メリーサの父親が突然亡くなった時、悲しみが彼女を飲み込みました。夜中に心臓がドキドキして目が覚め、思考を止めるのが難しい状態でした。絶望の中で、ほとんど意味がないと感じながらも、彼女は毎晩3つの「感謝できること」を書き始めました。
最初は無意味に思えましたが、数週間後には不安が和らぎ、日々が少し明るく感じられるようになりました。感謝が悲しみを消したわけではありませんが、彼女がそれを受け止め、処理する方法は変わっていきました。
科学者たちは今、その理由を解明しようとしています。最近の研究では、感謝は単に気分を良くするだけでなく、ストレスを和らげ、感情の回復力を高め、長期的な心の健康にプラスに働く可能性があり、脳の働き方に変化が生じることも示唆されています。
脳のどこで感謝が生まれるか
新しい神経科学の分野では、感謝がなぜ心を安定させるのかが、より明確になりつつあります。10年以上前の脳スキャン研究では、感謝を感じると感情を管理する脳領域が活性化することが報告されました。
その後の研究も、概ねこの見方を支持しています。2017年の脳画像研究では、感謝の実践が脳の報酬中枢——協力や忍耐などの肯定的な行動を強化する領域——の活動を高めることが示されました。
2022年に高齢者を対象に行われたMRI研究では、感謝テスト(感謝の頻度を問う簡単な質問票)で高スコアの人は、感情反応を形作る扁桃体の構造に微妙な違いが見られました。この結果は、感謝と感情調整、健康的な認知の加齢変化との関連を示唆します。
最近『Social Cognitive and Affective Neuroscience』に掲載された脳画像研究では、感謝を表現すると脳の活動が絆や共感に関連するパターンへと移行し、生物学的なレベルで社会的つながりを支える可能性が示されました。
感謝の影響は、心だけでなく体の深い部分にも及ぶと考えられています。
2023年のメタアナリシス(64のランダム化試験のレビュー)では、感謝エクササイズが単に「気分を良くする」だけでなく、不安・うつ症状の測定可能な低下や、全体的な精神的ウェルビーイングの改善と関連することが示されました。
感謝が脳のストレス応答を再配線する
感謝は気分の問題を超えて、体のストレスシステムにも影響し得ます。
「感謝はストレスを消すわけではありませんが、脳と体がどう反応するかを変えます——生理的ストレスを和らげ、視点を取り戻し、回復力を育てます」と、化学博士号を持つ神経科学者のクリストファー・ミスリング氏はエポックタイムズに語りました。「感謝は報酬やつながりに関わる脳回路を活性化し、ドーパミンやセロトニンの分泌に関与し、ストレスを和らげ、健康や幸福感にプラスに働く可能性があります」
感謝を実践するたびに、脳は生存モードに留まり続けるのではなく、より明確で落ち着いた思考へと移行しやすくなると考えられています。
「感謝は負の思考ループを中断し、脳を生存モードから問題解決モードへ切り替える助けになります」と、ジョンズ・ホプキンス大学でマインド・脳・教育を研究するクリステン・エクレストン氏はエポックタイムズに語りました。
感謝は体の物理的なストレス信号とも相互作用します。一部の研究では、脳が落ち着くことを学ぶとコルチゾールが低下し、自律神経系が安定しやすくなる可能性が示されています。体は絶え間ない闘争・逃走状態から抜け出しやすくなるのです。
集中の力
感謝の影響は、日常生活の中でより実感されやすくなります。マイアミの認定精神科医ノナ・コチャー博士は、他のテクニックではうまくいかない患者に対して、感謝が助けになる場面をよく見ています。
「感謝することを書き留める時間は、ただリストを作るだけではありません——注意を訓練しているのです」と彼女はエポックタイムズに語りました。この実践は、脳がストレスに焦点を当て続けるのをやめ、より肯定的な体験へ意識を向けやすくし、神経系を落ち着かせる助けになります。
感謝を実感しやすくするために、コチャー博士はクライアントにシンプルな感覚の活動を導くことがあります——マグカップの温かさや、ペットが部屋に入ってくる音などです。「小さな感覚の細部が感情を固定し、体が自然に応答し始めます」と彼女は言います。
集中注意は、特に就寝前の数分間、脳が漂い、ゆるやかな遅波活動へ移行する時に強力です。2017年の『Sleep Medicine Reviews』のレビューでは、脳が睡眠へ向かうと、タスク指向の思考からイメージや感情処理へと移行し、難しい感情を処理するのにより開かれた精神状態になり得ると述べられています。就寝前の短い感謝ノートは、脳を穏やかに訓練する方法になり得ます。
「半覚醒の内省状態では、日中には直接向き合えなかった感情を処理するイメージや記憶が浮かびやすくなります」とコチャー博士は言います。その瞬間、日中の強い感情が和らぎ、記憶や体験が圧倒的ではなく、より扱いやすく落ち着いたものになります。
脳を変える感謝実践
感謝は他のウェルネス習慣と同じです。継続して実践すれば、心と体が少しずつ応答し始めます。
脳を感謝の状態に導き、心身に良い影響をもたらし得るシンプルな習慣をいくつか紹介します。
- 1日を感謝の1文で終える:その日の肯定的な面に焦点を当てます。好きな食事や旧友との再会など、シンプルでOKです。
- 静かな反省の時間:感謝文を書いた後、短い内省の時間を取り、次のタスクに移る前にリラックスします。
- 翌朝に昨日の感謝ノートを振り返る:最近の感謝を振り返り、肯定的な記憶を強め、笑顔になった体験を脳に思い出させます。
ジャーナリングに加え、研究者は社会的つながりに関わる実践も勧めています:
- 感謝の手紙を書いて直接読む:人生に肯定的な影響を与えてくれた人に、具体的な感謝の手紙を書き、直接または電話で読みます。研究では、これが幸福感や気分に比較的早く、大きな変化をもたらす可能性が示されています。
- 当たり前と思っているものを一時的に失ったと想像:仕事、ペット、支えてくれる友人など。良いものを「失うかもしれない」と仮想的に考えることで、それがどれほど重要かを再認識します。
- 1日の肯定的出来事を選び、1分間考える:その出来事を脳の感情・報酬中枢に深く刻むため、どこにいたか、匂い、誰がいたか、どう感じたかに焦点を当てます。
ソーシャルメディア投稿で感謝を誘発
肯定的な画像とキャプションの投稿も、感謝の実践になり得ます。研究では、Instagramに1日1枚、キャプション付き写真を7日間投稿すると、若者の感謝が育まれる可能性が示されました。ポジティブは伝染します。責任を持って使えば、ソーシャルメディアは感謝に焦点を当て、他者を鼓舞する手段にもなります。
小さな変化、持続的変化
感謝はメリーサの悲しみを消したわけではありませんが、それと共存し、圧倒されないための方法を与えました。感謝の実践は、感情の応答を管理する脳の部分を活性化させ、負の思考に固執しにくくする助けになったのです。感謝は小さな神経的変化を積み重ね、毎朝、少し楽観的に感じられ、不安が和らぐようになりました。
ストレスと不確実性に満ちた世界で、こうした小さな変化は重要です。
(翻訳編集 日比野真吾)
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