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注意欠陥・多動性障害治療薬と血圧・心拍数の上昇に関する関連性

専門家たちは、薬物療法と行動介入を組み合わせた包括的な治療アプローチについて議論を重ねています。

アメリカでは、特にCOVID-19パンデミック以降、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の薬物使用率が増加しており、特に刺激薬の使用が顕著に伸びています。刺激薬および非刺激薬のADHD薬の処方件数が急増しているのです。

この状況を受けて、ADHD薬の安全性に対する関心が再び高まっています。最近の研究によれば、一般的に使用されるすべてのADHD治療薬が、血圧と心拍数のわずかな上昇を引き起こす可能性があることが示されています。ただし、専門家たちは、こうした生理的な影響については、薬がもたらす大きな利点とバランスを取って判断するべきだと強調しています。

血圧と心拍数の上昇について

The Lancet Psychiatry』に掲載された包括的な分析によると、ADHD薬は患者の血圧を上昇、または低下させる可能性があることが明らかになりました。

研究チームは、102件の臨床試験に参加した22,000人以上の患者データを分析し、刺激薬・非刺激薬のいずれにおいても、心血管系に小さな変化をもたらすことを発見しました。

調査対象となった薬には、アンフェタミン系の刺激薬や、非刺激薬であるアトモキセチン(商品名:Axetra、Axepta、Attera、Tomoxetin、Attentin)、メチルフェニデート(Ritalin、Concerta、Delmosart、Equasym、Medikinet)、ビロキサジン(Qelbree)などが含まれています。これらは、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬に分類されます。

これらの薬は、脳内でノルエピネフリンの再取り込みを阻害し、その濃度を高めることで集中力を改善します。ただし、ノルエピネフリンの増加は交感神経の活動を活発にし、血圧上昇を引き起こす可能性があります。

子どもや青少年では、アトモキセチンにより収縮期血圧が平均1.07mmHg、メチルフェニデートでは1.81mmHg上昇しました。成人では、メチルフェニデートで1.66mmHgから、アンフェタミンでは2.3mmHgの範囲で血圧が上昇しています。

また、ビロキサジンとアトモキセチンは、プラセボに比べて脈拍数の増加とも関連しており、ビロキサジンでは約2.8拍/分、アトモキセチンでは5.6拍/分の増加が見られました。

これらの変化は通常の血圧範囲では大きな懸念とはなりませんが、すでに高血圧を持つ患者がADHD薬を使用すると、さらなるリスクが生じる可能性があります。

一方で、グアンファシン(Tenex、Intuniv)は逆の効果を持ちます。この薬は血圧を下げる目的でも使用され、子どもでは収縮期血圧を2.83mmHg、成人では10.10mmHg低下させる効果が確認されています。

グアンファシンはノルエピネフリンの放出を促進するのではなく、そのレセプターに直接結合して働くことで、集中力を改善するニューロンを活性化させます。同時に血管を弛緩させ、血圧を下げる効果も発揮します。

「医療従事者は、刺激薬だけでなく、すべての薬理学的治療を受けているADHD患者に対して、血圧と脈拍を定期的に監視するべきです」と研究著者は述べています。

ADHD薬には副作用があります。「最も一般的なのは、食欲の低下と入眠困難です」と、ストーニーブルック大学医学部の精神医学教授であり、児童・青年精神医学部門のディレクターであるキャスリン・A・ガランター博士はエポックタイムズに語りました。「そのため、薬を服用する場合は、食事の内容、身長、体重の変化を注意深く観察することが重要です」

ただし、薬物療法だけがADHDの唯一の治療方法ではありません。

ガランター博士は、子どもや青少年のADHD治療においては、まず包括的な評価――患者や親へのインタビュー、教師からの情報収集など――を行うことが重要だと指摘しています。

薬物療法には高い効果が認められていますが、補完的なアプローチも有益であるとされています。例えば、就学前の子どもや、家族が薬の前に行動療法を試したいと希望する場合には、行動療法から始めるのが望ましいケースもあります。

まれな副作用には、気分の変動、成長の抑制、非常にまれなケースでは「心臓がドキドキする感覚」や「失神などの心臓関連の症状」が含まれることもあると、ガランター博士は述べています。

薬物療法と行動的アプローチのバランス

ADHDの最も効果的な治療には、薬物療法と行動戦略、サポート体制、ライフスタイルの見直しを組み合わせる必要があると、ニューヨーク市の「Comprehend the Mind」の神経心理学者でディレクターのサナム・ハフィーズ(Sanam Hafeez)氏はエポックタイムズに語りました。

「ADHDの治療には多面的なアプローチが求められます。一つの方法ですべての人に対応できるわけではありません」と彼女は述べ、アデロールやリタリンなどの刺激薬が、多くの人々の集中力や衝動の抑制、実行機能の改善に役立つケースが多いことを指摘しました。

薬を使用したくない人や、副作用に耐えられない人に対して、ハフィーズ氏はいくつかのエビデンスに基づいた代替手段を提案しています。認知行動療法(CBT)、コーチング、規則正しいルーチン、マインドフルネスの実践、運動などの非薬物的なアプローチでも、症状を効果的にコントロールできます。

「CBTは科学的に最も支持されている非薬理学的治療の一つです。対処スキルを学び、時間管理能力を高め、衝動的な行動を抑えるのに役立ちます」とハフィーズ氏は述べています。

ミズーリ州カンザスシティにある「Tretbar Therapy」の心理療法士、カーステン・トレットバー(Kirsten Tretbar)氏は、CBTと併せてナラティブ療法も用いています。これは、患者が自身の経験の中にある前向きな側面に焦点を当て、別のストーリーを見つけることを促す療法です。

「CBTは、否定的な思考パターンを変えることに重点を置きます」とトレットバー氏は説明します。「一方、ナラティブ療法では、患者が自分の物語を再構築できるよう手助けします」

彼女はまた、ADHDを特別な能力と捉えることもできると強調しました。

「私はADHDを単なる困難と見なすのではなく、ある意味『超能力』のようなものだと人々に伝えたいのです」と彼女は述べました。「私のADHDのクライアントの多くは非常に才能にあふれ、知的でもあります。彼らは、レースカーのドライバーがトラック以外のすべてを遮断するように、特定の対象に極端な集中力を発揮できる脳を持っています」

6歳未満の子どもに対しては、薬物療法の前に行動療法が推奨されることが多く、年長の子どもには薬物療法と行動療法の併用が一般的に行われています。

ADHDの脳を目覚めさせる

心理療法士のカーステン・トレットバー氏は、ADHDの人々が朝のルーチンや自己調整において困難を感じることが多いと指摘し、それに対処するためには構造化された行動戦略と周囲の理解が必要だと述べています。

「私がいつも家族に伝えているのは、ADHDの脳は目覚めたときに、まだ深い眠りにいるように感じることが多いということです」とトレットバー氏は語ります。

彼女は、ADHDの脳が「目を覚ます」には通常よりも時間がかかるため、朝の時間帯が非常に大変になりがちだと説明しました。その結果として、ADHDの人々は行動を開始するために、口論を仕掛けるなど、独自の対処メカニズムを発達させることがあるといいます。

「理想的な方法とは言えませんが、それは脳が自らを起動しようとしているサインでもあるのです」と彼女は述べました。

トレットバー氏は、自身がADHDの夫と生活する中で、このことを「厳しい方法」で学んだ経験を共有しました。

「今では、私たちは笑って済ませられるようになりました」と彼女は語ります。「私が『脳を起こしてるの?』と聞くと、彼は『そう、脳を起こしてるだけ!』と返してきます。それでうまくいくんです。笑い合って一日が始まりますし、私はもう個人的に受け止めなくなりました。そして正直に言えば、彼の不機嫌さもずっと減りました」

また彼女は、一部のADHDの人々が、感覚の調整を得るためにリスクの高い行動を選ぶ傾向があることにも言及しました。たとえば、「自転車でランプを飛び越える」や「暗い洞窟でロッククライミングをする」などの大胆な行動です。

「そうした行動は、ADHDの人にとって実際に脳を目覚めさせるのに役立つことがあります」と彼女は述べ、「それは、即効性のある脳のエネルギー補給剤のようなものです」とたとえました。

彼女はまた、自分の状態を認識することが、管理のための重要な第一歩だと強調しました。

「私はいつも『名前をつけて抑える』という言い方をします」とトレットバー氏は語り、問題に名前をつけることでその影響力が弱まり、対話がずっとしやすくなると説明しました。

「家族全員がADHDについて理解し、同意して対応していくことは、本当に『ゲームチェンジャー』になります」と彼女は述べました。「人々が理解し、適応し始めたとき、そこで本当の進歩が始まるのです」

(翻訳編集 日比野真吾)

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。