中国・北京の人民大会堂で、米国の気候変動特使ジョン・ケリーとの会談を前にした中国の外交官王毅 (Photo by Florence Lo-Pool/Getty Images)

王毅外相会見が示す「被害者ナラティブ」と対抗戦略

2026年3月8日に行われた中国の王毅外相による記者会見は、日本にとって極めて危険なシグナルであった。王毅は戦後80年という節目を盾に取り、「日本は反省せず侵略を繰り返そうとしている」と一方的に非難した。さらに、日本の防衛政策について「日本政府は憲法を『掏空(骨抜き)』にしている」と批判し、台湾問題については「完全な内政であり、日本の自衛権行使は違法である」と断言したのである。また、東京裁判を意図的に引き合いに出し、中国こそが戦後秩序の守護者であるかのように振る舞ってみせた。

我々は、これらの発言を単なる「歴史認識を巡る批判」と矮小化してはならない。この背後にあるのは、日本の安全保障政策の根幹である「集団的自衛権」や「平和憲法」の解釈に直接介入し、その国際法上の正当性を根底から剥奪しようとする、極めて高度な「法律戦」と「心理戦」の複合攻撃である。

中国の戦略的意図は明白だ。台湾問題を「内政問題」と強弁することで、日米同盟の抑止力を法的に分断しようとしている。そして、日本がいざ自衛権を行使しようとした際に、それを「侵略の再来」と定義し、自らの反撃を「正当な防衛」と偽装するための口実作りに他ならない。また、「14億人の意志」を強調することで日本国民に「再び戦火に巻き込まれる」という恐怖や無力感を植え付け、政治・経済・メディアに自己検閲を蔓延させようとする「心理戦」の罠も仕掛けられている。

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