ハエ、蚊、ゴキブリ、ダニ、ノミ、南京虫、スズメバチ、ムカデなど。
夏は、人を困らせる害虫が大量に発生する季節です。
農地であれば駆虫用の農薬が散布されるところですが、通常の住宅の場合は、雑貨店やホームセンターなどで市販されている家庭用殺虫剤が多く使用されるでしょう。
その際は、殺虫剤のラベルに明記されている注意事項を守って、適度に使用するならば大きな問題は起きないはずですが、それでも化学薬品ですので、人体に健康被害を及ぼさないよう十分注意する必要があります。
ここで私たちは、一つの事実を思い起こさなければなりません。
農業従事者のなかで農薬や殺虫剤を頻繁に使用する人は、そうでない人に比べて、神経変性疾患であるパーキンソン病の発病率が明らかに高いのです。
しかも、使う農薬の量が多く、また種類が多いケースほど、パーキンソン病の発病率が高いことが分かっています。その具体的な関連性はともかく、環境因子である農薬が主要因であることは疑いありません。
たとえそれが家庭用殺虫剤だとしても、過剰使用しないよう十分注意すべきであることは言うまでもありません。
医学専門誌『International Journal of Epidemiology』に、2013年に掲載された研究によると、「家庭用殺虫剤を頻繁に使用すると、パーキンソン病の発病率が47%増加する」と言います。
特に有機リン剤を含む殺虫剤を多く使用すると、パーキンソン病の発病率は71%増加するとされています。同研究の調査対象である米国では、今も多くの家庭用殺虫剤に有機リン剤が含まれています。
日本では、1950年代に有機リン剤を含む殺虫剤が普及しました。現在では、有機リン剤は一部の農薬に使われているものの、家庭用殺虫剤は毒性の低いピレスロイド系殺虫成分(除虫菊エキス)が中心になっています。
台湾でも、有機リン剤を含む殺虫剤は主として農薬に使用されています。
市販の家庭用殺虫剤には、ピレスロイド系あるいはピレトリン系の殺虫成分が使用されることが多く、いずれも有機リン剤より毒性は低くなっています。
ただし、いくつかの研究によると、ピレトリン系殺虫剤による長期的影響は否定できず、神経認知機能を低下させる可能性があると言います。
結論としては、日本でも台湾でも、家庭用殺虫剤の使用量がよほど過剰でなければ、パーキンソン病のリスクを高めることはないでしょう。
とは言え、あくまでも1~3回スプレーする程度の常識的な使用量にとどめるべきであり、出てきたゴキブリが完全に死ぬまで、床に「水たまり」ができるほど薬剤を噴霧する必要はありません。
ただし、その際にも、いくつかの注意点があります。
室内で飼っている猫や小型犬は、殺虫剤をスプレーする前に別の部屋へ移しましょう。
室内の蚊を駆除するため、殺虫剤を空間噴霧した場合は、窓とドアを閉めて1時間ほど人が入室しないようにします。
1時間経ったら窓とドアを開け、新しい空気を部屋に入れます。その際、蚊が再び入ってはいけませんので、サッシには網戸をつけておくと良いでしょう。
ゴキブリなどに直接スプレーした場合、その場所に薬剤がかたまって散布されていますので、シミにならないうちに水と雑巾で拭き取っておきます。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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