎重に選択し、念入りに身体を確認し、帰宅後すぐにシャワーを浴び、衣類を高温で乾燥させる――そのような習慣を続けるだけでも役立ちます。ダニは確かに身近に存在していますが、これで避ける方法を知ることができました。
(翻訳編集 井田千景)
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