ホルムズ海峡をめぐる世界経済(shutter stock)

優位性から負の遺産へ ホルムズ海峡は今やイラン最大の弱点

半世紀にわたり、ホルムズ海峡はイランにとって最大の戦略兵器とみなされてきた。しかし現在、それは同国を締め付ける「首縄」と化している。エネルギー需給の構造変化により、ペルシャ湾における強制力の均衡は大きく転換した。

イランの抑止力は地理的優位に基づいていた。1980年代の「タンカー戦争」から2010年代の制裁対立に至るまで、世界の海上輸送石油の約2割、液化天然ガス(LNG)も同程度が同海峡を通過する。軍事衝突がイラン政権を脅かせば、海峡封鎖により供給が途絶し、原油価格が急騰、西側消費国、とりわけ当時世界最大の輸入国であったアメリカに打撃を与える。これが従来の構図だった。

この海峡は、テヘランにとって保険であり、最強の交渉カードでもあった。自国以外の輸送を遮断できるとの前提に立っていたが、実際には封鎖の脅しそのものが、同国の最大の弱点を露呈していた。完全封鎖がもたらす最も深刻な打撃は、イラン自身に及ぶ。

▶ 続きを読む
関連記事
中国が進める「軍民融合」の実態を解説。商船をミサイル艦へ転換する「中大79」や、戦車を輸送する大型フェリー、さらに「海上民兵」という民間を装う準軍事組織の脅威など、偽装される海上戦略の深層に迫る
世界保健機関(WHO)のパンデミック対策の目玉として鳴り物入りで進められてきた「パンデミック協定」の最終合意が、またも合意不達のまま延期となった。この事は何を意味するのか
日本の象徴である富士山の山頂で、中国人観光客が突然、中国国旗を振りかざした。これに対してアメリカ海兵隊員と推測される人物が日本国旗を振り返した事がXで議論を読んでいる。この出来事から現代中国人の言動に大きな影響を与えている中国共産党文化の毒素が現れている
IMFが中国経済の危機を分析。共産主義の統制が壁となり、国民の消費が進まない歪んだ構造を指摘しています。なぜハイテク投資ばかりで生活が楽にならないのか? 中国が抱える「イデオロギーと経済」の矛盾を解説
ホルムズ海峡の混乱により、世界の注目は紅海の入り口「バブ・エル・マンデブ海峡」へ。ジブチで隣接する米中両軍の基地を比較し、輸送ルートの支配権を巡る現状を解説。米国の圧倒的優位と中国の弱点を解き明かす