世界中で約5700万人が認知症と共に生活しており、2050年にはその数が1億5300万人に増えると見込まれています。
しかし、ランセット委員会が発表した新しい報告書によると、認知症のケースの約半分は避けることができる、又は発症を遅らせることが可能としています。この報告書は、世界のトップクラスの認知症専門家27人によって共同で執筆されました。
専門家たちは、認知症のリスクを高める要因として、これまでに12のリスク要因が知られていました。そこへ新たに「視力の低下」と「高いLDLコレステロール」の2つが加わりました。
これまでの12のリスク要因には、教育水準の低さ、難聴者、うつ病、外傷性脳損傷、運動不足、喫煙、糖尿病、高血圧、肥満、過度な飲酒、社会的孤立、そして大気汚染です。
これらのリスク要因の中には、人生の早い段階でより大きな影響を及ぼすものがあります。例えば、教育水準の低さは重要なリスクファクターです。また、社会的孤立、大気汚染、治療されていない視力の低下は、人生の後半でより大きなリスクとなります。
他のリスク要因は中年期に、より大きなリスクをもたらします。
「簡単に言うと、これらの要因は認知症を発症するリスクを高めたり低くしたりするということです」と、ケンブリッジ大学の公衆衛生医学のキャロル・ブレイン教授とその博士課程の学生セブ・ウォルシュ氏が、大紀元にメールで述べています。
「つまり、喫煙を止めたり血圧を管理したりすれば、認知症を避ける保証にはなりませんが、リスクは下げられるということです。社会全体で多くの人がこれを実施すれば、認知症の発生率の減少が期待できます。しかし、完全に『予防』できるわけではありません」
14のリスク要因
これらのリスク要因は、ノルウェーのHUNT研究に参加した45歳以上の3万7千人のデータから特定しました。委員会は、データと他のレビューからの証拠を検討し、認知症と最も関連があると思われる要因を決定しました。
特に、新しい証拠は、視力の低下と高コレステロールが認知症の新しいリスク要因だと示しています。
最初の12のリスク要因は、認知症のケースの40%に関連していましたが、新しい報告書では、14の要因すべてに対処することで、認知症のケースの45%を予防、または遅らせると述べています。
報告書では、リスク要因を減らすことで認知症の発症を遅らせられるかについては報告していません。
「認知症は年齢とともに急激に増加します。そのため、発症を数年遅らせることができれば、一部の人はその間に他の原因で死亡する可能性もあり、認知症を事実上『回避』できます。その他の人たちは、認知症を発症するかもしれませんが、それは人生のより後期になり、死期に近くなるでしょう」とブレイン教授とウォルシュ氏は述べています。
特に、この報告書では、高LDLコレステロールと難聴が、認知症で最も重要な要因であるとわかりました。これら2つの要因は、予防可能な認知症の約3分の1に関連しているとしています。
早期での対応不足が、予防可能な認知症の全ケースの11%に関連しています。委員会は「良質なケアと中年期の認知を刺激する活動が認知を保護する」と呼びかけています。
中年期に発生するリスク要因としては、うつ病と外傷性脳損傷で、それぞれ予防可能なケースの6%を占めます。身体活動不足、喫煙、糖尿病、高血圧、肥満は2〜4%のケースに関連していました。
全リスク要因の中で、中年期のうつ病が最も低い発生率を示しています。中年期は、予防可能な認知症の大きな割合を占めています。
「うつ病はリスク要因ではありますが、認知症の早期の段階でよく見られ、認知が中程度に達するまでの病気進行中にもよく見られます。そのため、うつ病をリスクとして特定することは非常に難しく、多くの研究では生活の早い段階から他のリスク要素を特定しようとしています」とブレイン氏とウォルシュ氏は指摘しています。
高齢者の影響に関するケースでは、社会的孤立が予防可能なケースの約10%、大気汚染が5%に関連していました。
委員会は、予防は大胆に実施するべきだとしました。「それは国家および国際的な政府レベルでの政策と、個別に調整した介入の両方を含みます」
委員会は、また生涯にわたって認知症リスクを減らすための具体的な行動を推奨しています。これには以下のようなものが含まれます。
- 良質なケアを受け、中年期に認知症に刺激的な活動に従事する
- 聴覚障害のある人は補聴器を使用し、有害な騒音を減らす
- うつ病を治療する
- 接触スポーツや乗馬の際にヘルメットや頭部保護具を使用する
- 運動する
- 喫煙を減らす
- 高血圧の予防
- 中年期から高LDLコレステロールを検出し、治療する
- 健康的な体重を維持し、できるだけ早期に肥満を解消することで糖尿病も予防する
- 過度なアルコール摂取を減らす
- 年齢に優しいサポート環境と住宅を優先する
- 社会的孤立を減らすための活動へ参加を促進し、他人と共に生活する
- 視力喪失のスクリーニングと治療を容易にする
では、すべてのリスク要因に対処することで認知症ケースを完全に改善できるのでしょうか?
「一部の人々は依然として認知症を発症するでしょう」とギル・リビングストン教授は大紀元のインタビューで述べています。「しかし、そのような人々も健康な生活をより長く送り、人生の終わりに認知症を抱える期間を短くすることを期待しています」
(翻訳編集 青谷荘子)
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