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新発見:ジャンクフードは体に悪いだけでなく、記憶力も短期間で低下

アメリカのある大学の最新研究で、高脂肪のジャンクフードを過剰に摂取すると、心血管疾患を引き起こすだけでなく、わずかな期間で脳の記憶回路を混乱させ、記憶力そのものを損なう可能性があることが明らかになりました。研究チームは、この発見が肥満に関連する認知症やアルツハイマー病の予防につながるかもしれないと述べています。

近年、食生活が認知機能の形成に大きく影響していることを示す証拠が増えています。特に、西洋型の高脂肪食は代謝を乱すだけでなく、認知機能にも悪影響を及ぼす可能性があるといわれています。ただし、高脂肪食が脳の認知機能にどのような仕組みで影響を与えるのかについては、医学的にはまだ多くの部分が解明されていません。

アメリカ・ノースカロライナ大学医学部の研究チームは、独自の視点から高脂肪のジャンクフードが脳の記憶中枢にどのように影響し、認知障害のリスクを高めるのかを明らかにしました。この研究結果は、9月11日付の学術誌『Neuron』に掲載されました。

研究では、2つのグループのマウスにそれぞれ「通常の食事」と「高脂肪食」を与え、行動や脳の変化を観察しました。その結果、高脂肪食を与えられたマウスは、わずか4日後には認知機能に異常が現れたものの、感情面では大きな変化は見られませんでした。

さらに詳しく調べると、高脂肪食を摂取したマウスの脳では、海馬の中にある「介在ニューロン(CCK-IN)」が異常に活発化していることが確認されました。この現象は、脳がブドウ糖をうまく取り込めなくなることが原因で起こり、同時に糖の代謝を担う酵素「ピルビン酸キナーゼM2」のリン酸化レベルが上昇していることもわかりました。

海馬は脳の中で記憶をつかさどる重要な部分であり、空間認識や方向感覚にも関係しています。介在ニューロンは、ブドウ糖の吸収を調整する神経細胞で、脳内でエネルギーの使い方をコントロールしています。また、ピルビン酸キナーゼM2はブドウ糖をエネルギーに変えるために欠かせない酵素であり、この働きに異常が起きると脳の代謝機能そのものが乱れてしまいます。

新しい研究では、高脂肪食が認知症やアルツハイマー病の発症要因になりうることが示されています。(Shutterstock)

アメリカ・ノースカロライナ大学医学部薬理学教授であり、神経科学センター主任研究員のファン・ソン博士は大学のニュースリリースで次のように話しています。

「私たちはこれまで、食事や代謝が脳の健康に影響することはわかっていましたが、短期間の高脂肪食が海馬の特定のCCK介在ニューロンを直接乱すとは思っていませんでした」

ソン教授は続けて、「最も驚いたのは、ブドウ糖の供給が減ると、これらの細胞が非常に素早く反応し、その変化だけで記憶力を損なってしまうことです」と語りました。

研究チームは、こうした神経の過剰な活動が海馬の記憶処理の仕組みを乱し、わずか数日間、飽和脂肪を多く含むジャンクフード(チーズバーガーやフライドポテトなど)を食べただけでも起こることを確認しました。これは、ジャンクフードの影響が体重の増加や糖尿病などの代謝異常よりもはるかに早く脳に現れることを意味しています。

興味深いことに、研究チームは、もともと認知障害が見られた肥満マウスに健康的な食事を与え、短期間の断食を行ったうえでブドウ糖を注入すると、脳内のブドウ糖濃度が回復し、過剰に活発化していたCCK-INの活動が鎮まり、糖代謝を担う酵素「ピルビン酸キナーゼM2」のリン酸化も正常化することを発見しました。

そのため、研究者たちは、間欠的な断食などの食事介入によって「ピルビン酸キナーゼM2」の活性を抑え、介在ニューロンの働きを正常化させることで、記憶障害を改善し、長期的な認知機能低下を防ぐことができる可能性があると指摘しています。

研究チームは、「食事による代謝ストレスが海馬の働きを損なう」ことを明らかにし、これまで知られていなかった新しい脳の仕組みを発見しました。また、「介在ニューロン」と「ピルビン酸キナーゼM2」が、肥満や2型糖尿病による認知障害の新たな治療標的になる可能性も示されています。

今後は、ブドウ糖に反応するこれらの神経細胞が、どのように記憶を支える脳波のリズムを乱すのかをさらに調べ、人間でも同様の作用が起きるかどうかを検証していく予定です。また、脳内のブドウ糖代謝を安定させる食事法が、記憶力の保護や認知症・アルツハイマー病の予防に役立つかどうかについても研究が続けられています。

ソン教授は、「この研究は、私たちの食生活が脳の健康に急速に影響を与える可能性があることを浮き彫りにしています。さらに、断食や薬物療法といった早期介入は、記憶力を維持し、肥満や代謝障害に関連する長期的な認知リスクを軽減する可能性があると考えられます」と述べました。

さらに、「長期的に見れば、これらの方法は代謝異常に伴う認知症やアルツハイマー病の負担を軽くし、より包括的な心身の健康を支える手段となるでしょう」とも語っています。

(翻訳修正 華山律)

吳瑞昌