卵で記憶力が改善:
〇 事実や言葉、概念、数字を覚える能力
〇 計画を立てたり、集中力を保ったり、衝動を抑える能力
〇 神経伝達物質であり、脳の発達や機能に役立つ
認知機能の低下を防ぐ最新の方法が、実は冷蔵庫にあるかもしれませんよ。新しい研究によると、定期的に卵を食べることが、女性が年を重ねても頭の冴えを保つシンプルで、効果的な方法である可能性が示されています。
卵の意外な効果
アメリカでは、約3分の2の人が70歳までに何らかの認知機能の低下を経験するとされています。しかし、『Nutrients』という専門誌に掲載された最近の研究では、卵を食べることでそのリスクを減らせる可能性があることが示唆されています。研究では、特に女性において、卵の摂取が記憶力や思考力の改善と関連していることが分かりました。
記憶力の中でも「意味記憶」と呼ばれる、事実や言葉、概念、数字を覚える能力が改善されるとされています。また、「実行機能」と呼ばれる、計画を立てたり、集中力を保ったり、衝動を抑える能力も向上する可能性があります。
この研究が行われた背景には、食事に含まれるコレステロールとアルツハイマー病や軽度認知障害との関係について、これまでの研究結果が一貫していなかったことがあります。コレステロールを多く含む食品が認知機能の低下に関連しているとする研究もあれば、影響がない、または逆に良い影響があるとする研究もありました。
著者たちは、卵はコレステロールを多く含むものの、タンパク質や栄養素、抗酸化物質も豊富で、これらがコレステロールの悪影響を上回る可能性があると指摘しています。
研究概要
研究者たちは、ランチョ・ベルナルド研究に参加した55歳以上の男女890人(男性357人、女性533人)のデータを分析しました。この研究は、52年間にわたる地域ベースの観察研究です。
1988年から1991年の間、参加者の卵の摂取量をアンケートで調査し、その後、言語能力や方向感覚、注意力、記憶力、実行機能、視運動追跡などの認知機能を評価するテストを実施しました。さらに、1992年から1996年にかけて再びクリニックでの認知機能評価を行い、変化を追跡しました。
女性において、卵を頻繁に食べる人は、言語能力(流暢性スコア)の低下が少ないことが分かりました。さらに、卵の摂取量が多いほど、認知機能の低下が抑えられる傾向が見られました。特に、週に5回以上卵を食べる女性は、卵を全く食べない女性に比べ、4年間で言語能力の低下が平均0.5ポイント少なかったのです。この効果は小さいものの、生活習慣やコレステロール値、カロリー・タンパク質の摂取量、さらには糖尿病や高血圧といった要因を考慮しても、有意な関連が残っていました。一方、男性では同様の関連は見られませんでした。
この研究は、参加者自身の申告に基づいた情報を使っているため、必ずしもすべてが正確であるとは限りません。また、卵が具体的にどのようにして認知機能に良い影響を与えているのかまでは明らかにしていません。しかし、研究者たちは、卵に脳の健康を支える栄養素が含まれていることに注目しており、今後の研究に期待が寄せられています。
利益とリスクのバランス
卵に含まれる注目すべき栄養素の一つに「コリン(循環器系と脳の機能、および細胞膜の構成と補修に不可欠な水溶性の必須栄養素」があります。コリンはアセチルコリンの生成を助けます。栄養コンサルタントのクリストファー・モーア氏によると、アセチルコリンは「気分や記憶、認知機能に影響を与える神経伝達物質であり、脳の発達や機能に役立つ」とのことです。
また、モーア氏は卵のコレステロールに関する懸念についても触れています。「多くの人は、卵にコレステロールが多すぎると心配していますが、ほとんどの場合、卵が血中コレステロールに大きな影響を与えたり、心臓病のリスクを高めたりすることはないと考えられます」と述べています。
それでも、「週にどれくらい卵を食べても大丈夫か?」という疑問もあります。
ニューヨーク州のハンティントン病院で働く登録栄養士のステファニー・シフ氏は、この答えは、人それぞれだと説明しています。「近年の研究では、食事からのコレステロールがほとんどの場合、血中コレステロールに影響を与えないことがわかっていますが、一部の人は食事に敏感で、卵など高コレステロールの食品を摂るとコレステロールが上がることがあります」とのことです。
以前のアメリカの食事ガイドラインでは、1日300ミリグラム以下のコレステロール摂取が推奨されていましたが、現在のガイドラインには特定の制限はありません。「コレステロールは全て卵黄に含まれています」とシフ氏は言います。
「卵白はいくら食べてもコレステロールを上げることはありません」と。
参考記事:
(翻訳編集 華山律)
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