年齢を重ねるとくしゃみ・咳・ジャンプで尿が漏れるのはよくあることですが、避けられないわけではありません。
尿失禁の多くは、横隔膜と骨盤底筋の相互作用に起因します。意識的な呼吸で横隔膜を再び活性化することで、これらの筋肉を強化し、コントロールを取り戻すことができます。
骨盤底の専門家でピラティス・マスターインストラクターのジャナ・ダニエルソン氏によると、骨盤底の健康における横隔膜の役割は、ローマ建築のアーチの要石のようなものです。コア(体幹)を「シックスパック」のような一面的なものではなく、缶のような構造として考えるとわかりやすいとダニエルソン氏は言います。缶の上部にある強い横隔膜は過剰な下方圧力を防ぎ、膀胱コントロールを支える骨盤底筋と連動して、真空のような収縮・弛緩の協調作用をもたらします。
「横隔膜が呼吸のしくみのなかで適切に動いているとき、骨盤底筋はそれに連動します。両者は一緒に働くのです」とダニエルソン氏はエポックタイムズに語りました。
横隔膜が十分に使われないと、骨盤底筋は張りを失います。
首の筋肉が横隔膜の代わりになるとき
骨盤底には膀胱・子宮・腸を支える主要な筋肉が14個あります。これらの筋肉は、くしゃみや咳をしたときに素早く収縮して尿や便を抑えるように設計されており、トイレに行くときには弛緩します。
しかし、出産・慢性便秘によるいきみ・過体重による圧力・更年期などのホルモン変化といった要因で、これらの筋肉は弱くなります。また、姿勢の問題で横隔膜が適切に使われていない場合も弱くなるとダニエルソン氏は指摘します。
骨盤底筋が弱くなる原因の多くは、スポーツシューズや子ども靴を含むほとんどすべての靴の高いヒールだとダニエルソン氏は言います。これにより体重が前寄りになり、体幹の構造が崩れ、呼吸のしくみが変わります。お腹が突き出て反り腰になり、内臓がずれて首の筋肉に呼吸を頼るようになりますが、これは長続きしません。
理想的には、体重の約60%がかかとにかかっている状態がよいとされます。悪い姿勢は、横隔膜による呼吸を首の斜角筋(上部肋骨を上げる筋肉)や胸鎖乳突筋(胸骨と上部肋骨を上げる大きな首の筋肉)に移行させます。
「首のこれらの小さな筋肉は仕事をしようとしますが、すぐに疲弊します」とダニエルソン氏は言います。「あくまで脇役であり、主役ではないのです」
また、「テックネック」(肩と脊椎が丸まる姿勢)は体幹のスペースを狭め、呼吸を首の筋肉に頼らせるため、横隔膜の使用を減らす悪循環を生むとダニエルソン氏は述べました。
過緊張した骨盤底筋の問題
筋肉の弱さだけが尿失禁の原因ではありません。弛緩できず常に収縮した状態の骨盤底(過緊張性骨盤底筋)は、骨盤痛を持つ女性の半数以上に影響し、尿失禁を悪化させる可能性があります。
過緊張性骨盤底のその他の原因には、慢性ストレス・息を止める癖や浅い呼吸・骨盤筋の外傷や損傷・慢性痛・悪い姿勢・長時間の座り仕事などがあります。
「締めたり、内腿を寄せたり、足を組んだりするのは正しいと思われがちです。確かに少しは助けになりますが、緊張した筋肉は弱い筋肉なのです」と、骨盤健康コーチのキム・ヴォプニ氏はエポックタイムズに語りました。「緊張した筋肉は十分な力を発揮できず、素早く反応できないのです」
慢性的に収縮した骨盤底筋は可動域が制限され、エネルギーを多く消費するため疲労しやすく、尿漏れを防ぐために十分素早く反応できないとヴォプニ氏は述べました。
横隔膜の強さが骨盤底を支える
横隔膜を使った呼吸を多く行うほど、体幹は自然に強さ・協調性・安定性を高めます。
息を吸うと横隔膜が収縮して下がり、広がって平らになり、骨盤底筋が弛緩して下方に伸びます。息を吐くと横隔膜が弛緩して上がり、骨盤底筋が収縮しながら上方に持ち上がります。
強い体幹は、座位から立つ動作・喘息様の呼吸・くしゃみ・過呼吸といった腹圧の上昇を管理でき、これらには素早い収縮が必要な速筋線維の骨盤底筋が尿漏れを防ぐとヴォプニ氏は言います。
「理想的には、これらはすべて無意識のうちに起こります」とヴォプニ氏は述べました。
これは目に入ったものを瞬きで防ぐ反射や、つまずいたときに足首が体を安定させる反射と同じように機能します。
呼吸法とケーゲル運動の効果
呼吸法は骨盤底筋運動と比較しても優れた面がありますが、理想的にはこれに置き換わるものではありません。
医学誌『Journal of Bodywork and Movement Therapies』に掲載されたパイロット研究では、6週間後、横隔膜呼吸法を行った女性のほうがケーゲル運動を行った女性よりも、切迫症状による苦痛が少なかったことがわかりました。
ケーゲル運動は男性も女性もできる骨盤底筋の収縮運動です。運動中に臀部・内腿・腹筋を締めないことが重要です。骨盤底理学療法士に相談すれば、正しい筋肉を意識的に使うためのサポートを受けられます。
参加者は毎日30回の横隔膜呼吸を行います。ゆっくり息を吸ってお腹を空気で膨らませ、胸をできるだけ動かさずに横隔膜を下げ、息をゆっくり吐きながら横隔膜を上げます。
同誌に掲載された系統的レビューでは、骨盤底筋トレーニングが筋力向上では低圧呼吸法より優位でしたが、呼吸法は日常生活活動・精神的な健康・社会的交流・身体機能の改善に効果的でした。
低圧呼吸法とは、すべての空気を吐き出し、口と鼻を閉じて息を吸わずに肋骨を広げ、体内に真空を作って横隔膜を持ち上げ、姿勢を改善する方法です。
「骨盤底筋トレーニングに全身的なアプローチを取り入れ、呼吸と姿勢を改善すれば、腹圧の管理に役立ちます」とヴォプニ氏は言います。「しかし呼吸と姿勢を改善せずにケーゲル運動だけを行っても、効果は限られます」
自分の呼吸パターンを知る方法
自分が首呼吸か腹式呼吸かを簡単に確認するには、片方の手を胸骨に、もう片方の手をへそに当てて、新鮮なアップルパイの香りを嗅ぐように息を吸うとよいとダニエルソン氏は言います。腹式呼吸が優位な場合、腰の前面・背面・側面が広がるのを感じます。
おへそに当てた手のほうが大きく動けば、横隔膜を正しく使えている証拠です。
首の筋肉で主に呼吸している場合、解決策はシンプルです。1日3回(食事の前が覚えやすい)、8〜10回の意識的な腹式呼吸を行いましょう。ダニエルソン氏によると、鼻からパイの香りを嗅ぐように息を吸い、口から鏡が曇るようにゆっくり息を吐きます。
横隔膜を使った呼吸は、骨盤底筋を整えるだけでなく、呼吸効率を高め、神経系を「休息と消化」の副交感神経モードに移行させ、骨盤底筋の過緊張を和らげます。
「この呼吸法は、横隔膜にとっての腕立て伏せのようなものです」とダニエルソン氏は言います。
骨盤底筋も他の筋肉と同じように鍛えるべき理由
産婦人科医で機能医学センターの創設者兼所長のジョエル・エヴァンス博士は、女性は生涯を通じて骨盤底の弱さや、出産による神経損傷に伴う筋肉協調性の問題に直面する可能性があると指摘しました。
エヴァンス博士は、ケーゲル運動や呼吸を含む体幹強化運動が骨盤底筋を正しく収縮させる訓練に役立つとしています。特に女性はこれらの筋肉を意識的に強化する必要があるとエポックタイムズへのメールで述べました。
「これは体のすべての筋肉に当てはまりますが、骨盤底筋は特に見過ごされがちです」とエヴァンス博士は述べました。
(翻訳編集 日比野真吾)
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